翼の生えた箱
ピンポーン。
「お届け物でーす! うわっ」
ある日、翼が生えたので。
箱は、目的地に郵送される前に、飛んでいった。
だって、中の商品を取り出された後は、捨てられるだけだから。
その前に自由に旅をしてみたかった。
中の商品が主役で、箱はおまけ。
それは分かっているけど、ぞんざいに扱われて終わりたくなかったから。
このまま逃げ出してみるのもいいかもしれない。
ぱたぱたぱた。
翼をはためかせて飛ぶ空はとても気持ちがいい。
街並みを眺めると、心がすっきりした。
観光地のタワーよりも高い場所で、ぽかぽかひなたぼっこしたり。
真っ白な雲や鳥と一緒に気ままに飛ぶのは楽しい。
けれど、箱は中身が気になった。
小さな女の子が、病気のおばあちゃんに元気になってもらうために、お守りを作っていれてあったから。
箱は翼をはためかせて、とある家の玄関へ戻る。
冒険は終わり。
やっぱり、お届け物をとどけなくちゃ。
「ああ、よかった。困るよ、勝手にどこかにいなくなったら」
ピンポーン。
「お届け物でーす」
箱は無事に届けられた。
「あらあら、わざわあありがとうね」