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咲坂高校冒険部活動報告書  作者: ホエール
最終章『一挙両得、正義の行いと言っとけばそれっぽい』
41/43

最終章 4.


   4.

 4人組が襲い来るモンスターの群れに奮闘しているが、それでもモンスターの数は減らない。そりゃそうだ。いくら4人組が強くても数百の個体が広範囲から来ている。

家の玄関で客の応対をしているときに1人だとベランダから侵入者が入ってきたことに気づけないような話だ。

そしてそんな状況は4人組が操るカメラドローンの旋回飛行によって映像として広く世界に配信されていく。


『代々木ダンジョン村』とは、北九州方面最大のダンジョン内部のテント村だ。所詮はその程度の存在に過ぎないハズだった。

最大級の文字はそれだけで人々を集め、様々な資本投下が行われ、ちょっとした城塞都市の様に発展している。しかし、元がテント村であり、無法地帯のダンジョン内部の存在だ。まっとうな行政単位では無い。正規の地方自治体が設置されている訳でも無く市町村の役場があるわけでも無い。

そもそも行政法上、その座標の地方自治体の土地として扱われているので、たまに支所が設置されることもある程度しか統制出来ていない。


日本側の企業や民間冒険者達もやられっぱなしではいられない。とはいえ、人手が足りない根本的な問題は解決していない。

なので、ドラグーンUGVを使って福岡座標から急遽兵力を派遣する事になった。

また大阪方面の部隊を動かし、『通常の現実世界(レベルゼロ)』から新幹線と飛行機で大急ぎでこっちに兵員を送り込み、ダイブさせる話が上でついたらしい。

ただしそれは今現場の警察官、民間冒険者、その他様々な公的機関の人間や企業の勤め人たちにとって直ちに影響がない、つまりいつそれは来るんだよ! という文句にしかならない話だ。『代々木ダンジョン村』の区画整理に使われている土嚢や石積みを使って必死に防壁と塹壕陣地を維持しようとしている彼らにとって、現状は時間とともに悪化しつつある。

だからこそ、彼らはこの瞬間を狙ったのであろう。


『 照射』

それは目には見えない熱量の攻撃になっていた。気づけばモンスターの一群が溶けていて、それと一緒に人間たちもアバターが破壊されて死亡していく。

自由電子ビームの一撃は、一瞬で多くの破壊を招いた。

『春日運輸警備』は状況の把握の為に飛ばしていた偵察ドローンはモンスターの一群を薙ぎ払った武装集団の姿を確認して撃墜されていく。

それは『百億万』というワッペンを身に着けている傭兵たちの一団。すなわち


「大陸勢が今にきて攻め込んできたのかよ!!」

『春日の警備隊長』の言葉が状況を把握したダンジョン村住民たちの叫びだ。

その声の大きさに驚いていたアジア系冒険者の在日外国人たちに軽く謝罪して急いで戦力の配置についてやってきた部下たちが持ってきたタブレットやモバイルPC画面見ながらあちこちに指示を出している。とはいえ、戦力が足りておらずそもそも弾薬の量も少し不安が出てきた。


「先輩。私たちどうしましょう」  「どうもこうもないわ。『加西』、この状況で手を引けば叩かれるのは県警のお偉方よ。で、そのお偉いさん達の怒りの矛先は何処にくる?」

公務員の頭の痛いところで女性刑事2人組もまた嘱託職員たちと無線機を通じて状況確認に走る。

逃げる選択肢は認められていない。彼女たちは手持ちの武器弾薬を確認する。

『現代化刀剣類』に属する『村井』の日本刀はバッテリーが危険域に入っていた。どこかで替えのバッテリーか充電ステーションはないものか。

尤も急速充電をしたとしても10分以上はかかる。100%まで回復させるのは無理だろう。この状況だと。


「『長谷川』さん。我々はどうしましょう?」  「撤退だよ、撤退。原則撤退。ただ……今のこの状況、帰れんのかね?」

労基を含める行政連合ももはや逃げ場無し。ただでさえ手持ちの弾薬が少ない中、戦いの準備を進めていく。


「『女子寮』が大暴れしなきゃ、こんな面倒ごとにはならなかったのに」  

「はっ、私らが暴れなくても遠からず連中は攻め込んできたし、そもそも警察の連中がレイプ犯を捕まえに来たようにここは後ろ暗い連中山ほどいるだろ」

「「「レイプ犯?」」」

何も知らない人々が『女子寮』から、なぜ警察がここに来たのかを知らされて目が点になる。

『女子寮』が女性の敵とみなした相手に対して狂暴なのは知っていたが、まさかここまでとはとなる人と許せんなんだその卑劣は! とぶち切れる人間たちに分かれる。

そりゃそうだろ。詳細は知らないが、要するにスパイ野郎が女性を襲って脅してを繰り返しているという事だ。


「なぁ……大陸が攻め込んでるのってそいつを助けるためじゃね?」   「「「…………」」」

かくして、スパイ狩りじゃー! と盛り上がる冒険者どもに「それどころじゃねえ!」とぶち切れる警備要員たち。


「とにかく弾薬がたりねえ!! 無理なら充電ステーションを今すぐ使わせろ!」  「今空いてるポートなんてねえよ!」




「『部長』、これって……」  「うん。まちがいないわ」

「「「『百億万』がまたやってきた!」」」  「高々300発の7.62ミリじゃ全然物足りないわ!」

てっきり全員同じようなことを言うと思っていた3人と1人は顔を見合わせ、1人だけの側が逃げるそぶりを見せる。


「もう300発も使ったんか!!」  「300×100=3万円です。でもってダンジョン投入コストも加算されますから下手したら5万近く使ってますね」

「「バカですか! バカなんですね!? いつになったら12.7ミリの補充もしてくれるんですか!!」」

襲ってきたゴブリンの首を日本刀で一閃、見事な斬首をやりながら『関西』が逃げる『部長』を追いかける。


「だって! だって! だって!! 引き金を引いて! ありったけの破壊が! この悦楽がぁ!」

「「「単にトリガーハッピーって言ってるだけじゃねえか!!!」」」

バカが逃げ、それを追いかける3人組。たったそれだけなのにゴブリンが、トロールが、ドッペルゲンガーが次々とただの肉塊だの砂になって撃破されていく。


「とにかく弾薬が足りないの!! 補充しにいくわよ!」  「で、where?」

「向こうから弾薬箱がやってきてくれたじゃない!!」

弾薬箱呼ばわりの『百億万』の傭兵たちが知ったらたぶん卒倒するだろう。

が、それに関しては異論がないようで4人は目指すのだ。百億万の戦闘部隊がいる場所へ。なお、このやり取りは遠慮なく配信され見ている人間たちが目が点になっていた。

あとAI捏造動画派が盛り上がっていた。ぼろを出したな。大陸の傭兵部隊がそんな簡単なはずがないといった風に。




Tips:『AI捏造』……ここ十数年ほど、AIを用いて捏造していないという認定する企業群が大成長を遂げている。

なおそういった企業の認定マークをAI捏造する業者がいるのでイタチごっごである。

これらの企業たちは敵対的学習ネットワークを繰り返しており、捏造サイドも近年技術力が飛躍的に上がり、分野によっては本物より良く出来ていたりと色々と本末転倒になってる。




「みっけ」

そして、たどり着くのは『百億万』の戦闘部隊たちがモンスター誘因装置を運ぶ現場。


『 見つけたのはこっちもだ。日本の特機戦力ども』

『赤髪』。そう呼ばれていた男だった。文字通り赤い髪がトレードマークのサイボーグ男は早速その手の中にある『ロシア製:F.A.式散弾銃』の引き金を引いた。

フルオートで飛び出していく12ゲージのシェルショットとそこからさらに飛び出すバックショット。無数の散弾シャワーを叩きだし、4人組は岩陰に隠れる。

そんな4人組の肩を叩くドッペルゲンガーを見ることなく羽交い絞めにして首骨を折る様子はちゃんと配信に乗る。

なお、羽交い絞めにしている間は散弾銃をぶちかます『赤髪』に対して反撃が出来ない。

故に赤髪の部下の兵隊が彼らを包囲しようと動くのに対処できなかった。

一斉に投げ込まれる手榴弾。


『『『 は? 』』』

手榴弾が起爆して勝利を確信して、気が付けば見ていた風景が天井に変化している。どういうことだと周囲を見渡そうとして自由が利かないことに気が付く。

そしていつしか視界は下へ、大地の側へ。自らの胴体と首が分かれている。

そんな兵士たちの数が4人。


『クソが!』

『赤髪』からは見えていた。羽交い絞めにしていたドッペルゲンガーを全く見ることなく蹴り上げ、手榴弾と自分たちの盾に使用する4人組の姿が。起爆の次の瞬間には駆け出し一撃をもって

兵士たちを斬首する4人組が。

そして、そのままそこからライフルを片手射撃で追加で頭部を打ち抜いて合計8人の兵士を撃破するクソッたれ4人組がそこにはいた。


『 化け物どもがァァア!!』

そう叫ぶ『赤髪』と彼に追従するように兵隊はアドオングレネードを発射。首をはねた兵士の胴体を盾にアドオングレネードの爆破をやはり防いだ4人組に完全にぶちぎれた『赤髪』は

そのままフルオート散弾銃の引き金を引こうとして、後方から頭を殴打される。


『 は?』

見れば頭上を飛ぶカメラドローン。ドローンがぶつかって、視線をそらした? いや、そらされた?

『赤髪』が自分の状況に気づいた頃にはすでに遅かった。

ボディーアーマー越しに突き刺さる7.62ミリの銃弾。だが、所詮はライフル弾。発達した素材工学にとって高々数発程度何の意味も――――

――けれど、それは衝撃がゼロになったことを意味しない。体は当たった銃弾のパワーで後退し、それで十分だった。

『いちちゃん』が放ったライフル弾が『赤髪』の額に当たり、『関西』の握る45口径拳銃弾が彼の右手のひらに穴をあけて散弾銃を握れなくする。

そして、気づけば目の前にいるのは薙刀を構えた1人の少女。

決着は目の前に見えていた。


『 なめるなぁぁああああああああああ――――ッ!!』

『赤髪』の両腕、両足が自爆する。サイボーグアバターの特性を生かした自爆攻撃。『赤髪』は、自分が持つすべてを使ってこの4人組を倒すと本当の意味で決意した。覚悟を決めた。

どうせ、手足は交換できる。スペアはある!!


Tips:『スキル:収納箱』……『部長』が使用するスキル。いわゆるアイテムボックスに相当するが、その容量は家庭用冷蔵庫程度。銃火器で大部分が埋まっている。


目の前に広がるのはケプラー繊維と糸状に成型した合金によって形成された巨大な闇の世界。単に布で光が遮断されただけ。なのに、


「ふぅ~あぶなーい」

少女に何一つ打撃を与えられていない?


「バン」

『いちちゃん』がそう叫ぶ。


Tips:『スキル:再現性スタングレネード』……スキルで閃光音響手榴弾を再現したもの。特定のワードで発動し、目視任意の場所にて炸裂させることが出来る。

『赤井』や『いちちゃん』が使用する。強い閃光と音で相手の脳を揺さぶったりするなどして、相手を瞬間的に無力化する。


『部長』がスキルで出したテントによって、自爆攻撃は彼女に届かず、『赤髪』の文字通り目の前で『いちちゃん』のスキルが起動した。



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