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追放された荷運び係のところに、竜人がやってきた  作者: 山吹弓美


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20/78

20.馬車を確保した

 ポーションや食料を運ぶために、俺たち『白銀の竜牙』はほかの冒険者パーティと馬車に相乗りして行くことになった。歩いていくと、どうしても時間がかかるからな。


「よろしくお願いします」


「お、おお、よろしく」


「こ、この前はどうも」


「ほんじつはおひがらもよく」


 で、同行することになったパーティの男三名、ひどく腰が低い。

 それも当然のことで、こいつらは俺とリュントが再会した当日に俺のことをちょっと悪く言ってリュントにふっとばされた皆さんだからである。何の縁だろうね、これ。


「あんたら、何ビビってんのよ」


 その三人に呆れ声をかけるのは、馬車の御者をやってくれるグレッグくん。うん、言葉遣い微妙だけど男性。

 ただし外見は金髪細身で、髪も背中まで伸ばしてるから一つ間違えると女の子に見える。コルトにナンパされた経験まであるからな……あいつは気づかなかったんで、連れてた馬に蹴飛ばさせたらしい。まあ、いいけど。


「あ、いやその」


「エールに悪さをしなければ、あそこまではやりませんのでご心配なく」


 もがもが、と口ごもる三人組に対し、リュントはにっこり笑って釘を刺した。

 あそこまでって、『視界から消えるように吹き飛ばす』だよね。まあ、世界から消されるレベルじゃなくてよかったな、としか言えない。


「そういえば、彼女が噂のリュントさんだもんね。なんというかあんたら、ひと目で実力見抜けないのがおかしいでしょ」


 グレッグくんは、俺たちと同じ冒険者ギルド所属の冒険者である。本人はよろず屋を名乗っているんだけど……まあ、いろいろな雑用だったり鍵外しなどの手先の器用さを必要とする作業が得意なんだよね。御者もその一つだそうな。

 で、冒険者の実力を見抜くってのも彼はものすごく得意である。俺のことは何か気に入られていて、だから今回は向こうから運んであげるよ、と手を上げてくれた。

 三人組はギルドからこいつらも一緒に、と頼まれたんで仕方なく、と言っていた。多分、ライマさんあたりからかなあ。ごめんな、面倒かけて。


「ははは……リュント、実際に強いからねえ」


「私などまだまだです。ですが、エールのためならば努力は惜しみません」


「エールくん、いい仲間に来てもらえて良かったねえ」


 思わず顔がひきつる俺の横で、リュントの笑顔は全く崩れない。グレッグくんも平然と笑ってるのがさすが、というか。

 と、そのグレッグくんの目が鋭く光った。深い青のちょっとツリ目は、俺より幼く見える体格の中にあって実年齢を思い出させるというか。

 ……実年齢というか、自称二十五歳。冒険者ギルドの他の人たちもそこら辺は否定しないというか、少なくとも俺より年上なのは間違いないんだそうで。

 グレッグ『くん』の呼び方については、最初に会ったとき本人がそう呼んでよね、と言ったのでそうしてる。コルトたちは呼び捨てにしてるんだけど、彼自身は気にしていないようだ。


「つか、あんたら。エールくんにちゃんと謝ったの?」


「え、いやそれは」


「コルトはともかく、エールくんはあんたらに何もやってないだろ。文句言うなら、下半身の緩いコルトとテルカに言いな」


 その証拠というか……あの三人組、グレッグくんにぺしぺしと頭を叩かれても抵抗しない。以前反抗してしばき倒されたとかいう話を聞いたことがあるんだが、まあ本当のことなんだろうね。

 テルカ、っていったっけ、コルトが下半身に物言わせてこいつらから持ってった女の子。今頃どうしてるんだろ?


「ごめんねえ、お二人さん。こういう馬鹿と一緒なんてさ」


 あははと能天気に笑いながら、グレッグくんはそんな事を言ってきた。そりゃそいつらは馬鹿なんだろうけどさ、わざわざ言ってやることもないんじゃね?

 それに。


「いや、確かにコルトを止められなかった俺も悪いですから」


「『魔術契約書』の主を止められるわきゃないだろ? なに、魔物襲ってきたらこれ盾にしていいから。丈夫なのはそちらの彼女、ご存知だろ」


「はい。ぷちっと潰せるかと思ったんですが」


「そ、そうほいほい潰しちゃだめだからね?」


 リュント……ぷちっと、って言うときに何で拳握ってひねるような仕草すんの。股間がひゅんといっちゃったじゃないか。俺だけじゃなく三人組も、グレッグくんも。


「そうですね。じわじわと行ったほうが、効果は高いと思います」


 ひとまずリュント、人間男の急所についてはどこで教わったのかきっちり知ってるんだね。前のギルドとかで教わったのかな……ま、いいか。さすがに大丈夫だと思うけど、まだまだ人間界隈の常識とかには疎いからなあ。


「あはははは、そういうことらしいよあんたら。覚悟はできてんだろうね?」


『二人とも、すみませんでした!』


 男の急所をじわじわやられてはたまらないんだろうね、三人揃ってびしりと頭を下げてくれた。

 こちらとしては、面倒なことにならなけりゃいいってだけだけどね。


 ほんと、テルカとかあの女の子たち、どうしたんだろうな?

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― 新着の感想 ―
[一言] リュントのプチッ方面の知識の出処、謎ですね。
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