3話 小さな過去
2話までお読みいただけたでしょうか?
読んで頂けたらぜひコメントや評価をお願いします。
3話 『小さな過去』 です。
まだプロローグという感じですが次話辺りから
物語が動き始めます。またこの巻では、咲太のひとつの過去が明かされます。あまり物語に大きく関係しているものではないですが結末に繋がるヒントがあるかも?なので楽しんで読んでいただけたら光栄です。
その後、勉強会は特に何もなく終わった
その後、みんなで駅まで一緒に歩いていた。
そこでも、修斗が香織に話しかけることはなかった。
そのまま駅に着いてしまった。修斗だけは電車が逆方向だからここでお別れだ。
「じゃあな」
「おう」、「またあした」、「さようなら」
香織は修斗と話すのに慣れてきたようだった。
修斗と別れ俺たちは電車に乗った。
「今日はありがとね」香織が言った。
「いやいや、こっちこそ」
「芝崎君には、さっき話したんだけど、咲太が今日誘ってくれたのって私が芝崎君とか大東君と話せるようにするためだと思って、ありがとね」実はさっき聞いてたなんて口が裂けても言えない。
「あ、いや、俺は単純に香織と勉強会したら楽しいだろうなと思って誘っただけだよ。そんなことまで考えてなかったよ」修斗の計画のためとは言えないからなんとか誤魔化した。
「あ、そうだったの。なーんだ」香織は少し笑いながら話してた。
「なにかあったの?」
「いや、そうだと思って頑張って芝崎君に話しかけたの」
「あ、そうだったのね。でもいいんじゃない」
「え、なにが?」
「それで修斗と話せるようになるんだったらそれはそれでいいと思うよ。香織も話せる人多い方がいいと思うし」
これで香織から修斗に話しかけるようになったら
ある意味作戦成功だ。
「たしかにそうだね。ありがと」
「でも、芝崎君は私と話すの嫌なのかな?」
「どうして?」修斗の印象が悪かったのかと少し焦った。
「芝崎君私と話す時、すごいもぞもぞしてるっていうか緊張してる感じがするから」焦ったのも損した。
「確かに緊張してるかもしれないね」
「でも、それは話すのが嫌なんじゃなくて、単純に緊張してるだけだと思うよ」
「どういうこと」
「そのままだよ、今まで話したことない人と話すのが苦手な人はいっぱいいる。しかもそれが異性となるとなおさらだからね」
「そうゆうことか、ちょっと安心した」安心したのはむしろ俺たちの方だった。
「むしろ、香織は修斗に好かれてると思うよ」
「冗談はやめて」
「冗談じゃないと思うけどね」
話していると香織が降りる駅に着いた。
「じゃあ、明日ね」
「うん、じゃあね」、「バイバイ」
香織は電車を降り、俺と大輔だけになった。
「おい、さっきまでおれ空気みたいだったじゃないか」大輔が落ち込んだ顔でこっちを見てきた。
「わりい、わりい」少し笑いながら返した。
「でも、お前のいいリハビリにもちゃんとなってんじゃないか」
「そうかもしれないな」
もう陽は沈み、電車の窓は鏡のように僕たちを移している。
次の日俺は修斗に話しかけた。
「修斗、お前が香織に話しかける時に緊張しすぎてるせいで香織が嫌がられてるんじゃないかって心配してたぞ」
「え、まじかよ」
「まじだよ」
「香織とちゃんと話したほうがいいぞ」
「う、うん」香織の誤解はもう解けてるが話す機会を与えるのにはちょうどよかった。
その後に2人が何を話したのかは分からない。
だが、そのあとテスト終わるまで作戦は一時中止と修斗に言われた。
金曜日になりテストが終了した。クラスの雰囲気が一気に良くなった。テストが終わってから2週間後に体育祭というのもあるのかテスト前よりも明るかった。
しかし香織は少し落ち込んでいるようだった。
週が開け、テストが返されるのと同時にテストの上位TOP10が発表された。発表とは言ってもクラスにTOP10に入った人たちの名前が書いてある紙が貼られるだけだが、それを見た時に驚いた。
香織がランキングに入っていないのだ。
文系とは言っていたが念の為理系のランキングも見たがやはりそこに香織の名前はない。
去年は1度もランキングに乗らなかったことは無いから
違和感を持った人たちは大勢いただろう。
その日の昼休みに俺は委員会の仕事で体育館に荷物を運んでいた。その時不意にベンチに1人座る香織を見つけた。
いつもは教室でお弁当を食べているのだが、今日は外で食べている。たまに外でお弁当食べるのは珍しくもないが香織が座っているのは体育館の横にあり、ほとんど人からは見えない。香織がそこにいるのは人の目を避けてるようにしか思えなかった。
仕事を早急に済ませて俺は香織のいるベンチに向かった。近ずいて分かったが香織は膝の上に置いてあるお弁当をひとくちも食べていなかった。これは明らかに何かがおかしい。俺はいてもたってもいられなくなり声をかけた。
「香織、なにかあった?」
急に呼ばれ少し焦りつつもこちらに顔を向けた香織は今にも泣きそうだった。これで何にもないと言われても嘘としか思えない。
「何かあったのね、となり座ってもいい?」
香織は反応しなかったが俺が隣に座って嫌がりもしなかった。少し意外だった。こういう何か嫌なことがあった時は1人にさせて欲しいと言う人も多いから俺はてっきり拒絶されると思ってた。
少しの沈黙のあと香織が「どうして?」と言った。
「どうしてって?」
「どうしてここに来たの?ってこと」
俺は事情を話した。
「ふーん」香織の心情がつかめない。
「教室に香織がいないのが心配で探しに来た」とでも言って欲しかっのだろうか。
「テストのことか?」
香織は何も返事もしてこなかった。
「人と比べなくてもいいんじゃない?」
「そんな訳にはいかないじゃない」香織は半泣きになりながら怒ったように言ってきた。
「やっぱテストの事だったのか」
「何も知らないくせに」だしぬかれたのが嫌だったのか口調がさっきよりも荒くなった。
「それに1位の人が人と比べなくてもいいんじゃないとか言っても説得力ないんだよ」実は俺は今回、文系で1位だったのだ。
「そっかー、じゃあどうして俺はテスト前まともに勉強してないのにいつもランキング入ってるか教えてやろうか?」
「勝手にすれば」言葉とは裏腹に香織は少し聞きたそうだった。
「じゃあ教えてやる、だけど俺が教えたら香織がどうしてこんなに悩んでのか教えろよ」香織は何も言ってこなかった。何も言ってこなかったというより何も言い返せなかったって言う方が正しいかもしれないが。
「俺、実は小6の時に母親が亡くなってさそれで兄弟3人を父さん1人で養わないといけなくなったんだよ。
父さんは俺たちが嫌な思いをしないように必死に働いてくれたんだ。だけどもちろん豪華な暮らしはできない、だから高校も絶対に公立の高校って言われたんだよ、それが中学校入る時に言われた。それを中学の担任に言ったんだ。それで教えてもらったのが『優待生制度』。知ってると思うけど一応補足すると、入試で成績のいい生徒の学費を免除したり安くしたりする制度のことな。それでその制度を調べてて見つけたのが『考明学院』ここの優待生制度は入試の成績が1番いい人1人が学費から入学金、修学旅行のお金まで無償化されるって制度だったんだよ。ここまで全部のお金を無償化してくれる高校は近くになかったから私立に行くならここしかないって思った。だけど知ってるでしょ?考明学院のこと」
「そりゃもちろん知ってるよ、日本で1番頭のいい高校だからね」
「そう、その高校の1番上を目指さないといけなかった。だから中学生の間に高校の範囲の勉強は終わらせといたんだよ」
「終わらせといたって塾に行くお金はあったの?」
「もちろんないよ、だからほとんど独学だよ、お兄ちゃんが高校生だったからお兄ちゃんの教科書を見てやった、わかんない所は担任に聞いてた。それで受験科目の国語と数学、英語は高校の範囲までできるようになったんだよ。それで社会は1番好きな教科だからちゃんと授業聞いてるからできるんだよ。俺が珍しく寝ないのは社会系の授業だけだからね。あとテスト前に社会系のやつを少しやれば学年1も簡単に取れるって訳」
「今この高校にいるってことは考明の入試では1位になれなかったのね?」
「そうゆうこと、1位のやつと点数では一緒だったらしい、だけど内申が俺9教科で44だったから、苦手な音楽はどんなに頑張っても5が取れなかったんだよ。」
「てことは1位の人はオール5だったってこと?」
「まぁそうなるな」
「まぁそれは驚かないけどどうしてそんなに頭いい咲太がこの高校にいるの?」
「公立だとしても、ここより頭いい学校はいくつかあるよね?」
「それは考明がダメだったから絶対公立に行かないと行けなくなったから入試当日に体調悪くても受かる高校じゃないといけなかったんだよ。それで父さんがここを選んでくれたんだ。」
「そ、そうなんだ」俺の話に驚いて少し動揺しているようだった。
「じゃあ俺は話したから次は香織の番だよ」
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