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魂の継承者〜導く力は百万の前世〜  作者: 末野ユウ
第四章 古き縁と新たな出会い
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『危ない贈り物』

 多くの人に見つめられるのが耐えられなかったのか、モモは再びガルフのローブへ隠れてしまった。

 ナミラも同じタイミングで呼吸を整え、全身の鳥肌と冷や汗を再確認した。


(なんだったんだ、今のは)


 あどけない少女に感じた恐怖が、理解できなかった。

 今のナミラが恐怖を抱くということは、少なくともユグドラやゼノの力を脅かす可能性があるということ。見た目だけでは、モモにそんな力があるとは思えない。


(……あとで解析眼アナライズをしてみるか)


 なんとか落ち着きを取り戻し、ナミラはガルフたちと向き合った。


「ちょっとした旅行がてら、儂が王にわがままを言って連れてきたのじゃ。ちょっと恥ずかしがり屋じゃが、仲良くしてやってくれ。さーて、ツッカーノ殿。そろそろ、此度の英雄たちを讃えてはどうですかな?」


 にこやかなガルフの言葉に、ブルボノも「そうですな」と咳払いをした。


「では、この戦いで功績を上げた者たちに、このブルボノ・ツッカーノとガルフ様が、王に代わり御言葉と褒美を与える。者共、前へ!」


 促されたナミラたちは、立ち上がり横に並んだ。

 まず、王国の兵士であるシュウが進み出た。


「ふむ、シュウ・タキメノ。北の戦い、見事な活躍であったと聞いたであーる。他の者はどうしたであーる?」

「はっ。砦長は、北の砦で引き続き警備と補修に当たっています。ですが、足を運ばれた際には、兵士総出でお出迎え致します。エルフの盟友レゴルス殿は王国の者ではないため、お気持ちだけいただくとのこと。奥方の北のエルフ族長から、王への友好の書状を預かっております」


 シュウは懐から、シロツメクサで纏めた書簡を差し出した。


「それは儂が預かっておこう。必ずや王に届けることを、賢者の名において約束する。人間とエルフの、さらなる発展へ繋がるであろう」


 ガルフは書簡を受け取り、魔力で包んで懐へしまった。


「ごほんっ。では、御言葉と褒美の授与を行うであーる!」


 シュウから順番にゴーシュ、ガイが続き、大人たちが王からの賞賛と褒美の金貨や勲章を賜った。

 そして、テーベ村きしだんの番が回ってくると、子どもたちから一際大きな歓声が起き、母親たちは涙した。


「……その年で、本当によくやったであーる。王より直筆の認定書と騎士の勲章が送られた。お前たちは正式な騎士団として、王国に認められたのであーる!」


 他のメンバーが喜ぶ中、ダンはなにを言われたか理解できずポカンと口を開けて呆然としていた。


「しっかりしてくれよ、団長!」


 ナミラに背中を叩かれ手のひらで光る勲章に目をやると、ダンは涙を堪えた。

 だが、次の瞬間立ち上がり村人に向かって叫んだ。


「俺様たちは……テーベ村騎士団だあああ!」


 本来であれば無礼な振る舞いだったが、村中から上がる歓声にブルボノもガルフもなにも言わなかった。

 歓喜の声に包まれながら、ナミラはガルフのローブから視線を感じていた。


「……一通り終わったかの。なら、ここからは儂の仕事じゃ。報告にあった諸々を確認したいんじゃが」


 全員に名誉と見たこともない金品が贈られると、ガルフがゆっくりと口を開いた。


「人払いをするであーるか? 知る者を最低限にするため、吾輩も兵を王都へ置いてきたであーるから」

「いや、村人はもうすべて知っているのであろう? ならば、このままでもよい」


 穏やかな声の中に、警戒と好奇心が感じられた。

 未だ魔道の高みを目指す賢者の目は、底知れぬ輝きを放っていた。


「四元素と契約した妖精剣士だの、おとぎ話の精霊王だの本当の本当なんであーるな? 突拍子もなさ過ぎて、王都で他の貴族に笑われたであーる! 嘘だったら、このツッカーノ家に代々伝わる名剣ポルンノが抜かれるであーるぞ!」

「本当でございますよ。では、私から」


 シュウが進み出ると、四色の妖精が姿を見せ戯れるように漂った。


「なんとっ!」

「ほぉ、こりゃ驚いたわい。ほら、モモや。すごいぞぉ」


 ガルフに促されたモモが、ひょっこりと顔を出した。

 今度は気を強く持っていたため、ナミラも動揺することなく興味有りげな少女の様子を見ることができた。


「なるほどのぉ……ならば、精霊王も本当なのかの? 呼ぶなんて畏れ多いことできるとは思わんが、証明する術はあるかの?」

「それなら」


 ナミラが呼んでみせようと名乗りかけた。

 しかし、その言葉はべつの声に遮られた。


「ありがとうございます〜。皆さんが手伝ってくれたおかげで、たくさんお菓子が焼けましたぁ。ナミくんの立派なところも見られたし、ホントに助かりました〜」


 場違いなのんびりとした声に、自然と人々の視線が集まる。

 声の主は焼き菓子を運ぶファラだったが、一人ではなかった。


「いえいえ、我らも色々と教えてもらえて楽しかったですよ。あ、ファラさん。我が持ちます」

「ちょっとイフリート! あんた近づき過ぎ! せっかくのお菓子が焦げちゃうじゃない」

「わ、悪い」

「ファラさんファラさん、次はこの果物なんて使ってみませんか? 南の孤島にだけ実る、珍しい果物なんだが」


 四大精霊王が一緒にいた。

 わざわざ体を等身大に縮めて、ファラを人懐っこく囲んでいる。

 

「母さん! ちょっとこっち来て!」


 ナミラの呼び声に、ファラは「はぁ〜い」と嬉しそうに返事をした。

 しかし、一方で四大精霊王たちは「あっ」とナミラに見つかってしまったことを嘆いた。逃げられるとは思っていないようで、観念した顔でファラと共に近づいてくる。


 ガルフもブルボノも、精霊王たちの姿に啞然として固まっている。そして、それは足下のモモも同じだった。


(今だ!)


 ナミラはすかさず、モモを解析眼で見た。


 年は十一歳、健康に問題はないが同年代の村の子に比べ、体力がない。


(なん……だと)


 そして、ナミラは先程感じた恐怖の正体を知る。


 ギフト【無限魔力むげんまりょく】。


 万象王の前世を得たナミラでさえ、魔力は決して無限ではない。

 レイジの記憶が蘇ってから十年。必死で集めて高めてきた力。それを生まれながらにして超越する、世界の理を壊しかねない贈り物。


 ナミラは離れた広場に見える女神像に「なに考えてんだシュワ様」と呟いた。

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