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第95話 契約と約束

 リーエルの言葉に首を傾げる悠斗であったが、突然強い光が差し込んでくる。


「うわっ! なっなんだ!?」


 突然のことに驚いた悠斗は思わず目を瞑る。

 薄目を開けて光が差す方を見ると、火の大精霊だったものが強い光に包まれていた。

 どこぞの魔法少女の様に光り輝く人型は、ニョキニョキと大きくなっていく。

 100人見ても100人が幼女だなと思う小さな体から反転、すらっと伸びる長い脚。

 程よく膨らむ胸部装甲にキュッと細くなった腰回り。

 幼かったはずの顔は体が成長したからなのか大人っぽくもありつつ、どこか幼さも残した可愛い顔。

 幼い幼女()()()はずの火の大精霊は、大人の美女に大変身を遂げてしまう。


「これで、子作りができるのだ!」


 美女から発せられた大人びた声に脳内をガツンと殴られた悠斗の思考は止まってしまった。

 彼の脳内では言葉の応酬が繰り広げられている。


「(ついに童の貞を卒業できるのではないか!? いやいやまてまて、相手の本当の姿は幼女で……)」


 しかし、攻めてくる相手は絶世の美女。

 積極的に攻めてくる相手に耐性がない悠斗はジリジリと追いやられ……。


「うわっ!」


 悠斗は頭が混乱しているのもあり、足をもつれさせて背中から転げてしまう。


「いてて………………て」


 痛みに目を瞑っていた悠斗は目を開けると、鼻と鼻がくっつくぐらいの距離に火の大精霊の顔があった。


「(駄目だ、このままじゃ……だけど……)」


 徐々に抵抗する気力が減っていき、口と口がくっつきそうなその時。


「みずてっぽうなのじゃ!」


「んっ!」


 リーエルのみずてぽっうは火の大精霊へ。

 そしてふじこのみずてっぽうは悠斗目掛けて発射される。


「へぶっ!」


「ぎゃん!」


 リーエルとふじこのみずてっぽうに2人纏めて吹き飛ばされる悠斗と火の大精霊。


「あぶないあぶない、危うく意思に負けそうになってしまう所だった……」


「お主の意思はガバガバじゃな……」


「んっ!」


 リーエルの言葉に納得するように頭をコクコクと縦に振っている。

 普段からみずてっぽうを受けている悠斗は慣れていたのだが、火の大精霊はというと……。


「うきゅ~なのだ……」


 変身が解けたのか、ポンッ! っと音が鳴るとともに元の幼女姿になって目をグルグル回していた。

 数刻後、目を覚ました火の大精霊がムクリと起き上がり。


「ウンディーネちゃん、何をするのだ!」


「それはこっちのセリフじゃ!」


「う~だって興味あるんだもん……」


「一体何に影響されたんじゃ」


 呆れたリーエルの言葉に火の大精霊は。


「えっとね~ご本で読んだの。なんだか楽しそうだったし、『資格者』との子供だったら絶対に可愛いのだ!」


 天真爛漫な笑顔でそう答える火の大精霊は、少し照れながらも大人向けの本を読んで影響されたようだった。


「それにね……実は、ボクお嫁さんにあこがれてるのだ!」


 そう言いながら両頬に手を添えてクネクネする火の大精霊を見た悠斗は一つ試してみた。


「えっとね、子供を作る方法を知っている?」


「当たり前なのだ! ギュッっと抱きついて、ぴょんぴょん跳ねたら、鳥さんが運んできてくれるのだ!」


 その言葉を聞いて少しホッコリした悠斗。


「えっとね、実は足りないものがあるんだ」


「ええ!? なんなのだ?」


「まずはお互い愛を育んで……」


 悠斗はあの手この手で上手いこと言葉を紡ぐ。

 何を言っても「そうだったのだ!?」とか「知らなかったのだ!」と信じてしまう火の大精霊を見て、純粋無垢な幼女を騙して心が痛くなる悠斗。

 火の大精霊は疑うこともなく悠斗の言葉を信じて。


「わかったのだ! じゃあお友達から始めるのだ!」


 悠斗の言葉を聞いて納得してくれた火の大精霊に安心して、窮地をきりぬけたと安心する悠斗。


「それじゃあ『約束』の証に手のひらを出すのだ!」


 悠斗の頭の中にはハテナがいっぱいになったが、とりあえず火の大精霊の言葉通りに手を開いて手のひらを見せる。


「ちょっと待つのじゃ!」


 リーエルが焦って止めようとするのだが少し遅く、火の大精霊は悠斗の手のひらに自身の小さな手を重ね合わせると。


हम(ノォン) एक अनुबंध(クゥァエリス) चाहते हैं(コントラクト)なのだ!』


 火の大精霊は流暢な言葉で古代魔法の言葉を紡ぐ。

 何やら聞いたことあるような言ったことあるような呪文を唱えだした純粋無垢な幼女を見て、嫌な予感がする悠斗。


「し~らないのじゃ」


「えっちょっとなんだよ!」


 リーエルの言葉に焦る悠斗。

 そんな彼とは対照に、幸せそうな笑顔をしている火の大精霊。


「えへへ。これで『契約』と『約束』が完了なのだ!」


 そう言った火の大精霊は悠斗の腕に抱きついた。

 幸せそうに「えへへ」と笑っている火の大精霊を見て悠斗はリーエルに問いかける。


「うぬ。契約の呪文は強力での……特に精霊が紡ぐとより強固になるのじゃ。こやつ(火の大精霊)が先ほど『契約』と『約束』と言っておったじゃろ?」


「うん。言ってたが……それがどうしたんだ?」


「『契約』はその名の通り精霊契約じゃ。わしとお主の間でなされているものと同じじゃが……お主は『約束』をどう見る?」


「『約束』は約束だろ? 守ろうねっていう……」


 悠斗の感覚的には約束と言っても死んでも守らないといけないものっていうよりは、この場合小さい子供とする約束。つまり、大きくなったら結婚しようねっていう冗談と同義だと思っていた。

 もちろん契約精霊であるリーエルは悠斗のそう言った感情もきちんと理解しているのだが。


「お主の考えていることはよ~くわかる。じゃが、精霊の言う『約束』はちと特殊での……火の大精霊よ、『約束』内容は何なのじゃ?」


「えっとねー。教えてもらった通りお互い愛し合っていって、愛情がいっぱいになったらお嫁さんにしてもらって、それで……子づくりしてもらうのだ!」


 悠斗は諦めていなかったのか……と心の中で落ち込んだ。

 そんな悠斗に追い打ちをかけるようにリーエルは。


「悠斗よ、精霊が言葉にした『約束』は絶対での……お互いの魂に刻まれてしまうのじゃ」


「もし破ったら……?」


 怖くなってきた悠斗はそう聞いてみると。


「魂が消滅。つまり、永劫の死を迎えてしまうのじゃ!」


「なっ……なんだってーーーー!!!!」


 リーエルから爆弾発言が飛び出した。

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