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魂の継承者〜導く力は百万の前世〜  作者: 末野ユウ
第二部三章 王都動乱
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『建国祭 美魔女VSサキュバスクイーン』

「みなさん、指示に従い教会もしくはギルド館へ避難してください!」


 ガルフがルーベリアと戦っていたとき、ナミラたちは市民を安全な場所へ避難させていた。

 他の兵士や冒険者らも協力してくれていたが、返り討ちに遭ったガルフの姿に群衆はパニックを起こしていた。


「こ、こっちに来たぞ!」


 ルーベリアが満面の笑みで飛来し、広場の上で止まった。


「俺が迎撃に出る! みんなは」

「『私に夢中になって(ラブ・ロマンス)!』」


 ナミラの指示が終わる前に、ルーベリアは両手を広げてピンク色の粒子を撒いた。


「なんだ?」


 それは霧の如く王都を包んだが、視界を遮るほどではない。


「ルーベリアさまあー!」

「すてき! きれい!」


 しかし、人々に与える影響は絶大だった。

 誰もがルーベリアに羨望と好意の目を向ける。そしてそれはダン、デル、アニ、モモの四人も例外ではなかった。


「あーっはっはっは! そう、私はなにより美しい魔女! みんな私に夢中になってえええええ!」


 王都を見下ろし、ルーベリアは喜びの声を上げた。


「お、おい! みんな、しっかりしろ!」


 ナミラは仲間たちに声をかけるが、まったく反応がない。


「……サキュバスの魅了と似ているな。俺が無事なのはアルーナの耐性のおかげか」


 ナミラは意識を集中させ、解析を行おうとした。


「……『風の刃(ウインド・スラッシュ)』」

「っ!」


 しかし風の斬撃が襲いかかり、咄嗟に後ろへ飛んだ。

 上空のルーベリアが、冷めた目でナミラを見下ろしていた。


「本当に可愛げのない子。なんなのお前」


 不快感を隠そうともしないまま、細い指がナミラ差した。


「みんな、あいつを殺して? 殺してくれた人には私、キスしてあげちゃうわ」


 甘いささやきに誰もが従い、街中からの殺意がナミラに向けられた。


「マジかよおい」


 一般市民はまだしも、操られているとはいえダンたちの実力は油断ならない。

 他にも武装した兵士や冒険者がいる中、怪我を負わせずに立ち回ることは、ナミラにも至難の業だった。


「「ガァァァァァァ!」」


 周りにいた全員が襲いかかる。

 ナミラは多少の怪我はやむ無しと決め込み、闘気で迎え撃つつもりだった。


「……あれ?」


 しかし直前になって洗脳が解け、人々は正気に戻った。


「これは!」


 ナミラが声を上げる。

 立ち込める霧とはべつに、いつの間にか桃色の光が王都を包んでいた。


「あらぁん、失礼しちゃうわねぇ〜。この私より美しいって言うのかしらん?」

「だれ!」


 空で響くもう一つの甘い声。

 ルーベリアとは違い、生来持った人を惑わす力が、言葉のひとつひとつに込められている。


「サキュバスクイーンの目の前で人を魅了するなんて、いい度胸してるじゃない」


 黒翼を広げ、マーラがルーベリアと対峙する。

 照らす光はマーラが放った魅了の力で、ルーベリアのものと拮抗しその効果を相殺していた。


「マーラ!」

「ナミラ様、ここは私が! はやく避難を終えてくださいませ! この霧は恐らく、白魔法の結界で防げますので」

「でも……お前はっ!」


 ナミラはマーラの身を案じたが、覚悟を決めた視線を返された。

 ナミラに与えられた力は半分もなく、クイーン本来の強さには遠く及ばない。ここまでのルーベリアの実力から考えても、勝てる見込みはなかった。しかし、魅了を相殺できるマーラしか時間を稼ぐことができないのも、紛れもない事実であった。


「……すぐに戻る! 死ぬなよ!」

「もちろん。まだみんなで踊ってませんもの!」


 ニッコリと笑い、マーラは愛しさを込めた瞳でナミラを送り出した。


「邪魔しないでよこの淫魔風情があああああ!」

「あらあらぁ〜ん? きれいなお顔が台無しよん、この小娘」


 二人は凝縮した魔力を纏い、王都の空で縦横無尽にぶつかり合った。

 背中に激しい戦いの波動を感じながらも、ナミラは決して振り返らない。胸のブローチを取り、天に掲げて吠えた。


「我々は王から特権を与えられし者である! 指示に従いすぐに避難を! 兵と冒険者は同行し、白魔法での守護を行え!」


 腹の底に響くナミラの声は、人々を有無を言わさず動かした。


「ダンは南デルは北、アニは西の教会へ護衛を。モモはガルフ様のところに。無事なら連れてきてくれ。俺は東へ行く」


 四人は頷き、すぐさま行動を開始した。

 ナミラたちは人々を誘導し、モモは杖に跨ってガルフが落ちた場所へ飛んだ。

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