第71話 もしもしポリスメン?
今話から5章が始まります。
よろしくおねがいします!
「僕と一緒に子作りしてほしいのだ?」
なぜこんな所まできて、幼女に子作りしないかと誘われることになったのだろう。
いつの間にR18の薄い本世界に転生したのだろうかと頭を抱える悠斗。
完全に事案案件だし、ここにインターネット接続されているパソコンスマホがあれば、y○hoo知恵袋でこういう質問をしているだろう。
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ID非公開さん
20XX/XX/XX XX:XX
拝啓。
幼女突然から『子作りしてほしい』と質問されたのだが、
どうしたらいいのだろう?
恋愛相談・126,443,179閲覧
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という質問をしたところで、返ってくる回答はこうだろう。
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ベストアンサー
ID非公開さん
20XX/XX/XX XX:XX
もしもし、警察ですか?
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その他の回答
ID非公開さん
20XX/XX/XX XX:XX
おまわりさん、こいつです。
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その他の回答
ID非公開さん
20XX/XX/XX XX:XX
YESロリータNOタッチ
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その他の回答
ID非公開さん
20XX/XX/XX XX:XX
死ね(直球)
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「なあ~なあ~しよう? ぼくと子作りしようなのだ?」
純粋な目をしたまま『なのだ幼女』は悠斗に子作りを迫る。
この場合どう返答したらいいのか、脳内の知恵袋に質問をしているのだが、ろくな回答は出てこない悠斗。
さらに左右から無言の責めを受けているようなふじことリーエルからの圧に悠斗の心は発狂した。
「うわあああああ! なんでこんなことになったんだ~!!」
*
時は少し遡り、マリーディアから『天の方舟』へと戻ってきた悠斗達。
そこから幾許かの月日が流れた頃のことだ。
『天の方舟』という王都の一画に建てられた、表向きは宿として役場に届け出を出されているのだが、実質的には『戦場の戦乙女』の私邸となっている場所。
そこには現在居候達が住んでいる。
1人はローゼリア = ルクス = アルヴェイム。このアルヴェイム王国の第三王女だ。
マリーディア事件のせいで王宮に帰るわけにもいかず、現在は信をおける者としてアルマ達3人が護衛をすることになっているので、引き続きここ天の方舟邸でお世話になっていた。
といっても、入り口を王国兵などで守っているとかそういったことはしていない。
天の方舟邸は商業区の一画にあるため、そんなことをしてしまっては、ここに王女、もしくは位の高い人物が住んでいますよと宣伝しているようなものだ。
それでなくても、色々と噂が出回っている場所なのだから、そんな馬鹿な真似はできない。
それに、王国兵や護衛の騎士であっても、誰が敵国の者なのかみな疑心暗鬼になっているため置くことはできないのだ。
アーヴァイン家とコルニクス家の関係者であれば問題ないが、みんな間者の捜索で手がいっぱいだった。
それに、公爵家の者が王国の王都に兵を出すというのも難しい。
他所の貴族が見てしまえば。
「反乱でも企てているのではないか?」
とか
「王都は国王様のものであるというのにも関わらず、公爵家といえども、王都を私物化するとは……」
など、敵対貴族を刺激する可能性がある。
王都は王のお膝元であるため、兵をだすならば国から出さなければ色々と都合が悪いい。
そのため、現在はアルマ達と仲良く4人で過ごしているのだ。
そして残り3人はというと、銀髪のツインテールをして漆黒のドレスを纏った無口な幼女ことふじこ。
悠斗が『文字化け』スキルを使った所、現れた謎が多い幼女。
相変わらず無口だが、最近は『んっ』などちょっとした一言だったり、少し表情が変わったりと変化が現れている。
文字化けスキルが上がったおかげなのか、彼女が成長しただけなのか、まだまだ謎が深い。
そんな彼女の隣で姉のように仲良くしているのは、水色の髪をしたロングヘアーの幼女ことリーエル。
彼女はただの幼女ではなく、本当はこの世界に一柱ずつ存在する『水の大精霊』と呼ばれるすごい存在。
マリーディア事件の時、なんやかんや悠斗と契約をして一緒に行動している。
すごい存在ではあるが、はたから見ればただの仲のいい姉妹みたいだ。
そんな幼女の近くでソファーに寝そべっているのが、この作品の主人公こと『三嶋 悠斗』。
マリーディア事件の後、悠斗の預かり知らぬ内になぜか待遇がよくなり、無理して冒険者として活動する必要がなくなったため、怠惰に過ごしていた。
本来ならレイの父親であるハインが悠斗をビシバシと鍛えているはずであるのだが、現在はバタバタと忙しくそれどころではない。
そのため、ハインがいないことを理由にダラけているこの姿は、まさにニートか紐というのが正しいだろう。
こんな何にもない日々が続いたとある日、元気いっぱいの幼女は我慢の限界にきていた。
「なあおぬしよ」
「…………んあ?」
夢の世界に旅立っていたのだろうか。少し間が空いたあと、悠斗はだらしない顔でリーエルを見る。
「火の大精霊と契約しに行きたくないか?」
「めんどくせえ」
そんなリーエルの言葉をノータイムで返答する悠斗。
ここ最近、リーエルからの火の大精霊・風の大精霊・土の大精霊と契約しに行かないか? と1日1回以上は勧誘される悠斗。
リーエルのしつこい勧誘攻撃に、悠斗はだんだんと返答がおざなりになっていた。
しかし、今日はいつもとリーエルの様子が違っていた。
折れそうにない真剣な目をしていたので、しぶしぶ横になっていた体を起き上がらせた。
「なんで子供はそんなにお外に出たがるのかな。そんなに出たいならセレナさん所の孤児院にでも行って遊んでこいよ」
「いやじゃ!」
今度はリーエルからノータイムで返答が帰ってくる。
「なんでだよ……仲良く遊んでるじゃねぇか」
「あやつらは……あやつらは大人のレディであるわしに対して敬意が足りん! それに……無尽蔵の体力おばけじゃ!」
「確かにリーエルからしたら孤児院にいるのはみんな子供みたいに見えるけどさ……正直そのナリで大人のレディって言われてもな……。精々同い年か年下ぐらいにしか見えないだろ」
「うるさいわい!」
悠斗からの心無い言葉に、近くにあったクッションを投げつけるリーエル。
それに対して悠斗は華麗に避けては投げ返した。
リーエルと悠斗の投げ合いがしばらく続いていたが、悠斗の方が先に折れた。
「はあ……疲れた。これで満足しただろ?」
そう言ってソファーに寝転ぼうとする悠斗であったが。
「話は誤魔化されないのじゃ!」
「チッ……無理だったか」
リーエルは誤魔化されず、続けてこう話す。
「このままでいいのか?」
「このまま?」
「そうじゃ。今のお主を見てみよ。家でダラダラとすごしてはお菓子を食べたり好きな時に寝て過ごす生活……こんなだらしない兄を見続けて、ふじこは何と思うじゃろうな?」
「うぐっ!」
「ふじこの自慢の兄になるんじゃんかったのか?」
「うぐぐっ!」
リーエルの強烈な攻撃に胸を押さえる悠斗。
「それに、火の魔法を使ってみたいんじゃろ?」
「しかしだな……またリヴァイアサンみたいなやつと戦うことになるのはちょっとな……」
もうひと押しじゃな……と内心考えるリーエルは。
「なんと! 今火の大精霊と契約すれば、火の魔法が使えるのじゃ!」
「でも……お高いんでしょ?」
「今ならなんと! わしが火の大精霊と話して、契約するための試練を緩和するよう交渉してやるのじゃ!」
「よしっ買った!」
「ぐふふ。このように誘導できればいいのじゃな」
リーエルは手を口に当てて、小声でそう口にした。
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもないのじゃ!」
そう言いながらニッコリと本日最大の笑顔で悠斗を見るリーエル。
乗り気になった悠斗を見て、リーエルは心のノートにそっとメモをする。
実際の所はそろそろ飽きてきたってのもあるのだが、喜んでいるリーエルを見ると、余計なことを言うのは無粋だなと思う悠斗であった。