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第92話 ゴーレム戦決着

「行ってくる」


 そう一言残し、立ち上がった悠斗は赤く染まったゴーレムへ向かう。

 しかし、ゴーレムは悠斗の方へ向かわず、立ち止まったまま右手を振り上げる。


「何を……!?」


 振り上げられたゴーレムの右手が炎に包まれていくと、その拳を地面に突き刺した。

 突き刺されたゴーレムの右手から地面に亀裂が奔り、悠斗の元へ伸びる。

 伸びた亀裂をなぞるように炎も勢いよく伸びていく。

 炎の亀裂となり、悠斗を飲み込むように襲いかかった。

 自身へ向かってくる炎の亀裂を見た悠斗は、横に移動して攻撃を避けたのだが。


「こっちもかよ!」


 悠斗が避けた先にも炎の亀裂は奔り、彼の行動を阻んでいた。

 しかし、幸いなことは見ててからでも避けられるということだ。

 それでも数撃てば当たるの精神なのか、ゴーレムはひたすら遠距離攻撃をしかけてくる。


 膠着状態に陥っているのだが、不利なのは悠斗の方だ。

 ゴーレムからすれば、数撃って一撃でも当たればいい。避けられたとしても、人の身であるため体力の限界がある。

 反対にゴーレムは石人形が魔力を持って生まれた魔物。

 魔物であるが、無機物である石人形にとって体力の限界はない。

 そのため、ゴーレムにとっては悠斗の体力がなくなるまで攻撃し続ければいいからだ。


「このままじゃジリ貧だな……ならっ!」


 悠斗は剣を斜めに構えて剣先を地面につけると、そのまま剣先で地面を削りながら剣を振り上げる。

 すると、剣先から水が現れては削った地面に沿って水流が襲いかかる。

 水流はゴーレムの放った炎の亀裂にぶつかって蒸発する。

 またしても水蒸気は濃い霧となって周囲を覆い隠す。

 悠斗は再度視界を隠して攻めて行こうと考えたのだろう。


「今だ!」


 悠斗は発生した濃い霧を利用して身を隠す。

 ゴーレムの視界からも完全に消えた悠斗は、そのまま接近してゴーレムに攻撃を仕掛けた。

 しかし、ゴーレムはこれを読んでいたのか、悠斗の剣とゴーレムの巨大な拳がぶつかり合う。

 同じ手は二度通用しないということなのだろうか。

 ゴーレムはもう一手として、悠斗の剣を溶かす程の熱を放つ。

 接近してきた所で、熱を放ち焼き殺そうと考えたのだ。


 だが、相手の行動を予測していたのは悠斗も同じ。

 遠距離で放つ炎の亀裂が当たらないなら、接近してくるのであればその時に何かを仕掛けてくるだろうと。

 悠斗の予想は当たり、ゴーレムは自身に赤いラインを奔らせる。


「させるかよ。ふじこ・リーエル!」


「んっ!」


「任せるのじゃ!」


 悠斗の声に従って、ふじことリーエルは魔力を増大させていく。

 増大させた魔力は悠斗の剣を再強化。注ぎ込まれた魔力により、水色に染まった巨大な両手剣となって大きく鋭さを増していく。

 力では負けたとしても、剣の斬れ味を高めてしまえばゴーレムの耐久度を覆させることができると考えたからだ。


「うおぉぉぉぉ!」


 ここからは悠斗の剣を強化し続けている魔力が切れるか、ゴーレムの保有魔力と耐久力が勝つのかどちらかだ。

 当然魔力勝負となると、ゴーレムが勝つのは難しい。

 なぜなら、ふじこの魔力は無限だからだ。

 悠斗の剣はゴーレムの拳を斬り裂き進んでいく。

 その進行を止めるようにと魔力を高めていくゴーレムであったが。


「魔力勝負でふじことリーエルに敵うはずないだろ!」


 右足を強く踏みしめ、全体重をその剣に乗せる。

 ゴーレムの全身が紅く染め上がる。

 少しの抵抗なのか、悠斗の剣を溶かそうと考えたゴーレムであったが、それ以上に魔力を注ぎ込まれて修復されていく。

 ゴーレムの抵抗も虚しく、悠斗の剣はゴーレムの心臓部であるゴーレムコアに直撃。

 悠斗はそのまま下に振り下ろしてゴーレムコアを両断する。

 コアごと両断されたゴーレムは、形を維持できずにそのまま崩れ落ちていった。

 ゴーレムであった残骸を背に悠斗は余裕の表情でふじこ達を見る。


「へへ。楽勝だったな!」


「どこがじゃ……ったく」


 そういいつつも笑っているリーエル。

 ふじこは既に悠斗の足にひっついていた。


「ユートお兄ちゃん、怪我とかしてない? 大丈夫?」


 ホーンラビットのうさこを胸に抱えてやってきたのはナルシャ。

 ナルシャの頭を撫でながら悠斗は笑いながら。


「おう、この通りピンピンしてるぞ」


 撫でられているナルシャはくすぐったそうにしながらも、嬉しそうだ。

 悠斗はナルシャに抱えられているホーンラビットのうさこを見て。


「お前もみんなを守ってくれてありがとうな」


 白くてフサフサの頭をポンポンと撫でると。


『きゅ~♪』


 当たり前だと言わんばかりに一鳴きする。


 悠斗は念の為に敵がいないか周囲を探るが見当たらない。

 周囲の安全を確認した悠斗は剣を収めると扉の前に進む。


「それじゃ開けるぞ」


 ふじこ達が頷いたのを確認した悠斗は扉に手を突いて力いっぱい押す。


「ぬぎぎぎぎぎ! ――クソっ。ビクともしないな」


 悠斗が両手を使って全力で押しても動く気配がない扉。

 しかし、よく見ると中央に真円の形をした窪みがあった。

 周囲を見渡しても鍵となりそうになるものは見当たらない。

 みんなで探し回った結果、リーエルは崩れ落ちたゴーレムの残骸から何かを持ってきた。


「これとかどうじゃ?」


 持ってきたのはゴーレムの心臓部であるゴーレムコアの残骸。

 悠斗が両断してしまったおかげで綺麗に真っ二つとなってしまったのだが。


「サイズはぴったしそうだけど……」


 リーエルから真っ二つになったコアを受け取った悠斗は「まさかな……」といいつつ扉にある窪みへ嵌めてみた。

 ゴーレムコアを扉に嵌め込むと変化が訪れる。

 嵌め込まれたゴーレムコアを中心に赤く光ると、そこから赤いラインが奔り、全体に広がっていく。

 その様相は先程戦っていたゴーレムと同じ。

 扉の全身が赤く染まると、扉は紅く輝いては砂の様に崩れ落ちていった。


「どうじゃ!」


 その様子を見たリーエルは、両手を腰に添えて鼻を高くする。


「ははっ粉々にしなくて良かった……」


 場合によっては粉々になっていたかもしれず、ゴーレムコアが幸いにも綺麗に真っ二つとなっていたに安堵する悠斗。

 今後はきちんと考えながら戦おうと心に決めながらも、扉の先へ進んでいく。

 扉の中へと進んでいった一行が部屋の中央に目をやると、祭壇のようなものを見つける。

 祭壇のような所をよく見ると、深紅に輝く紅い髪をした幼女が横たわっていた。

 近づいてみると、祭壇で横たわっている幼女は気持ちよさそうにすぴーっと鼻息を鳴らして熟睡していた。

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