『王立学院アインズホープ 正体』
「モ〜モちゃん。大丈夫?」
「……あれ? わたし、なにを」
正気に戻ったモモは、アニの呼び声にぼーっと答えた。
「そ、そうだ! アニちゃん、大丈夫? 怪我はない?」
「大丈夫、みんな無事だよ。ありがとう、私たちのために怒ってくれて」
アニに抱きしめられたモモはお礼を言われる意味が分からず、恥ずかしさで頬を赤らめた。
「さーて、皆の衆。そろそろ食事にしようかの。ほれ、食堂に急げ!」
ガルフは結果に満足しながら、手を叩いて明るく言った。
ナミラたちは四勇士が案内役を自ら務め、無礼を謝罪された。モモはバーバラとアニに囲まれながら、道中それぞれの相手と親交を深めていた。
「……きみには本当に驚かされたな。それに、聞きたいことが山ほどある」
「いいですよ。でも、勝者の特権でこっちからいいですか?」
グレイヴが頷くと、ナミラは前に立ち塞がり一行の足を止めた。
「歩きながらじゃダメかい?」
「そうですね」
ナミラはすべてを見透かすような視線をグレイヴに向けた。
「あなたが使った威光剣という技。あれは本来、王家秘剣。威光王剣という技のはずだ」
グレイヴはなにも言わず、驚く仲間たちの声を聞いていた。
「王家秘剣は、王の直系にのみ伝わる秘伝。だから今まで誰も気づかなかったのでしょうけど、おかげで確信を得られました」
ナミラが微笑むと、グレイヴは観念したかのように目を閉じた。
「昨夜セリア王から手紙が届き、俺は貴方を探す密命を受けました」
ナミラがおもむろに跪く。
「セリア王国第一王子。アレキサンダー・フォン・キングス・セリア様」
四勇士の仲間やアニたちが、信じられないといった顔でグレイヴを見る。
すると、みるみるうちに長い金髪が短く縮み、体格も一回り小さく変化していく。
魔法で変身していた仮初めの姿から、本来の容姿へと戻ったのだ。
「その通りだ……お前たち、今まで騙していてすまない」
口を開けて固まる四勇士に、アレキサンダーは頭を下げた。
「さて、色々ありますが……とりあえず、いい加減出てきたらどうです?」
ナミラが声をかけると、建物の陰から一人の男が姿を現した。
ナミラたちが乗ってきた馬車の、御者の男だった。
「こんなところでなにをしている。学院の中は、お前のような男がうろうろしていい場所じゃない」
「申し訳ございません。少し道に迷ってしまいまして」
アレキサンダーが追い出そうとしたが、ナミラが笑って静止した。
「もう芝居は必要ないですよ。はじめから気づいてましたし」
「あ、本当に?」
とぼけた声を上げ、御者は深く被った帽子を脱ぎつけ髭を取った。
「よぉ、久しぶりだなドラ息子。俺と違って変装が上手いなぁ」
「父上っ!」
「ルイベンゼン王っ!」
本来なら玉座に座っているはずの王が、ニヤつきながら立っている。
ナミラ以外の全員が驚きの声を上げ、慌てて跪いた。
「色々積もる話もあるが、これだけは言わせてもらうぞ……もう逃さないからな?」
引きつった笑みで後ずさったアレキサンダーの肩に、ナミラが逃さぬよう手を置いた。
アレキサンダーはガックリと肩を落とし、諦めの表情を浮かべた。
空にかかる虹は半日以上輝き続け、多くの人々が目にした。
ある者はその美しさに、新たな時代の到来を感じたという。




