おれの方が、上だ。
お母ちゃんが先生との面談から帰ってきた。
「授業中もちゃんと座ってられてるんだってね。えらいね!」
そうかそうか。先生、そんなことを言っているのか。
これは、前の席の子が立ち上がって先生と手をつないだりしてうらやましくても、ガマンしたかいがあったぜ。
「研究授業の時も、お客さんの大人のひとに話しかけてあげたんだね」
そうだ。大人のひとが退屈そうだったから、おれのサービス精神が炸裂したのだ。
「授業もちゃんと聞いて、いっぱい手をあげてます、って言われたよ!」
そうだな、そんな時もあるかもしれない。
先生、なかなかいいことを言うじゃないか。
「それにね、ヒロくんはいつもご機嫌でニコニコしてます、ってほめられたよ!」
確かにおれは機嫌が良い時、とにかくニコニコしている。
ニコニコしたくなるんだから、仕方ないのだ。
特に、機嫌がめちゃくちゃ良い時は、顔全体でその気持ちを表すことにしている。
目をきゅっとほそめて、口をひし形にきゅっと開く。
お父ちゃんはその顔を見ると 「アホ顔や」 と喜んでくれる。
お母ちゃんはもっと喜んで 「アンタは赤ちゃん時からその顔するなぁ。パ○リロ顔な!」 と言う。
パ○リロってなんだろう、とちょっと思うが、まぁいいや。
そんなある日、またこの顔を披露していたら、お母ちゃんが不意に 「アンタ、パ○リロ知らんのちゃうん」 と言い出した。
ユーチューブで検索したら、昔のアニメが出てきた。
『♪朝から晩まで……』
なにこれSugeeeee!!
めっっっちゃ、ハマるぜ!!
お母ちゃんは 「えーこの歌、そんなに面白い? え? また再生? 歌だけ? 本編は?」 などと言っているが、わかっていない。
この歌は、面白さの宝庫なんや!
こんなに素早くあれこれ変身できるパ◯リロは、天才に違いないんや!
オープニングの主題歌に合わせて、おれと弟のアッチは夢中になってパ○リロの真似をする。
あの有名な 『クックロビン音頭』 もマスターした。
最近は、ごはんが退屈になってきたら、これを踊ることにしている。
アッチも一緒に踊る。
楽しい。
もちろん、顔マネつきだ。
自分でも、めちゃくちゃ似ていると思う。
アッチも喜んでマネをしているが、あんまり、似てないな。
やっぱり、おれの方がスゴい。
「お母ちゃんもやって!」 というと、一回だけやってくれた。
「顔も!」
「えー無理やってー! いらんわー!」
いいながらも、やってくれたが……。
正直、おれの方が、上だな。
先生との面談。
先生
「興味がひかれることがあると、授業中でもすぐ席を立って歩いたりしますね。
この前も研究授業の時も、来ていた先生方に話しかけて……」
母 (縮まる)
「……なんか……自由で、スミマセン……」
先生
「いえいえ。ウチのクラス、割と自由な子が多いですからww」
母
「あ、さようですか……」
(「自由ではない」 とは決して言わない、先生であった……)