おれたちの引きこもりデイズ。
コロナウイルスとかで、遊びにいけない日がつづいている。
お母ちゃんもお父ちゃんも、スーパーのゲーム機にさわっただけで、おこるんだ。
もちろん、おともだちとも遊べないんだぜ。
……つまんない、と普通の小学生ならいうだろう。
しかしおれは、あんがい、そうでもない。
ユーチューブが大好きだからな!
毎日たくさんみられて、しあわせだぜ!
朝ごはんのあとは、早速、テレビをつける。
アッチと順番に、それぞれがみたい番組をみるんだ!
「アッチ、こっちとこっち、どっちみたい?」
アッチの番は、ちゃんと、おれが好きな中から、アッチも好きそうなのを選んでやる。
が、アッチは全然ちがうのを指さした。
「ぼく、これがいいよ」
…… 『ベイビー○ス』なんか、おれには幼稚すぎるんだぜ ……
「ほら、こっちのが面白そうだよ、こっちにしよ!」
おれは 『ひ○ちゃんねる』 をクリックする。この番組は、ひ○ちゃんがかわいいんだ!
それに、アッチだってこれが好きなんだ!
……だが。
「うわぁぁぁん!」 アッチは泣き出した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
ものすごい声を上げながら、お母ちゃんの足元にかけよって、ぴっとりと貼りつく。
「うえーん、うえーん、うえーん!」
「どうしたのアッチ」
お母ちゃんの面倒くさそうな顔は、『うるさいなぁ』 と言っているのが丸わかりだ。
……もし、おれがそんなことを思われたら、しょげて涙が出ちゃいそうになるところだが、アッチはずぶとい。
「ひっ、ひっ、ヒロくんがぁ……!」 しゃくりあげながら、訴えている。
「ぼくのみたいの、みちぇて、くえなかったよう!」
こんな時のお母ちゃんの返事は決まっている。
「ヒロくん、その後でアッチの見せてあげなよ」
「今、アッチが好きなの見せてあげてるよ!」
「アッチはほかのを見たいんちゃう?」
「じゃあ、この後の後で見せてあげる」
「だって、アッチ。ちょっと待っとこうか」
「うえーーーん!」
えぐえぐと何かをうったえる、アッチ。お母ちゃんはもう、聞いていない。
「ところでお昼ごはん、どーする?」
そんなの、これ一択だぜ!
「ピクニック!」
最近おれたちは、庭にレジャーシートをしいてご飯をするのにハマっている。
おとといは、パン屋さんのカレーパンとかを、お隣のお家と空とローズマリーの薄青い花をながめながら食べた。
昨日はお弁当だった。
お外ご飯は楽しいのだ!
けど、お母ちゃんは 「えー……」 と困っている。
「今日は曇ってて寒いし、お家にしようよ。パスタでも……」
おっ、いいことを考えた!
「お家ピクニックにしよう!」
「なにそれ」
おれはテレビの前にレジャーシートを広げた。
「ここでピクニックだ!」
「えー…… お弁当の材料、ないよ」 とお母ちゃんはまた困ってる。
「おにぎりとおやつでいい!」
「あー、はいはい」 お母ちゃんがキッチンにむかう。
「ウィンナーは…… ないから魚肉ソーセージな。卵焼きは、ダシ入れない方が好きな人」
「「はーい!」」
仲良く手をあげる、おれとアッチ。
「じゃあ、砂糖いっぱい、お塩ちょっとのやつね。ついでだから、ガーリックトーストとジャムトーストもつくろう」
お母ちゃんがパンと卵を焼き始めた。
いい匂いだ。
「お母ちゃん、お腹すいたー!」
「ちょっと待っときなさいよ」
お母ちゃんは今度は、せっせとおにぎりを作っている。おれは、のりをまく係だ。
お弁当箱に入った小さく切ってマーガリンを塗ったトーストをつまむと、 「こらー、ピクニックできなくなるよー」 と止められた。
「だってお腹すいたー!」
「じゃあ、1コだけ」
「やったー!」 「ぼくも!」
おれはガーリックトーストを、アッチはジャムトーストをほおばる。
「うまい!」 「おいちー!」
全部食べたら、また2人で 「「お腹すいたー!」」 とさわぐ。
「ちょっと待ちなさいってばー!」
お母ちゃんと、こんなやりとりを3回くらいして、やっとおにぎりができあがった。
の○たまと、シャケと、おかずのりと、ゆかり。
ぜんぶ、お弁当箱につめてレジャーシートの上にはこぶ。
「楽しい! お家ピクニック最高だぜ!」
「よかったねぇ」 お母ちゃんもおにぎりを食べながら、調子をあわせてくれる。
「小川のせせらぎが気持ちいいね」
「本当はエアコンの音だけどな!」
「いい風がふいてるね」
「本当はエアコンの風だけどな!」
「…………。」
母ちゃんはしばらく黙って、それからマジメな顔で言った。
「うん、おもしろい」
……おれのツッコミは、どうやらウケなかったらしい。
それから、おれたちは、お弁当をぜんぶ食べて、もう1回おにぎりを作って食べて、みんなで踊ってからオヤツを食べた。
ちなみに我が家の今の流行りは 『ブー○キャンプ』。
ヒロくんのマイブームは 『体操のお兄さん』 の真似です。