表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/13

第一章・第8話 ——王都、そして願いの理由——

王国騎士団に案内され、数日――


「……でかいな」


ミノルは思わず呟いた。


目の前に広がるのは、巨大な城壁都市。

高くそびえる白亜の壁、その向こうに見える無数の建物。


王都。


それは、今まで見てきた景色とはまるで別世界だった。


「人の気配が……とても多いです」


シロが周囲を見回す。


「ぷる……!」


ルミィも少し緊張しているのか、ミノルの肩にぴたりとくっついている。


「問題ありません。何かあれば、私が排除します」


カグラが淡々と告げる。


「いや排除すんな。目立つな」


慌ててツッコむミノル。


そんなやり取りをしながら、一行は王都へと入った。


---


「うわ……」


中へ入った瞬間、思わず声が漏れる。


市場には人が溢れ、商人の呼び声が飛び交う。

色とりどりの品物、行き交う人々。


「すごいな……活気がある」


「はい。豊かな都市の証です」


シロが頷く。


だが――


「……あれ」


少し離れた場所。


石畳の通りから外れた先に、視界に入った光景。


崩れかけた建物。

痩せ細った人々。


「……貧民街、か」


ミノルは小さく呟く。


さっきまでの賑わいとは、あまりにも対照的な光景。


「同じ街とは思えないな……」


「どの国にも、影はあります」


シロの声は静かだった。


カグラも、何も言わずその光景を見つめている。


「……」


ミノルは少しだけ眉をひそめたが――


「行くぞ」


騎士に促され、再び歩き出した。


---


やがて、一行は王城へと到着する。


巨大な門をくぐり、長い廊下を進み――


「こちらです」


案内された先。


重厚な扉が、ゆっくりと開かれる。


その先にいたのは――


「よく来た」


玉座に座る、一人の男。


威厳ある声。

年齢を感じさせながらも、その瞳には強い光が宿っている。


「我が国の王である」


ミノルたちは軽く頭を下げる。


(……ガチの王様だな)


内心で少し緊張しつつ、顔を上げる。


王は、じっとミノルを見つめていた。


「そなたが……幻獣を従えし者か」


「まぁ……そんな感じです」


少しだけ曖昧に答える。


王はふっと笑みを浮かべた。


「堅苦しくせずともよい。そなたは客人だ」


「……どうも」


少しだけ肩の力が抜ける。


そのとき、団長が一歩前に出る。


「陛下。例の作物を」


「ああ」


王が頷く。


運ばれてきたのは、ミノルたちが育てた作物。


瑞々しく、生命力に満ちたそれら。


王はそれを見つめ、ゆっくりと口を開いた。


「……やはり、ただの作物ではないな」


「ええ。霊気を帯びています」


シロが小さく補足する。


王は深く頷いた。


そして――


「そなたたちを呼んだ理由を話そう」


その言葉に、空気が少し変わる。


「この作物を、王に献上する理由――それは」


一瞬の間。


「我が娘……王女が、病に伏しているためだ」


「……!」


ミノルは思わず目を見開く。


「長きに渡る原因不明の病。あらゆる治療を試したが、回復の兆しはない」


王の声は、静かだが重い。


「だが――」


作物に視線を落とす。


「この生命力。この霊気」


「もしかしたら……治せる、と?」


ミノルが呟く。


「ああ」


王ははっきりと頷いた。


「希望は、わずかでもいい。掴みたいのだ」


その言葉には、王としてではなく――

“父”としての想いが込められていた。


だが、それだけではなかった。


「そしてもう一つ」


王は続ける。


「王都の貧民街にも、同様に病に苦しむ者が多い」


「……」


さっき見た光景が、脳裏に浮かぶ。


「彼らにも、この作物を与えたい」


「……なるほどな」


ミノルはゆっくりと息を吐く。


「ただの献上じゃなくて、“治療”のためか」


「そうだ」


王は真っ直ぐに答える。


「そなたたちの力が、多くの命を救うかもしれない」


静寂が落ちる。


シロは静かに目を伏せ、

カグラは腕を組んで考え込む。


ルミィは、微かに光を揺らしていた。


「……ミノル様」


シロがそっと声をかける。


「これは……とても尊いことです」


「分かってる」


ミノルは頷く。


そして――王を見る。


「……いいよ」


短く、そう答えた。


「元々、そのつもりで渡したわけじゃないけど」


少しだけ笑う。


「使えるなら、いくらでも使ってくれ」


王の目が、わずかに見開かれる。


そして――


「……感謝する」


深く、静かな言葉。


それは一国の王ではなく、

一人の父としての礼だった。


---


こうして――


ミノルたちの作物は、“命を救う希望”として使われることになった。


王女のために。

そして、貧民街の人々のために。


それは、ただの農作物ではない。


命を繋ぐ、“奇跡の実り”。


物語は、さらに大きな局面へと進んでいく。


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ