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追放された荷運び係のところに、竜人がやってきた  作者: 山吹弓美


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39.作戦を考えた

 村の人たちから聞いた話を、ざっくりとまとめてみた結果。


「ゴブリンの総数はおおよそ三十。二日前の推測なんで、四十行っててもおかしくはないな」


 という感じになりました。持ってかれた鶏の数とか、あと荒らされた痕などを見ての推測。

 いくらなんでも全員が出てくるわけではない、というか例えば幼体なんかはコロニーで待ってるはずだ。実際に、表に出てきて戦うゴブリンがだいたい成体であることは、この世界では常識である。


「増殖が早い、というよりはコロニーで育っていた幼体が成体になっているだろう、ということですね」


「そうそう。人間の認識ではゴブリンの成体は生後半年、になってるけど」


「森で教わった知識でも、そのくらいですね」


 人間の知識と、ドラゴンの知識を念のためすり合わせてみる。同じようで安心したけど、森で教わったって。


「……森、ってことはドラゴン仲間とか、ほかの魔物に教わった?」


「はい。年老いたドラゴンが森の奥で隠遁生活をしておりまして、程よく成長するまではそちらでお世話になっておりました」


「ああ、そういうドラゴンもいるのね。暴走ドラゴンの対処には出られなかったのかな」


「ほとんど眠っておられますから」


「そっか。本当にお年を召されてるんだね」


 まあ、生まれたときに自動的に知識がぶっこまれてるなんてことはないか。

 例えばリュントの場合は小トカゲの頃に俺のそばにいたから、ある程度人間側の知識もあるわけだけど。ドラゴンだって親とか身近にいるドラゴンから教えてもらってもおかしくないんだ。そりゃそうだ、うん。

 ……リュントにいろいろ教えてくれた老ドラゴンに、いつかお礼をしたほうが良いかなとは思う。村の流儀に従ってお供物するくらいだけど……一応するんだよ。竜の森の近くで、比較的安全に生活させてもらってるんだから。

 ま、そのあたりは先々考えることにしよう。まずはゴブリンコロニー対策だ。


「さて、四十だとぶっちゃけ二人じゃきつい。一応方法は考えてあるけど、取りこぼしが出そうだな」


「方法ですか……何らかの手段でコロニーを包囲する、くらいしか思いつきませんが」


「うん。まさにそれ」


 相手は弱いとはいえ多数なんで、そういう方法取るのが手っ取り早いというか確実というか。取りこぼすとこう、確実に反撃されるからね。復讐ともいう……ま、家族全滅させられて生き延びたら人間でもやるよなー、という話だ。


「ゴブリンの生態は、どのくらい知ってる?」


「数家族による集合生活を行う、夜行性の小型の魔物ですよね。簡易な道具を使用し、時には高位の魔物の指揮下に入ることもある、と」


 うむ、リュントの知識は冒険者としてはまず問題なさそうだ。詳しいところは細々とあるけれど、それは実際に必要になりそうだったら調べればいいし。冒険者ギルドに問い合わせれば、ちゃんと資料は出してもらえるからな。

 で、リュントは自分が言葉にしたゴブリンの生態から作戦を割り出せたようだ。冒険者がよくやる作戦なんだがね。


「つまり、日の出ている間にコロニーの周囲に壁を作るなり何なりして、その上で内部を殲滅するということですね」


「そうなるね。ただ、高位の魔物が指揮してたりすると昼間に見張りがいる可能性もあるから……それは確認しないと」


 よっぽど警戒心のないコロニーだと、巣穴塞いで内側に水なり油なり流し込むというど外道な方法もある。油の場合は魔術か何かで火をつける、というおまけ付き。

 でもまあ、大概はそこまで接近する前に気づかれるから、それより外側に木の枝とか集めて最低限でも柵を作って以下省略、というやり方になる。

 万が一、さらわれた赤ん坊だの幼児だのがいた場合にはそれは使えないわけだが。だってほら、コロニーの中でまだ生きている可能性があるから。


「なるほど。二人で包囲と殲滅、それ以前の状況確認は厳しいですね」


「だろ。明日か明後日には誰か来てくれると思うから、それまでは結界石の点検と見回りを欠かさないようにしないとな」


 まあそこら辺は、リュントの言う『それ以前の状況確認』でどうにか調べないといけないんだけど、本気でこれは俺とリュントだけでは難しい。リュントが三年前の小さなトカゲだったら最悪、こっそり中に入ってもらうんだけどさ。


「エールはお疲れでしょうから、見回りは私が担当しますよ?」


「いやいや、俺がやるよ。リュント、せめて一緒に行こうぜ」


「私にとっては喜ばしいことですが、エールに苦労をかけるのは本意ではありません」


 あ、むっとした。それでも可愛いのはさすが、リュントだな。

 といっても、こういう裏方仕事で俺が苦労するのは当然だろう、と思うんだよね。


「俺は戦闘力ないんだから、こういうときはしっかり働かないと。戦闘になったらほぼ、リュントに丸投げになっちまうからな」


「それは何の問題もありません。私はエールのパートナーですから」


 いや、真顔でそう言ってくれてもなあ。

 俺は戦闘中、ポーションとかのアイテムを使うか盾になるくらいしかやることがない。敵にダメージ与えるとかのメイン行動はリュント任せになってしまう。だから、戦闘以外ではちゃんと働かないと駄目なんだけど。

 あと、俺たちだけの問題ではないんだよね。人間、外から見られると困ることってあるから。


「当人はそれでいいかもしれないんだけど、第三者から見ると俺がお前をこき使ってるように見えると思うぞ」


「そのような面白いご意見をお持ちの方には、私がしっかりと言い聞かせますのでご安心を!」


 なのでそう説明したら、リュントは赤い目をきらりんと光らせてそう断言してのけた。いやちょっと待て、お前の言い聞かせってほんっとうに言って聞かせるだけだな? マジだな? 俺絡みになるとこう、うっかりおかしな行動に出そうで怖いんだけど。


「言い聞かせるだけにしろよ? 物理的な攻撃は禁止ね」


「分かっています。うっかりするとこう、ぷちっと行ってしまいますので」


 やっぱりかーい。

 それと、男のぷちっは分かるけど女はどうするつもりなんだろ。頼むから、手も足も爪も牙もしっぽも出しちゃだめですからね!?

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