最終章 3.
3.
そして、『代々木ダンジョン村』では、警察官たちによる『女子寮』鎮圧作戦が進行中であった。
「離せ、はなせぇえええ!!」 「『妨害装置』の稼働は確認されていない! 撃破して、リスポン地点で確保させろ!」
「あっ、はい。すいません……」 「あのしおらしくしながらライフルを向けてくるのやめてもらっていいですか?」
「フーハハハッ! 散々散々散々さんざんッ!!! 私の男を寝取るのはいつだって、何故か男だ!!」 「「「!?」」」
なんか色々とすごいことになっているが、警察による『女子寮』鎮圧作戦が遂行中である。
そんな状況下で、入る一報。
『 哨戒線を越えられました。始まります。大規模モンスタートレインです』
「やばいですな」 「これは……避難を呼びかけるべきかしら?」
『春日の警備隊長』と『赤井』の2人組が、状況を深刻にとらえ
「くそ! まだ全部の証拠保全が終わっていないし、逃げてる幹部はまだいるんだぞ!?」
「でももう無理では? 大炎上してますし、色々とあきらめても、誰もその点では責められないかと」
「お前無敵の人の亜種か何かなの!? ボディカメラ映像渡したりとかさ!」
『長谷川』と『川上』が他の役人の皆さんと慌てふためくその状況で
「モンスタートレインか……弾足りそう?」 「数にもよりますですけど、小物には使わない、大物には2~3発までを徹底すれば、そこそこはいけますです」
「やる気かいな……」 「そういうユーもウェポンを用意してるね」
バカ4人組はやる気満々で動き出す。
「えっ、社会問題の様子は…………」 「動画編集ありがとうございます。でも、ほかの人からもらった動画だけってなんかみっともないじゃないですか」
『Tフラッシュ』としてはこのまま労働基準監督署関係の動画を編集しまくって出したかったが、状況はその予断を許さなくなりつつあるようだ。
「あー続きは俺のチャンネルで出していい?」 「なら後でURLをください。一応こっちでも続きはあちらでって誘導しますから」
Tips:『続きは俺のチャンネルで』……炎上した。
そして、それは始まった。『代々木ダンジョン村』を警備するために常住していた『春日運輸警備』のオペレーターたちがまず行うのは、軽迫撃砲をぶちかますこと。
「半装填!」 「てっ!」
陸自でも使用されているものと同じ軽迫撃砲が火を噴き、次々と砲弾が着弾していく。それによって吹き飛ばされていく、モンスターたち。
しかし軽迫撃砲の数は限られている。砲弾も同様に。膨大な数のモンスターの数を減らすことは出来ても塹壕へと到達する。
引かれる引き金。飛び出すのは5.56ミリと7.62ミリのライフル弾。ただし、一部の形成されたキルゾーンを除いて、全員単発での射撃。
だって、高い。
弾性防御陣地構造を取っており、第2線が本命。しかし――
「――クソッたれ、ヤバイ大物がゴロゴロいやがる。ライフル弾を単発撃ち込んだ程度じゃ何の意味もねえ!」
例えば、トロール。例えば、海坊主。例えば、精霊風。例えば、饕餮。例えば、スレンダーマン。例えば、タロス。
どいつもこいつも一癖もふた癖もある大物、化け物ぞろい。
そこら辺のゴブリンだの鬼だのが単なる数を揃えた雑魚にしか見えない。
次第に銃撃戦から白兵戦へと戦いが移行していく。だが、そうなると単純な数の暴力によって人間側が不利となるのはいたって当然。
各所で指向性散弾地雷が炸裂し、最終防衛ラインを構成していた電気柵が踏み倒されていく。
「此畜生が!!」
巨大なハンマーでゴブリンの頭を勝ち割る春日のオペレーター、その右肩を叩く手。
「あん? いったい――――」
――そこにいたのは自分の顔。
『 防衛区画が抜かれるのも時間の問題と思われます。それと……大陸の傭兵どもの動きが明らかに変わりました。間違いなくモンスタートレインと関係あります』
「MPKか……」 「むかつきますわね。大陸の採掘企業大手なんでしょうけど」
『春日の防衛隊長』さんと『赤井』さんの男女コンビがそんなことを言いながら、それぞれスマホと無線機片手にあちこちと連絡を取り合う。
「本土の方から増援が来るけど、間に合うかわからん」 「うちも知り合いの企業さんに連絡しましたけど、むしろ撤収支援をお願いされました」
「『赤井』さーん! 今注文して良い? 7.62ミリをとりあえず300発くらいほしい!!」
「あっ、『部長』ちゃん。良いけど、ちゃんと払える?」 「注文キャンセルお願いします!! 『部長』! 行きますよ!!」
「えー、じゃあ12.7ミリをせめて150発!!」 「『部長』!! 絶対7.62ミリ300発より高い!?」
何やら途中で面倒ごとの多い4人組とコミュニケーションをとるが、基本的に『赤井』は『代々木ダンジョン村:西部地区』のまとめ役をやっている偉い人なのである!
それどころではないのである!!
「いや、止めろォォオ! あの馬鹿どもを!」 「『村井』先輩! 気持ちはわかりますけど落ち着いて、目の前の仕事に集中して!!」
かくしてバカ4人組がたどり着くのは、指向性散弾地雷と電気柵の組み合わせで構築された最終防衛ライン。
必死に日本側の『傭兵企業』や『採掘企業』の武装オペレーターたちが刀剣類だの重火器だので戦いながら、踏みつぶされた電気柵をもう一度立て直そうとしている。
何もないよりは効果があると思っているからである。
「さすがに全部は無理だろうけど……」 「1人当たり最低200万円稼ぐこと!! いいわね!?」
「ゴブリンですか……一番高いものってなんでしたっけ?」 「目玉や。引っこ抜くと宝石みたいな鉱物になる」
『オキタ』がカメラドローンをスマホアプリを通して操縦し、その映像を見る。
「こりゃ、すさまじい量だ」
【ちゃこちゃこちゃーこ】
いや、すさまじい量で済ませるな
【鮮血のレッド】
こいつら、さっきからコメント一切読まないな
【コロン@ちーきたん最推し】
配信自体初心者みたいだしね……?
まぁ、編集された動画の方がぶっちゃけ見てて面白いからこの業界、基本的に動画勢だからな
おわ!
カメラドローンが動く。動く。
右へ左へと飛び回り、トロールの股をくぐり、そしてトロールの顔面へと接近。トロールが激怒したようでその腕を伸ばすがすんでのところで回避する。
そして、トロールの頭蓋骨に生える日本刀。
けれど、その続きをカメラドローンのカメラは映すことなくゴブリンの顔面へと突撃していく。ゴブリンは驚愕の表情をして、隙が出来たらしい。
気づけば投げナイフがその額に突き刺さり倒れる。それらの様子は余すことなく配信されていく。
ゴブリンが砂のように崩れ落ちていくその中を突っ切り、砂煙がカメラを覆う。そして一瞬のうちに晴れて、広がるのは6メートルを超える大型トロールの足先。
急上昇。気づけば大型トロールの鼻の穴まで見えそうな接触スレスレの急上昇。
【ちゃこちゃこちゃーこ】
こいつら、カメラドローンも相手を妨害する武器として使ってやがる!!
【鮮血のレッド】
はあ!? スマホ片手にこの大群とドンパチしながらやってんのかよ!?
【コロン@ちーきたん最推し】
ごめ、はく
【タンクの夢を見るタンクは美しいか】
いや、コメントしてないで仕事しろよ、公僕ちゃこちゃこちゃーこ
カメラドローンに襲い来る鳥の形をした何かしらのモンスターだが、それを空戦機動で回避し、むしろモンスターを煽る。
煽られたモンスターがカメラドローンの後をついてきて、その額にライフル弾を撃ち込まれる。誘い込まれた。
カメラドローンはライフル弾を撃ち込んだ女の子――『いちちゃん』――の姿を映す。何気にカメラ目線でポーズを決めていた。
次にカメラドローンはそれを操縦する『オキタ』の姿を映す。
オキタはスマホ片手に投げナイフを投げ、ナイフに備え付けられているワイヤーを操り、一度の投函で2体のゴブリンの頭蓋骨を貫かせる。
いや、どうなってるの!? と配信コメントがざわついているなか、スマホを操作する指が忙しなく動き、カメラドローンは動く、動く。
目の前に新たな大型トロールが棍棒を振り上げてその鼻先を掠める。トロールはそれに気をとられ、『部長』はその隙を逃さない。
【田中正造Mk.3】
めがまわる
【とらすとみー淡路島】
VR空戦ゲームをやってるのかな?
【かわずけろっぐ】
ドローンがこれでぶっ壊れた時の事考えてんの?
Tips:『ドローンを牽制用の武器として使って壊れた時』……考えてない。
「『オキタ』!」 「イエス!!」
『関西』に呼ばれた『オキタ』が投げナイフを投げる。それは空中で『関西』の手の中に納まる。
代わりに『オキタ』の手の中に納まるのは同じく投げられていた『関西』の拳銃。
そのまま『オキタ』が引き金を引いて、近くに接近してたゴブリンの額に穴をあける。そして、スライドが止まる。弾切れだ。
ドローンを操縦するスマホを軽く宙に投げ、その間にリロード。
「『関西』ィ!」
目の前でトロールの目を投げナイフで突き立ててた『関西』に拳銃を投げ、『関西』も投げナイフを返却する。
操縦せず放置されたドローンは飛びながらその様子を撮影し続ける。
【田中正造Mk.3】
こいつらなんで戦えてるの
【とらすとみー淡路島】
なんだ今の
【かわずけろっぐ】
連携がすごいな
【私がフロストマンだ】
この状況でどうやってドローンをそうさしてんだよ
「おっと、それはダメ」
対ドローン用散弾銃を構えた何者かの姿を一瞬とらえた。スマホ越しにそれを見た『オキタ』は高度をとって旋回の指示を出す。
映像を見て目を回している視聴者もいるっぽいので、ちょっとした休憩にもなるだろうと。
ただ、個人的には目を回すほどの映像か? という疑念が頭の中にあったので
「『部長』! カメラドローンの操縦変わってくれませんか!? なんか自分の感覚麻痺ってるみたいで!」 「無理っ!!」
「「「いや、両手にライフルを構えるんじゃないよ!!!」」」
『部長』がドアップでヒャッハーと叫びながら片手にライフルもって乱射している瞬間がドローンに写る。
「というか、何発撃ったんですか!?」 「えっ? 知らない。えーとマグチェンジを3回はやったような……」
「「「マグチェンジ(リロードのこと)を3回!? 90発!?」」」
90×100=9,000円也。なお、これにダンジョン投入コストが加算される。
なお、部長のライフルは7.62ミリのダブルバレルなので、実際には1マガジン40発(20発マガジン横連結)である。120×100=12,000円也。
銃弾とは物にもよるが、1発100円程度だ。1発撃つごとに100円玉が飛んでいくわけだ。
あと、ダブルバレルとは別に5.56ミリの日本製最新型アサルトライフルも片手に構えているわけだから、もしもこれもリロードを3回はさんでいるという場合……。
「『部長』を取り押さえろォ!」
『関西』がそんな声をあげながら、3人がムンクの叫びになっているのも気にせず『部長』は引き金を引く。
飛んでいく2発同時発射の7.62ミリと1発の5.56ミリがゴブリンの頭を吹き飛ばし、トロールの目の中に入り、出現したばかりの誰かのドッペルゲンガーを誰かを乗っ取る前に
ぶっ飛ばしていく。
それとは関係なく、大量の銃弾が鍾乳石を打ち壊して落下させる。
「「「やまほど100円玉ぶっ放して、無駄なことをしている!?」」」
3人組の叫びはカメラドローンを通じて全世界に向かって放たれた。




