第26話 抜くとへにゃります
野営地に到着。
テントを張り、一息つく。
「おいゴキブリローパー、いい気になってるんじゃないぞ」
野郎どもに囲まれた。
「俺が何かしたか」
「Fランクの癖にムカつくんだよ。俺達はお前が色魔教団の回し者だと思っている」
「前の襲撃は出来レースなんだろ。白状しちまえよ」
「美女を二人もはべらしやがって」
「あなた達なにしているの」
リリー先生が様子を見に来た。
「くそっ、先公か」
「いつか化けの皮を剥いでやる」
実技で俺がトップなのをこいつらは忘れているようだ。
スタートが悪かったのは仕方ない。
最低記録で入学。
授業に2ヶ月も出て行かなかったからな。
落ちこぼれの引きこもりってところか。
今、変に成績が良いから、嫉妬されているんだな。
男の友達を作ってないのも問題か。
だが、改善するつもりなんて、さらさらない。
言いたい奴には言わせとけ。
焚火に火を点けようとして、魔法が発動できないのに気づく。
魔力感知の目には無効魔法の魔力が見えた。
秘孔魔法・解除拳を発動。
何もない空間を指でつんつんする俺を見て、みんなは訝し気に顔を見合わせる。
中には笑いだす奴もいた。
「敵襲だ。色魔教団だと思う」
「なんで分かる。ゴキブリローパーが嘘を吐きやがった」
「きゃー」
黄色い叫び声が上がった。
覆面をした全裸の男達が女生徒を縛り上げている。
「風の刃」
別の女生徒が異変に気付いて、男達に魔法を放った。
「なんで魔法が使える。無効魔法の無効か。いや消去魔法か」
「馬鹿な。消去魔法は余白64の超高等魔法だぞ」
「みなさん、ためらいなく攻撃です」
「風の刃」
「火球」
「石弾」
「炎の槍」
「氷の槌」
リリー先生の号令の下、生徒たちが色魔教団の奴らに魔法を放つ。
「盾。反撃するぞ。魔法戦だ」
色魔教団も反撃に移るようだ。
「思考加速、そよ風、呪いの藁人形。秘孔魔法・解除拳」
俺も参戦して、色魔教団の魔法を潰しに掛かる。
形勢は生徒側に傾いた。
「おい、あれを」
色魔教団の一人が何やら懐から出すと、オーガに変身した。
鬼化の呪いを使ったのだな。
生徒達の魔法がオーガの分厚い皮で弾かれる。
「うぐっ」
生徒がオーガに殴られた。
一撃でダウン。
「はうっ」
リリー先生もやられた。
気絶したようだ。
骨の一本ぐらい折れてるかも。
くそう先生の仇。
秘孔魔法・解除拳を使って鬼化の呪いを解こうとしたが呪いが堅い。
魔力の結び目が解けない。
そうこうしているうちに生徒が叩き伏せられていく。
「ヒロ、私の魔法も効かないよ」
「アイナのアイスハンマーでもオーガには分が悪いか」
秘孔魔法・金縛り拳は当然役に立たないだろう。
オークにも破られるんだからな。
「よし、増幅してやる。合わせろ。よし今だ」
「氷の槌」
秘孔魔法・倍増拳。
20メートルの巨大アイスハンマーでオーガを打ち据える。
オーガは殴られふらついた。
チャンスだ。
秘孔魔法・石化拳
オーガは石化した体表を砕きながら動いた。
石化も効かないようだ。
ならば。
魔力の流れを体外に排出するように、お触り魔法で秘孔を突いた。
名付けて、秘孔魔法・滅魔点穴。
これは流魔呼吸法の逆の発想だ。
魔力をとにかく体外に排出させる。
オーガは魔力を使い果たし、座り込み。
そして、寝転がった。
巨体を動かすには魔力が要る。
無くなれば動けない。
自明の理だ。
「おい、起きろ。睡眠魔法か」
「いや、オーガには魔法耐性があるはずだ」
「氷の槌、氷の槌、氷の槌」
「ぶはっ」
「がっ」
「うごっ」
アイナがアイスハンマーを連発する。
色魔教団の男達全員が叩きのめされた。
「アイナ、ありがとう」
女生徒の一人がアイナにお礼を言う。
「いいのよ。それより感謝はヒロに」
「ゴキブリローパーが何かやったの」
「オーガを倒してくれたじゃない」
「へぇ、そうなの。ありがと、一応お礼を言っておくわ」
「どういたしまして」
「ところで、オーガは何で動けないの」
「それな。魔力を抜いた」
「それって魔法使いには、無敵の能力ね」
「まあな」
「騙されるな。こいつが魔法を唱えているの聞いたか。馬脚を現したな。出来レースなんだよ」
「ふん、秘孔魔法・滅魔点穴。魔法を使ってみろよ」
「風の刃。何故だ。なぜ魔法が使えない。そうだ、無効魔法だ。こっそりそれを使ったんだ」
「誰か鑑定してやれよ」
「鑑定。お前、魔力がゼロになっているぞ」
「えっ、これからどうやって魔法を使えばいいんだ」
「謝れば少しだけ補充してやる」
「すいませんでした。疑ってました」
俺は持っていたマナ・ポーションを一つ渡した。
これからは気に食わない奴がいたら魔力を抜いてやろう。
殺さなくてもいいのは気に入った。
「見直しました。あなたの罪を三割ほど許します」
被害者会の会長が来てそう告げた。
今回の件で分かったのは、秘孔魔法は派手さがない。
こっそりやる分には良いが、迫力に欠ける。
何か後で考えよう。




