63.またふえた
水を汲んで朝飯食って、準備してる間に冒険者の数が増えてきた。中には、顔をよく知ってる奴らもいる。
『リュント姐さん、エール兄さん、お久しぶりっす!』
「まあ、『三羽烏』の皆さん。お久しぶりです」
「俺まで『兄さん』になったのか……」
そう、『三羽烏』のアード、バッケ、チャーリーだ。何やら、呼び方が変なことになってるがもう、気にしないことにする。
ていうかこいつら、コルトに女性メンバー取られた被害者だった。そりゃ、動員されてくるよな。
「ギルマスから、ざっくりと話は聞きました。コルトを見返してやるチャンスだと思って、志願したんすよ」
代表してアードが、にやにや笑いながらぽんと腰の剣を叩く。『暴君』の後もいくらか依頼をこなしたようで、何か顔に自信がついた感じだ。
「まあ、お前さんたちも当てにしてるよ。頼む」
「お任せあれ。なっ」
「姐さんのお力になれるんすから、何でもやるっすよ!」
「どうぞ、ご無理なさらないでくださいね?」
拳握って晴れやかな笑顔の三人組に、リュントがにっこり笑ってそんなことを言う。『はい!』と声を上げた『三羽烏』、ほぼ衛兵レベルで三人同時にきっちりと敬礼をしてみせた。
知り合いもいるけれど、俺たちは知らない方々も当然やってくる。
「グレッグ、来たぞ」
「ぐーちゃん、おひさですー」
「アナンダ、ナジャ、来てくれたのねえ」
二人連れの冒険者、というには軽装なんだけどな。背の高い青髪の青年と、青っぽいセミロングのふわふわ髪の小柄な少女。
どう見てもドラゴンですよね、このお二方。なんつーか、ここまで来ると人を超越したなにかって感じがするんだよなあ。あと、グレッグくんと知り合いな時点で、うん。
「まあ、君のお呼びとあらば。今回の話は、こちらにも伝わってきているしな」
「『竜殺し』が悪いとは言いませんけどお、暴走を止める輩が暴走しちゃだめですよねー」
青年のほうがひどく難しい顔をして、少女の方はへらへらと笑っている……んだけど怒っているのはよく分かる。一瞬、青いしっぽ見えたぞ君ら。
「……あの、グレッグくん。ご紹介頂いてよろしいですか」
「ああ、そうね。こちらがこの村で生まれたエールくんで、こちらがそこの森で生まれたリュントちゃん」
グレッグくんの説明が雑い。んだが、気が付いた。
俺を村生まれ、リュントを森生まれと説明したわけだ。俺が人間でリュントがドラゴンていうのは彼らもわかっているだろうけど、俺がこの村の生まれだってのを教えようと思った、んだろうな。
「で、こちらはアタシの古ういお友達。こちらがお兄さんのアナンダで、こっちのちっこいのが妹のナジャよ」
「アナンダだ。水系魔術が得意だからな、何かあれば言え」
「アナンダお兄様の妹のナジャでーす。基本肉体労働派でっす」
アナンダさんと、ナジャちゃんか。この方々の得意というのは人間のそれをやすやすと飛び越えるだろうから、素直に頼りにすることにする。
「エールです。よろしくお願いします」
「リュントです。グレッグくんにはお世話になっております」
リュントと二人して頭を下げる。顔を上げたら、アナンダさんと視線が合った。あれ、イケメン顔で穏やかに微笑まれるとちょっとぞくっとする、というか。
「ああ。お前が竜の森の守り人か、よい伴侶を得たな」
「はんりょ」
はんりょ。伴侶。
……はい???
「……あれ、違うか?」
「お兄様、多分このお二人まだそこまで行ってません」
ぽかん、と目を丸めてしまった俺の前で、ドラゴン兄妹は何やらおかしなことをおっしゃっておられる。誰が誰の伴侶だと……んー?
「というかこのおふたり、今のところただの冒険者パーティですよ」
「って、何言ってるんですかグレッグくん!」
リュントが顔を真赤にしてるのは、はてなぜなのか。




