第86話 対マミー戦
この話数から書き方を変えました。
見にくいようであれば戻しますので、感想欄にでもよろしくおねがいします。
「怒らずに聞いてくれるか?」
何かをやらかした子供の言い訳みたいな前置きをするリーエル。
「内容によるな……ほらっ言ってみろ」
「罠を……罠を踏んでしまったようじゃ……………………テヘッ☆」
リーエルの言葉が合図になったかのようなタイミングで、周囲にある棺が独りでに開いた。
棺からゆっくりと人形の何かが這い出てくる。
全身は包帯で巻かれており、声もなくその相貌は伺いしれない。
うめき声の一つも出さず、そのナニカは死者の眠りを妨げた者を許さないのか、確かな殺意を持って悠斗達に向かってきた。
慌てて剣を構える悠斗は。
「バカヤロー! 何がテヘッ☆ っだ!」
「踏んでしまったものは仕方ないじゃろ。肝が小さい奴じゃ!」
ケンカを始める2人を見たナルシャは怒った顔をして。
「ユートお兄ちゃんもリーエルちゃんもケンカしてる場合じゃないでしょ!」
ナルシャの指摘に「「そうだった!」」と声を合わせる2人は、向かってくるナニカに向かい合った。
「リーエル!」
「任されよ!」
いつものごとく、人差し指を敵に向けてみずてっぽうを放つ。
しかし、ゆっくりとした足取りとは裏腹に、相手は一直線へ向かったみずてっぽうを素早い動きで交わした。
「!?」
驚いたリーエルは悔しそうな顔をするが気を取り直して、何度もみずてっぽうを放つのだが、その全てを避けられてしまう。
「にゃにぃ!?」
ここまで避けられるとは思ってもいなかったリーエルは驚きすぎて口調が猫語になってしまう。
変わってしまったリーエルの口調にツッコミすら忘れてしまうほどに悠斗も驚く。
「なんだあの包帯男? ミイラ……いや、マミーか?」
「どうでもよいわ。はよう行け!」
そう言ってリーエルは唖然としている悠斗のケツを叩いて急がせる。
リーエルに叩かれた尻を擦りながら、緊張感のない戦いに身を委ねる。
「さて……とりあえず」
悠斗は少し警戒をしながらも、まずは真正面から剣を叩きつけるように振るう。
しかし、マミー(命名:悠斗)の両手から伸びてくる包帯がスルリと伸びていくと、その剣を受け止めた。
さらにはその剣に巻き付くと、持ち主である悠斗の体ごと持ち上げると後方へと吹き飛ばした。
「なっ!?」
吹き飛ばされるも、なんとか体制を整える悠斗。
「気をつけるんじゃ。あやつの包帯はただの布ではないぞ」
「みたいだな……」
リーエルのみずてっぽうは避けられ、悠斗の剣も包帯で防がれる。
そのため攻めあぐねる悠斗であったが、だからと言ってマミーは待ってくれない。
ジリジリと悠斗達へ向かって距離を詰めてきている。
幸いにも向こうからの攻撃はまだないものの、そこまで時間に猶予があるわけではない。
ここで何もしなければ窮地に陥るのは確実。
頭の中にある脳をフル回転させて、状況を変えうる一手がないか考える悠斗。
ここで何かを閃いたのか、悠斗はリーエルに声をかける。
「リーエル、合図をしたらみずてっぽうを放ってくれ」
「うぬ」
リーエルの返答を聞いた悠斗はすぐさま走り出すと、向かいのマミー1体目掛けて駆けていく。
マミーと距離を詰めてわずか2メートル。
あと一歩踏み込めば間合いに入るというタイミングで、悠斗は手を振ってリーエルに合図を出す。
合図の通りに放たれるみずてっぽうは、やはり先程までと同じように避けられた。
しかし、それは想定内であった。
こうなると分かっていた悠斗は、避けた先を予測して剣を振り下ろしたのだ。
「これなら避けられないだろ!」
攻撃が避けると分かっているのであれば、それを想定して先に行動を予測したのだ。
だが、それでもあと一歩及ばず悠斗の剣はマミーの包帯で受け止められた。
しかし、悠斗の攻撃はこれで終わりじゃない。
「まだ終わりじゃねぇよ!」
動きを止めたマミーをリーエルは見逃さず、そのマミー目掛けてみずてっぽうを放った。
放たれたみずてっぽうは今度こそマミーの体に直撃し、その胸を撃ち抜く。
撃ち抜かれたマミーは体を維持できなくなったのか、グズグズと崩れていっては、やがて包帯だけを残して砂のように崩れ去った。
悠斗が考えたことは、マミーが確実にこちらの攻撃を避けて受け止めると信じたことだ。
マミーはリーエルの攻撃だけは避けて、悠斗の攻撃は包帯で受け止めていた。
つまり、当たったらヤバいのは悠斗の剣ではなくリーエルのみずてっぽうなのだ。
それをよく見ていた彼は二重の罠をしかけることにしたのだ。
悠斗の想定通り、マミーはリーエルの攻撃を避け、悠斗の剣を包帯で受け止めた。
受け止めてしまえば、マミーはどうしても隙が出てしまう。
ここをリーエルがもう一度みずてっぽうで撃ち抜けばいいと考えたのだ。
「よしっ!」
無事倒すことに成功する悠斗達であったが、倒したのは1体だけ。
まだ悠斗達の周囲にはまだまだ複数のマミー達が逃さぬよう囲んでいる。
悠斗は他のマミー達を見回すが、仲間が倒されたからといって動きが変わるわけではなかった。
「仲間感……ってのはなさそうだな」
マミーを1対倒したことで出来た隙間へ逃げ込む悠斗達。
まずは数を減らそうと同じような手で他のマミーへ向かって攻撃を仕掛けてみる。
同じ手は通用しない……と思っていたのだが、杞憂であった。
近い敵から順に攻撃を仕掛け、悠斗とリーエルの息が合ったコンビネーションで順調にマミーの数を減らしていく。
そうこうする内に残った敵は片手で数えられる数に減る。
後は消化試合だなと思っていた悠斗であったが、ここで残ったマミー達はピタリとその動きを止めては行動に変化が起きた。
「ん? どうし……っ!?」
動きを止めたマミー達の内3体は包帯を伸ばし、一斉にリーエルへと向かった。
「にょわ~!」
その包帯はリーエルの手足に巻き付き、そのまま彼女を持ち上げる。
両足が大きく開かれてあられもない姿になったリーエル。
「なっなんじゃ~!」
「ふじこちゃん、見ちゃダメ!」
淑女がしてはいけない格好になったリーエルを見て、ナルシャはふじこの両目を手で覆い隠した。
「にゃろう!」
リーエルへ巻き付き攻撃を仕掛けたマミー達に向かって、悠斗は攻撃をしかけようとするのだが、残ったマミーがそれを見逃さない。
残ったマミーは包帯を伸ばして悠斗の両手に巻き付き、拘束力を高めて悠斗の腕を締め付ける。
「ぐあっ!?」
マミーも全く学習していないわけではなかった。
一番の驚異であるリーエルの動きを複数体で封じ、残った者が悠斗の動きを止める。
マミーからすれば、相手を自身の包帯で巻き付けばいいだけで、あとはゆっくりと絞め殺していくだけだった。
それぐらいマミーが操る包帯は威力があったのだ。
しかし、マミー達はここで大きな間違いを犯した。悠斗達の中で一番の驚異は悠斗でもリーエルでもない。
――――そう、ナルシャに目隠しをされているふじこだ。
悠斗は縛られながらも、顔を後ろに向けて叫ぶ。
「ふじこ!」
「んっ!」
悠斗へいつものように返答したふじこは、みずてっぽうを複数放つ。
放たれた複数のみずてっぽうは、拘束していた包帯を撃ち抜き、悠斗とリーエルの拘束を解除した。
「ナイス!」
「さすがわしの可愛い妹じゃ!」
拘束から解き放たれた悠斗とリーエルは、お返しにと反撃を開始した。
「ふじこ、リーエル!」
「んっ!」
「うぬ!」
ふじことリーエルは共に手を繋ぎ、魔力を高める。
高まった魔力は清流の様な水色に変わり、キラキラと輝きながら悠斗の剣身を包む。
包まれた魔力は形を大きな剣の刃に変え、片手剣は巨大な両手剣へと姿を変える。
悠斗はその巨大な剣を両手で掴んでは相手を睨みつけて。
「これはお返しだ!」
巨大な両手剣を横薙ぎに一閃。
残ったマミー達の胴をまとめて両断した。
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