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第5話:Case5(成功というバグ)

調査報告書


――――――――――


【Case5:『成功』という名の致命的バグと、仕様変更】


――――――――――


【1. 後年評価:最大の誤訳】


後年、この「最初の討伐」は、

人類史における最大の誤訳として位置づけられることになる。


当時、人類はこの出来事を

「勝利」

「反撃の始まり」

「魔物は倒せる存在である」

と解釈した。


しかし、記録を精査すればするほど、

それらの言葉は、

事実ではなく“願望の翻訳”に過ぎなかったことが明らかになる。


――――――――――


【2. 討伐の職業化と安定化】


初期討伐に成功した自警団は、

各地の防衛に正式採用されるようになった。


やがて、

彼らは「戦う者」から

「雇われる者」へと変質していく。


大国との契約。

要人警護。

詠唱法の教育・啓蒙活動。


魔物討伐は、

不安定な英雄譚ではなく、

安定した職業として成立し始めた。


検証結果:

人類社会は、

「勝てる戦争」を前提に行動を最適化し始めた。


――――――――――


【3. 魔法のコモディティ化(一般普及)】


この流れを決定づけたのが、

「詠唱デバイス」の登場である。


複雑な理論理解を必要とせず、

誰でも一定水準の詠唱を実行できる補助装置。


魔法はもはや、

検証が必要な未知の力ではなかった。


家電。

インフラ。

生活必需品。


恐怖は薄れ、

警戒は手放され、

魔物は「対処可能なリスク」へと格下げされた。


検証班の指摘:

デバイスの普及により、

世界中で同一周波数帯の詠唱が乱発された。


これは魔王軍にとって、

人類側の防衛ロジックを網羅的に収集できる

極めて質の高いサンプリングデータとなった。


当時、それに気づいた者はいなかった。


――――――――――


【4. 最初の討伐の再定義】


後年、ある学者は記している。


「あれは討伐ではない。

 敵による火力測定だった」


人類が誇った

「世界五本の指に入る詠唱集団」。


魔王軍の解析ログ上では、

彼らはようやく

「解析に値する最低限の強度を持つサンプル」

として分類されたに過ぎなかった。


――――――――――


【5. 1000人規模集団の壊滅】


転換点は、

唐突に訪れた。


某大国の防衛を担っていた、

1000人規模の詠唱集団が

一夜にして壊滅したという報告。


構成員数。

訓練水準。

装備。


いずれを取っても、

人類側の最高戦力に近い存在であった。


にもかかわらず、

生存者は確認されなかった。


――――――――――


【6. 規模の不整合】


調査の結果、

壊滅の原因は「敵の数」でも「火力」でもなかった。


決定的だったのは、

物理法則の書き換え速度である。


人類が詠唱を構築し、

演算し、

発動するよりも早く。


敵は、

その前提となる物理法則そのものを

書き換えていた。


現場記録:

1000人が同時に放った最強の詠唱。


その全エネルギーは、

熱にも、

光にも、

衝撃にも変換されなかった。


ただ、

静寂に変換された。


音も、振動も、

因果すら残さず。


――――――――――


【7. 事後分析:仕様変更】


事後の推測は一致している。


魔王軍は、

人類がネイティブ世代に依存し、

理論の深掘りを停止した瞬間を

正確に見極めていた。


そして、

人類側の「成功」をトリガーとして、

**仕様変更バージョンアップ**を実行したのである。


この時点で、

人類が戦っていた相手は

もはや「魔物」ではなかった。


それは、

常に一手先を更新し続ける

管理システムであった。


――――――――――


補足記録


このCase5は、

後にこう総括されている。


「人類は、

 勝ったから滅び始めた」


――――――――――

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