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第62話 隠し通路

メリークリスマス!

「追うわよ!」


 アルマの声で我に返った悠斗達は、アールスを追いかけて部屋を出ていこうとする。


「おっ重い……」


 悠斗はふじことリーエルを抱えて走り出すが、幼女2人を抱きかかえるのはさすがに重いようだ。


 リーエルはそんな悠斗の言葉を聞いて。


「れでぃに対して重いとはなんじゃ重いとは!」


 そう言ってペシペシ両手で頭を叩く。


「空気を読め空気を!」


 リーエルの真似とふじこも頭を叩き出すのだが、アールスを追いかけるのを優先して無視を決めた。


 一部緊張感がないものの、部屋を抜け出した悠斗達はアールスを追いかけて通路を抜ける。


 エントランスに出ると息切れをしたアールスが膝に手を置いて呼吸を整えていた。


 すぐさま後ろを叫ぶと、アルマ達が追いかけきたのを見て。


「くそっ!しつこい奴らめ……来い、お前達!」


 アールスがそう叫ぶと、屋敷の入り口から続々と私兵が現れる。


 大人数で現れた私兵達は、武器を構えて悠斗達の前を塞ぐように立ち並ぶ。


 アールスは慌てた表情から一転、余裕のある笑みを浮かべて。


「お前達! こいつらを殺せ!」


 そう言ってアールスは屋敷の奥へと逃げていった。


「くっ……こんなに数がいるなんて、一体どこから……」


 悠斗達も武器を構えて対峙する。


「そこをどきなさい!」


 そう叫んでは前方を防いでいる敵を次々と斬っていく。

 

 アールスの私兵はそこまで強くはないのだが、主人であるアールスの時間を稼ぐように、ひっきりなしに増えてくる。


「こんな奴らを相手にしている場合では……」


 レイもそう愚痴り始めた所、悠斗達が進んでいた方向と反対にある右側の通路から複数の足音がガシャッガシャっと音を鳴らしながらやってくる。


「何をしているのですか? ……っと悠斗にアルマ達じゃないですか!?」


 そこに現れたのは、プロディオ達6名の護衛騎士を引き連れたローゼリアだった。


 護衛騎士達はアルマ達が交戦しているのを見ると、すかさずローゼリアを後ろに下がらせる。


「お前達、一体誰に剣を向けていると思っている」


 騎士達の代表としてプロディオがアールスの私兵に向けて威圧を向ける。


 しかし、私兵達は怯むこともなく。


「おっお前ら! 数はこっちが勝っている。騎士も含めて全員殺せ!」


 そう言って騎士達に殺到するのだが、騎士達は素早い動きで向かってくる私兵達を次々に斬り殺していく。


「雑兵が何人来ようと我らの敵ではないわ」


 プロディオ達のお陰もあり、戦況は悠斗達の優勢に傾いていく。


 ローゼリアが護衛の騎士に守られながら、悠斗達に合流すると。


「屋敷の中が騒がしくなったと思い来てみれば……一体どこに行っていたのですか? 心配したのですよ!」


 ローゼリアの叱責に悠斗達は申し訳無さそうにしながらも、アルマは。


「申し訳ございません姫様。お叱りは後ほどゆっくりとお聞きいたしますが、今は時間がなく……」


 アルマの言葉にプロディオが


「アルマ様、何やら急がれている様子ですね。ここは我らにお任せください」


 そう言ってプロディオは護衛騎士に素早く指示を出していく。


「カイン・リッド両名は姫様の護衛に当たれ。残りは私と一緒に賊共を始末する」


 カイン・リッドと呼ばれた騎士達は「「はっ!」」と声を合わせて敬礼をする。


「それじゃ行きますよ、姫様」


 そう言ってアルマはアールスを追いかけようとする。


「後で絶対にお説教ですからね!」


 ローゼリアもアルマにそう言うと、護衛の騎士2人を連れて付いてきた。


 プロディオ達4名を置いて先に進む悠斗達。


「どこへ行ったんだ? アールスさん」


 ぽよんと膨よかな身体に関わらず、素早い動きで見失ってしまった。


「一体どこに言ったのよ……あのデブ!」


 屋敷の中を走り回ってアールスを追いかけていたのだが見失って愚痴ってしまった。


 廊下を走る中、珍しく口調が荒いアルマの言葉に悠斗は。


「お嬢様! その言葉はふじこの教育に悪うございます!」


 すかさず突っ込む悠斗にアルマは。


「何なのよその気持ちの悪い喋り方は……」


 そうツッコミ返すアルマと悠斗をよそに屋敷の部屋を捜索していくのだが、一向にアールスは見つからない。


「ここが最後の部屋だな……」


 ひときわ豪華な扉を見つける。


「ここは(アールス)の寝室ね……なんて悪趣味なのかしら」


 そう言った後、アルマはドアノブを握ると悠斗達の顔を見て「行くわよ」と一言つぶやく。


「アールス、観念しなさ……!」


 最終勧告を告げようとしたものの、突入した部屋の中にアールスは見つからなかった。


 この部屋まで続く廊下は一直線。


 どこかと繋がっているということもなく、他の部屋にいないとここしかない。


 部屋にあるのはベッドとソファー、それに机と壁一面に広がっている本棚のみ。


 ベッドの中や裏まで探すも姿かたちも見つからず、彼の巨体を隠す程の何かはこれ以上見つからなかった。


 カインと呼ばれた騎士は「どこへ行ったのでしょうか……?」とつぶやくも、誰も答えられない。


 窓は他の部屋も含めて内側から鍵が掛かっており、外へ逃げたのであればどこかの窓は空いているはずなのだ。


 ということは、アールスはこの屋敷のどこかにいるということになる。


「一体どこに消えたのよ……」


 アールスが見つからないため、焦るアルマに悠斗は。


「ん~どこに消えたんだろうな。アールスさんって魔術を使えたりとかするのか? もしそれなら姿を消す魔術とか……」


 そう答えてみる悠斗にアルマは。


「アールスが魔術を使えるかどうかは分からないけど、姿を消す魔術なんてありえないわ」


 アルマの言葉を補足するようにニーナが続きを答える。


「ここまで人の気配がありませんでした。ということは、もしアールスさんがその魔術を使えるなら、自身の姿に足音、それに気配まで消すことができるということになります。そこまでできるなら私達からああして逃げる必要もなかったでしょう」


「そうだよな……それじゃあどこにいったんだろう」


 少し疲れたのか、悠斗は壁一面に広がる本棚へ背中を預ける。


 するとガコンッと何かが押された音が悠斗の背中から鳴る。


「ん?」


 悠斗が後ろを振り返ると、壁一面に広がっていた本棚は、中央からゴゴゴゴゴと音を鳴らしながら左右に広がっていく。


 広がった先には薄暗い隠し通路が現れた。


「マジかよ……」


 偶然ではあるがファインプレーを決める悠斗。


「隠し通路なんて作っていたのね……よくやったわ悠斗」


 素直に褒めるアルマの言葉に「おっおう……」と少し恥ずかしそうに答える悠斗26歳児。


「ここへ逃げたに違いないわ……行くわよみんな!」


 アルマの言葉に頷いた一行は、アールスを追って薄暗い隠し通路へと進んでいく。

今年(2020年)最後の更新となります。

よいお年とクリスマスを!

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