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第3話:Case3(最初の消失)

調査報告書


――――――――――


【Case3:最初の直接接触と『殲滅』の観測】


――――――――――


【1. 魔物の出現と目的の再定義】


魔物の目的は、人類の殲滅である。

それ以上でも、それ以下でもない。


捕食のためではない。

奴隷化のためでもない。


殲滅である。


この単純な事実を、人類が正しく理解するまでには、

長い時間を要した。


人類は、あらゆる理由を想定した。

資源の奪取、領土の拡大、信仰や思想の対立。


しかし、後年の検証により、

それらはすべて人類側の過剰な意味付けであったことが判明している。


魔王軍にとって、人類の住む世界は、

「たまたま扉が開いていた部屋」に過ぎなかった。


侵入できたから、入った。

その程度の理由であった。


――――――――――


【2. 観測記録:百人規模小国の消失】


最初の直接接触記録は、

とある商人の証言によって確認されている。


商人は、定期取引のため、

百人に満たない小国を訪れた。


そこには、

血の一滴も、破壊の痕跡も、争った形跡も存在しなかった。


ただ、

数日前まで確実に存在していた住民百名が、

「最初から存在しなかったかのように」

物理的に消失していた。


唯一の遺留品として確認されたのは、

村の中央に残された、見たこともない形状の

「幾何学的な結晶体」一基のみであった。


その結晶体は、

不気味な周期で明滅を繰り返していたと記録されている。


――――――――――


【3. 人類の誤読ヒューマン・エラー


人類は、この事態を即座に「魔物の襲撃」とは認識しなかった。


当初は、

大規模な神隠し、

あるいは未知の伝染病として扱われた。


人類は、

「魔物にも何らかの意図や交渉の余地があるはずだ」

という前提を、無意識のうちに当てはめていたのである。


しかし、

魔物には「顧客心理」も「交渉意図」も存在しなかった。


検証の一環として、

後年、複数の言語学者が魔物の発する高周波の解析に取り組んだ。


彼らは生涯を費やして解読を試みたが、

最終的に判明した事実は単純であった。


その音は、言語ではない。


それは、

空間そのものを削り取るための

振動数に過ぎなかった。


――――――――――


【4. 「ランダムな侵入」の証明】


物理的検証の結果、

魔物の出現地点には明確な法則性が存在しないことが確認された。


強いて言えば、

Case2 において、

物理法則が最も摩耗していた地域から順に、

確率的に滲み出すように出現していた。


魔王軍にとって、

人類は「敵」ですらなかった。


掃除されるべき「埃」と、

同義の存在であった。


この事例以降、

人類は「最初の犠牲者」という言葉の使用を中止している。


それは、

犠牲ですらなかったからである。


――――――――――


補足記録


本件は、

「人類と魔物の戦争」の始まりではない。


人類が、

初めて自らを

戦争の対象ですらない存在として認識させられた

最初の記録である。


――――――――――

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