【嗤う人影】
神社の石段の下に、女の死体。
虫の集る弱々しい街灯の光が、無惨に死んだ女の姿を照らしてる。
頭を打ったのかな、それとも、首が折れたのかな?
どちらかは知らない。
けど、女が死んでいるのは確かだよ。
この女は、とんでもなく高い石段の、1番上から転げ落ちたんだ。
見上げれば、石段の所々に街灯がちらほら。けれど、闇が深くて、街灯で照らされていない所は真っ暗だ。
階段の上には鳥居があるはずだけど、ボクがいる場所からは見えないな。
時間は午前2時を過ぎたころ。
近くに大きな駅があるけど、神社の周辺はしんと静まり返ってる。
時々、近くの大通りを走る車の音が聞こえるけど、それ以外は何も聞こえない。静か過ぎて、耳鳴りがしそうだよ。
草木も眠る丑三つ時とは、まさにこの事だね。
肌にじっとりと湿気を含んだ熱がまとわりついてくる熱帯夜。
けれど、その不快さよりも愉快さの方が勝っててさ。ニマニマと頬が緩んでくる。笑い出したいくらいにね。
足元の哀れな女の死体が、ボクをとても楽しい気分にさせてくれるんだ。
とはいえ、ここに長居して、怪しまれちゃたまんないや。
ボクは女の死体に背を向けた。
ミステリー始めました。