おれとお父ちゃんと、時々、アッチ。
「お父ちゃん、次はもっと、むずかしい山がいい!」
「んー、アッチがいない時な」
おれとお父ちゃん (と時々、アッチ) は最近、毎週、山登りをしている。
実はおれの近所には、山がたくさんあったのだ!
おれたちの話をきいて、お母ちゃんがちょっと、うらやましそうな顔をする。
「六甲山系かぁ…… それくらいなら、お母ちゃんも登れるかな?」
「お母ちゃんにはムリだな!」
最近のお母ちゃんは、すぐにおなかが痛くなって、ねちゃうからな。
たぶんムリだと思う。
「ええ? そう?」
それでも、なっとく行ってなさそうなお母ちゃんだったが、お父ちゃんがひとこと 「途中で疲れてキレると思う」 と言ったら、あっさり折れた。
…… お母ちゃん、 『おいていかれる』 とかがメチャクチャきらいだからな。
それはともかく、山はいい。
けしきはいいし、空気はおいしいし、山のてっぺんで食べるオニギリはさいこうだ。
いちど、お父ちゃんがコンビニに行くのわすれて、オニギリがなかった時は、さいあくの気分でもう人生がすっかりイヤになって、しんじゃいたくなりながら登ったけど、下りた後で有名なお店のぎょうざを食べたら、おいしかった。
いちど、『まやさん』 の隣の山のハーブ園に登った時は、お父ちゃんが道をまちがえて、メチャクチャ細くてくずれそうな道をドキドキしながら歩いた。
道も滝も凍ってて、すごくきれいだった。
アッチもいっしょだったから、アッチと 「ポテト!」 「ウィンナー!」 「ポテト!」 「ウィンナー!」 って、かわりばんこに言いながら、登りきった。アッチと登ると、たのしい。
ハーブ園で、アツアツのポテトとウィンナーを食べた。
後でお父ちゃんはお母ちゃんに怒られて、次はふつうの道で登ったけど、おれは、まちがえた道のほうが面白かった。
お父ちゃんはついに、山登り用の地図を買った。
おれがサンタさんから登山ぐつをもらったのが、うらやましかったみたいで、お父ちゃん用の登山ぐつも買った。
ついでに、アッチのも買った。
お父ちゃんはいつも、頂上からおれたちの写真をお母ちゃんに送る。
お母ちゃんは後で、その写真を見せてくれる。
「おれ、こんなのよゆうやったで! いつか、ふじさん登りたいな!」
「おお…… そうか。がんばれ」
ふじさんは、お母ちゃんによると、登る前にくんれんがいるらしい。
よし、もっと、がんばるぞ!




