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追放された荷運び係のところに、竜人がやってきた  作者: 山吹弓美


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40.援軍が来た

「エールさん、お待たせしました」


 翌日の朝。

 宿から出てくると、村の入口に馬車が一台、すっごく急いで来た。到着したところで、降りてきた冒険者は三人。

 ん、何か見覚えあるな、この三人。『三羽烏』じゃないけどさ。


「……あ、もしかして『緑の槍』? 前の依頼終わったんだ?」


「はいっ。お話を聞いたらゴブリンコロニーということでしたので、包囲に使いやすい土魔術持ちがいるうちが来ました」


 先頭に立つ、俺の肩くらいまでしか身長がない小柄な女の子が、満面の笑みでそう言ってきた。黒髪ショートカット、軽装鎧の腰には細い剣をぶら下げている。

 中堅パーティ『緑の槍』の剣士、スイナさんだ。何度か、冒険者ギルドで依頼書を見比べて話をしたことがある。

 ここの依頼を受けてサーロを出てくるときは確か別の依頼を手掛けてたはずなので、それを終わらせてすぐ来てくれたことになるんだよな。


「なるほど。その手使おうと思ってたからさ、助かるよ」


「やっぱり」


 にま、と笑う彼女とその仲間たちに、リュントがきょとりと目を見張る。そういう表情は、トカゲの頃から変わらないんだよね。


「エール。こちらは」


「援軍できてくれた、サーロの冒険者ギルド所属パーティ『緑の槍』の皆さんだよ。えーと」


 そういえばリュントは顔を合わせたことがなかったか、とひとまず紹介する。同じギルドに所属してても、会わないときはほんと会わないからな。


「剣士のスイナです。身体が小さいので、軽い長剣を使ってます」


「槍使いのヴィラだ。一応、このパーティのリーダーでもある」


 小柄なスイナとは対照的に、俺より頭一つ大きいこちらも女性。ヴィラは青みがかった緑の髪をツーテールにしてて、黒いレザースーツにプロテクターをつけてる。彼女の姿形が、このパーティの名前の由来。

 なお、槍とはいっても短槍なんだよね。収納スキルの付いたマジックバッグに常時数本をしまっていて、状況に応じて突いたり投げたり。二刀流ならぬ二槍流で、乱戦を駆け抜けるときもあるとのこと。


「魔術師のセリカや。うち、土の魔術が得意やねん」


 ピンクブロンドのふわふわした癖っ毛をポニーテールにしてるセリカは、衣装もピンク系のフリフリヒラヒラ系。このスタイルで戦闘してもほぼ汚れないのがすごいというか、土魔術でゴーレムとか壁とかを作って攻撃するから敵が近づけないんだけどね。

 言葉に西の方の訛りがあって、そのせいでというかそのおかげでというかコルトは近づかなかった。変なところ気にするんだよなあ、あいつ。


「我々は四年ほど冒険者をやっているが、強力な敵よりは小型の魔物の群れなどを相手にするほうがふさわしい自覚はある。よって今回、あなたがたの支援として依頼を受け派遣された。よろしく頼む」


 リーダーとしてヴィラが、パーティの特徴をさっくりとリュントに伝えてくれる。リュントはというと、赤い目をきらきらさせてものすごく嬉しそうだ。……何だろ。


「こちらこそ、よく来てくださいました。魔法剣士のリュントと申します」


「リュントちゃんかあ。活躍、聞いてるで。ドラゴン落としたんやて? すごいなあ」


「え、いえ、『三羽烏』さんやエールの力がなければできませんでしたから」


「ええ、エールさんラブっぷりもよく伺っております」


 ……セリカはいいとしてスイナ、君何言っているのかな? 俺とリュントは……多分父娘みたいなもんだと思うんだが。

 いや、言葉にはしないけどさ。外見年齢としてはそう変わらないし、理由を聞かれても答えられないからね。


「スイナの言ってることはともかく、皆が来てくれてほんと助かった。まずは宿に入って一休みしてほしい」


 まあとりあえず、彼女たちは夜を徹して来てくれたようなので最初にやることは、休むことだ。馬車なんて、貴族が乗るやつでもなきゃ椅子は固いしがたがた揺れるしで、さらに急いできたんだから絶対疲れてるはずだしな。


「こちらも急いで来たからな、助かる。二人はどうするんだ」


「昨日結界石をぐるりと設置したから、その確認。昨日までの資料は俺の部屋にあるから、後で持っていくよ」


 そう、確認に出ようとしたところで彼女たちの乗る馬車が来たんだよね。そういえば、と思ったら馬車の御者さんが荷物下ろして村人たちと運んでるのが見えた。ああ、やっぱり輸送も兼ねてるか。


「いや、今見せてもらいたい。村の周囲を確認するなら、相応の時間はかかるだろう?」


「せやね。資料見るんは、ご飯食べながらでもできるし」


「そういうことで、良いですか?」


「わかった。リュント、ちょっと待ってて」


 で、彼女たちの言い分も納得できたので俺は、一度部屋に戻って資料を持ってくることにする。援軍の人たちに見せる用の資料もちゃんとあるので、そちらを持って出てきたところで。


「いややもう、何でこんなつやつやしてんねんこの髪羨ましいわあ」


「姿勢も良いし、筋肉も程よくついているな。剣以外に、槍も使ってみる気はないか?」


「といいますか、そもそもエールさんとはどこでお知り合いになりました?」


「……ええと」


 『緑の槍』三名に囲まれて、ものすごく困惑してるリュントがそこにいた。ははは、女の子パーティにいい意味で絡まれるのは初めてだよな、お前。

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[一言] リュントさん、援軍の女の子パーティに囲まれタジタジ。
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