おれの大すきな、かわいいの。
意外かもしれないが、おれはかわいいものが、すきだ。
動物園や水族園なんかで生き物のぬいぐるみを見るとほしくなるし、小さなお手玉ワンコのガチャとか、いつも回してしまう。ふわふわのお手玉ワンコ、もう 3コもある。
おれが赤ちゃんのとき、おばあちゃんに買ってもらった、くまちゃんのぬいぐるみにはダンボールでお家を作ってあげた。
(ダンボールはいい! 基地にもなるし、もぐると、せまくてあたたかくて落ち着くんだ。)
弟のアッチも、かわいい。
特に、スヤスヤねんねしてるところとかもう 『生きてるぬいぐるみ』 と、よんでもいいと思う。
お母ちゃんとふたりで、アッチのねがおを見たらいつも
「きゃーかわいい!」 「かわいすぎりゅう!」 「くまちゃんか」 「アチくまちゃんな!」 「うふふふふ」
…… って感じに、もりあがるんだ。
あとは、ポ○モンのモク○ーと鬼○の善○くんも、かわいくて大好きだ。
モク○ーは丸まっちいフォルムとちょっととぼけた表情がかわいくて、とくに、ねてるときがかわいい。鳥タイプだから空もとべる。
とにかくかわいいから、おれは何冊もモク○ーのファンブックを作っているのだ。
善○くんはダメダメなのに泣きながらがんばるところが、かわいい。
あとは早口がすごいと思う。
お母ちゃんがときどきマネするけど、全然ちゃんと言えてない。
「当たり前やん。あれはプロ声優さんならではの技や」
メタ発言はやめて、お母ちゃん。
―― こんなふうに、かわいいものが大すきなおれだが、最近また、すごくかわいいものを発見した。
それは 『妹』 だ!
お母ちゃんが買ってくれた、 『絶望鬼ごっこ』 っていう本の中に、その子はいたのだ。
お兄ちゃんが大すきで、お兄ちゃんが遊びにつれていってくれないと、お兄ちゃんをののしりまくる。
バカ・アホ・オタンコナス、
ええとそれから…… とにかく、小さい女の子とは思えないくらいの、すごい悪口の語い力だった。
もう、めっちゃめちゃ、かわいい!
こんなかわいい小さい子が、こんなにたくさんの悪口をいっしょうけんめい言ってる…… そうぞうすると、むねがきゅうん、となっちゃうのだ!
かわいすぎる、悪口を連発する妹!
俺もこんな妹がほしい!
「…… え。あんた、悪口言われたいの?」
「うん! もう、きゅーん、ってなる!」
「…… そうかー…… 」
お母ちゃんは、びみょうな笑いかたをした。
それから、妹が悪口を言いまくるシーンを、すごくかわいい声を使って読んでくれた。
―― はぁうぅぅぅうっ!
『絶望鬼ごっこ』シリーズ、針とら作、集英社みらい文庫
妹がでてくるのは 2作目 『くらやみの地獄ショッピングモール』 です。




