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追放された荷運び係のところに、竜人がやってきた  作者: 山吹弓美


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36.依頼先の村に行った

 さて。


「エールくんとリュントさんなら大丈夫だと思うけど、数が多いから早急に応援を出すよ。アイテムの方は大丈夫だね?」


「はい。結界石三十個、出してくれてありがたいです」


「必要経費だからねえ。ちゃんと依頼達成したら、その分請求するからね。ともかく、行ってらっしゃい」


 さすがに、多数のゴブリンを相手に二人だけでは面倒だということで、ギルドの方でも追加依頼をしてくれることになった。というか、今そこの受付でいくつかのパーティが係員さんと話してる内容が、まさにゴブリンコロニー関連だ。


 俺たちはひとまず先遣隊として、依頼主であるワイティ村に向かった。ゴブリンコロニーを潰すのは村の生活を守るためなので、村側を防御する用の準備もしなくちゃならないからね。

 結界石、魔物が入り込まないように人里の周りに置く魔術の道具。魔術師がいるとこなら定期的に魔力を流し込めばいいんだけど、大概のところはそうじゃない。あと、魔物の襲撃頻度が低いところだとそもそも置いてなかったりもする。

 今回のワイティ村は、その置いてないところ、に該当していた。なので急いで行く必要があった。これはしょうがない、ということでちょうどそちらに行く馬車を手配した。


 サーロからは一日半ほどの距離で、結界石置いてないくらいに平和な村なので途中エンカウントもなかった。いや、案外リュントが周囲を警戒してたから、ドラゴンの気配感じて魔物がビビってたのかもしれないけど。でも、馬は平気だったしなあ。


「ゴブリンコロニー排除の依頼を受けて参りました。『白銀の竜牙』のエールと、こちらはリュントです。先遣隊として参りました」


「よろしくお願いします。いや、まさかこういうことになるとは思ってませんで」


 依頼者が村長さんということで、まず情報更新も兼ねてご挨拶に伺った。三十代くらいの気のいいおじさんで、多分親御さんから村長職引き継いで間もないってところだろうな。なんというか、初々しい。


「そうそう。コロニーを潰すまでの防御策として、魔物避け用の結界石を持ってきました。村の周囲に設置したいんですが、構いませんか」


「え、ええ。ありがたいところですが、ひとつだけでは」


 あーうん、俺何も持ってないように見えるからね。結界石一つだけでも、両手に乗るくらいのサイズだし。


「俺、荷運び屋なんですよ。収納スキルで三十個、持ってきてます」


「ほ、本当ですか! 確かに、三十もあれば村はカバーできます!」


 なのできちんとお伝えすると、村長さんの顔がぱっと明るくなった。

 村を囲むようにきっちり設置すれば、十分効果を発揮するはずだ。コロニーを潰すまでって言ったけど、多分半年くらいは保つ。強力な魔物が出てきたら短くはなるけどね。


「結界石の配置は、村の人たちにお手伝いをお願いしてもかまいませんか?」


「はい、もちろんです。まだ被害はそれほど出ていないんですが、鶏の数が減ってきてるんですよ」


「数が多いでしょうから、手頃なところから捕らえているんでしょうね。例えば、今日は?」


「オーロのところで三十羽ですね。それと、いつもの手段のようなんですが、番犬がやられました」


 リュントの質問に対する答えに、うわとなった。鶏の数も大概だけど、番犬もというところが。

 結界石を使わない代わりに、番犬に番をさせていたらしい。『いつもの手段』て村長さんが言うくらい、鶏を盗っていくゴブリンたちはその番をする犬たちを黙らせて行ってるわけだ。

 早めに片付けないと、番犬が全滅するか別の家畜に手を出されるか、人間か。まずは結界石で村全体を守って、それからだな。

 あとは、最新の情報をもらうことにしよう。作戦はいくつか頭の中で考えているけれど、現在ゴブリンたちがどうしているか、それによっても変わってくるから。


「それと、ゴブリンコロニーの詳しい場所や規模の情報をください。依頼が出されてから時間が経っていますから、状況が変化しているかもしれませんしね」


「分かりました。結界石を配置する間に、まとめておきます」


「お願いします」


 たぶん、村長さんのところには村民からゴブリンに関する情報が日々集まってるから。さっきのオーロさんの鶏三十羽と番犬、とか。

 なので、ひとまとめにしてもらえばこちらも作戦を決めやすい。頼むよー。


「っと、ザックとデュエルを呼んでくれ。結界石を置いてもらう手伝いをさせる」


 村長さんがお手伝いさんに声をかけているのを聞きながら、俺はちらりとリュントに視線を向けた。


「どう思う?」


「数としては、まだ多くない気がします。ただ、今増殖している最中、の可能性がありますね」


 少し考えて、リュントはそう答えてくれた。今増殖している最中、ってつまり子育て真っ最中ってやつか。

 人間よりも妊娠期間が短い上に成長が早いから、一年も気づかないでいると村人にはまず手がつけられない数になってる、って話を聞いたことがある。早いうちに気づいて良かったというか、うん。


「まあ、情報もらえばある程度推測はできるからね。まずは結界石を使って、村を守ることから始めよう」


「はい」


 俺の言葉に、彼女は力強く頷く。

 ドラゴンになってもらってうがー、と暴れてもらえば楽勝なのかもしれないけどさ、俺としてはリュントの正体バレてほしくないし。


 今俺が身につけている『暴君』の革みたいにされたりしたら、俺は正気でいられない自信はある。ま、すぐ排除されるだろうけど。

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