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『テーベ村防衛戦 憧れゆえに2』

 デルは仮面から手を離し、深く息を吸った。


「ここから始まるんだ。僕は、きみを追いかける。どんな道でも、みっともなくても、諦めず足掻き続けてやる」


 決意を呟くと足の震えが止まり、眼下の男たちも怖くなくなった。

 思わず、笑みを浮かべてしまう。


「なに笑ってんだこらぁ! 降りてこい!」


 数人が弓を構え、矢を放った。


「ホッホホウ!」


 デルは仰向けに倒れ、矢を避けた。

 そのまま落下するかに思えたが、ナイフを左右の壁に投げ、新たに張った糸に着地した。


「ハイッ!」


 挑発するポーズを取り、殺気立つ男たちを笑った。


「舐めてんのか!」


 男たちは怒りで顔を真っ赤にし、今度は武器を投げつけてくる。

 

「ホウッ!」


 そんな刃を馬鹿にするように、反動を利用してふわりと跳躍した。

 元いた糸にフラフラと立つと、ニヤリと笑ってなにかを落とした。


「プレゼントですっ」


 それは、複雑に絡ませ組み合わせたナイフの塊だった。


「その名も、弾固蟲死だんごむし!」

「うおおっ!」


 刃の玉は地面に当たると花火のように飛び散った。

 しかし、歴戦の猛者は致命傷を防ぎ、非道な者は仲間を盾にやり過ごした。


「やってくれたなガキがぁ! ぶっ殺してやる!」

 

 動ける者たちは、武器を構えて吠えた。

 再び弓を引く者や、壁をよじ登ろうとする者もいる。しかし、デルはまるで意に介さず、優雅に両手を広げ闘気を練った。


「闘技 操演武具そうえんぶぐ


 デルの闘気が指と繋がった糸を通じて、弾固蟲死で散ったナイフに宿る。

 そして、指の動きに合わせて素早く動き、一瞬で全員を縛りつけた。男たちが為す術もなく身を寄せ合うと、今度は闘気の宿った刃が無慈悲に体を縫い付け始めた。


「ぎゃあああ!」

「や、やめろクソガキぃ!」


 必死の訴えに聞く耳を持たず、デルは男たちとは反対側へ飛び降りた。


道化殺法どうけさっぽう奥義おうぎ


 デルは広げていた腕を、翼を畳むように閉じた。


幕引血垂繭まくひきのちだれまゆ


 着地と共に絡みつく糸が無情に絞め上げられ、暴れる体を一つに纏めた。

 それぞれ仲間の武器や骨に貫かれながら、苦悶の声も上げられずに絶命した。


 静まり返った路地に、目を背けるほどおぞましい、血を滴らせる肉塊がぶら下がる。デルが闘気を解くと、地面とぶつかり嫌な音を立てた。

 

 なんと醜く、惨いのだろう。

 仮面の下から戦いのあとを見つめ、デルは思った。

 とても人に見せられるものじゃないし、英雄などと呼んでもらえるとも思えない。自分が憧れる姿には程遠い有様だ。


 でも、これでいい。

 臆病で卑怯な僕は、普通の方法では強くなれない。

 ここまでしてやっと、敵に勝つことができる。

 これでやっと、ナミラを追いかけることができる。

 今ようやく、果てしない旅への一歩を踏み出したのだ。


 デルは跳躍し、他の手勢を探し始めた。

 村を守り、さらに憧れへと近づくために。

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