おれは休日がすきだ。
おれは休日がすきだ。
学校に行かなくてもいい。
1 日 中 遊 べ る 。
最 高 だ ぜ !
休日の朝は、早くに目が覚める。
今日は5時に起きた。
まずはテレビ見放題だ!
ユーチューブでゲーム実況を見る。
お母ちゃんがまだ寝てるから、 「そんなんばっかり見とったらアホになんで」 とは言われない。
最 高 だ ぜ !
そのうちお父ちゃんが起きてきて、朝ごはんに即席ラーメンを作ってくれる。
お母ちゃんは 「まずい」 とか 「からだに悪い」 と言って食べさせてくれないから、週に1度の楽しみだ。
お母ちゃんはまだ寝てる。
「お母ちゃん、そろそろ起きて!」
「……休みの日ぐらい、ゆっくり寝かせて~」
「こらー! 起きろー!」
おれはお母ちゃんの布団をはぎとる。
「いやだー寒すぎて死ぬーもー死んだから、いっしょー起きれないー」
「起きてよ!」
お母ちゃんの上にダイブだ!
「ぐぇっ……このー! ちょうどいい抱き枕めぇぇっ!」
お母ちゃんにぎゅうっと取りつかれる、おれ。
「ぎゃあっ! やめろー!」 ばたばたと暴れる。
「おれは人間だぞー!」
「そうか、人間型の抱き枕か。気持ちいいー! おしりもふもふー!」
「やーめーろー!」
「ホントは嬉しいくせにー♡ このこのー♡」
「ちーがーうー!」
嬉しくなんかないぞ!
顔がニヤけているのは気のせいだぞ!
おれはやっと、お母ちゃんのホールドから抜け出す。
ふぅ……やれやれだぜ。
落ち着いて、また、テレビ見放題だ!
ユーチューブで 『こんなお母ちゃんはいやだ』 を見る。
……おれのお母ちゃんみたいだな。
お母ちゃんはまだ、起きてこない。
なんだか寂しくなってきた。
「ねえねえ、お母ちゃんお母ちゃん」
「なんだー……今はお母ちゃん休業中やぞー」
よし、お母ちゃんの好きな動物ごっこだ!
「おれ、うさぎさんだよ! なでてなでて!」
言っとくが、この遊びを好きなのは、おれじゃないぞ。
お母ちゃんだぞ。
「ほんとー? じゃあ鳴いてごらんー?」
ほら、お母ちゃんノリノリだ。
……でもうさぎって、どうやって鳴くんだろうな?
「『うさうさ』 じゃない?」
よし、それで行こう。
「うさうさ、うさうさ!」
「きゃー可愛いうさちゃんー♡ おいでおいでー♡」
おれはお母ちゃんに抱っこしてもらって頭をくしゃくしゃしてもらう。
「うさーうさうさー」
今はうさぎだから、喜んでもいいのだ!
「もっといっぱいなでてうさー♡」
「うさちゃんは甘えん坊だなー♡ よしよしよしよし♡」
「うさうさうさー♡」
お母ちゃんのなけなしのおっぱいに顔をぐりぐりする。
お母ちゃんは大きいおっぱいが好きだが、おれはこれぐらいがちょうどいいと思う。
(ちなみに弟のアッチとお父ちゃんはおしりが好きだ。)
今はうさぎだから、いっぱいおっぱいぐりぐりしてやるぜ!
と、不意におれの背後から声がした。
「ヒロくん、だめぇっ!」
ちっ。アッチが起きて来やがったか。
「おれ今うさちゃんだからいいの! うさうさー♡」
「じゃあぼくも!」
……アッチはすぐおれのまねをしたがるからな。
お母ちゃんの膝の上で、おれとアッチの争いがはじまる。
お母ちゃんの接触面積を奪い合うのだ!
「うさうさー♡」 「うちゃうちゃー♡」
「うさうさ、やぞ!」 「うちゃうちゃ!」
どーん、とお母ちゃんが倒れた!
「んぎゃぁぁぁ……モフモフに埋もれるぅ……!! ええい、こうなったらモフモフしまくってやるぅ……!」
叫びながら、おれとアッチを一緒にモフる!
「ぎゃー! くすぐったいー!」 「くちゅぐったいよー!!」
笑いまくるおれとアッチを、ていていっ、と投げて立ち上がるお母ちゃん。
し ま っ た 。
逃 げ ら れ た …… !
「だめーもっとー!」 「もっとー!」
追うおれとアッチ。
「いやだぁぁぁあ!!」
逃げるお母ちゃん。
お父ちゃんがボソッと言う。
「普通の時間に起きれば解決やろ」
誰も、返事しない。
ひとしきり攻防を繰り広げた後。
「あ、そうだ、ヒロくん」 お母ちゃんは、ニコニコと言った。
「お誕生日おめでとう!!」