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第54話 大精霊ウンディーネ

ちょっとだけ長くなっちゃった。

 突然大声で悠斗が叫んだもので、倒れていたアルマ達が勢いよく起き出した。


 アルマとレイそれにニーナも武器を構えて警戒をする。


「敵襲!?」


 これぞ冒険者の(さが)


 慣れとは怖いもので、野営をすると昼夜問わず魔物に襲われる可能性があるため、『大声で叫ぶ = 魔物or盗賊が来た』という図式が形成される。


 普段ならこのままレイが「急に大声出すんじゃない大馬鹿者!」と悠斗へ突っ込むのだが、ふじこの雰囲気がいつもと違い、自称姉と言い続けている彼女はいち早く気づいた。


「ふっふじこちゃん……?」


 レイに声をかけられた当のふじこは、頬をやや赤く染めて恥ずかしいのかスカートの部分をギュッと握っている。


「かっ……可愛い!!」


 そんなふじこの姿を見たレイは、そう言って両手で鼻を抑えだした。


 興奮して鼻血が止まらないようだ。


 そんなレイを放置して、ニーナは疑問を浮かべる。


「それで……その子は誰でしょうか?」


 そんなニーナの疑問へと答えるように、謎の幼女は両手を腰に当てて声を上げる。


「そういえば自己紹介がまだじゃったの。わしの名前はウンディーネ。水を司る大精霊ウンディーネとはわしのことじゃ! よろしくの!」


 初めて知り合った飲み屋のおじさんの様な軽い口調で挨拶をする大精霊。


 そんな彼女の自己紹介を聴いたニーナは、両膝を折ってお祈りを始めた。


 アルマとレイもニーナに遅れて祈りのポーズをするのだが、悠斗はノリについて行けず。


「あっ……はい、ご丁寧に。俺はふじこの兄で冒険者をやってる悠斗です」


 あまり凄さがピンと来ない悠斗は普通の挨拶で済ませてしまう。


 悠斗だけ想像と違う反応が返ってきたのを見たウンディーネは体を震わせて。


「なぜお主は驚かないのじゃ!? わしはあのウンディーネじゃぞ!?」


「おっ……おう」


 おっそうだな? ぐらいの感覚で未だにピンと来ない悠斗。


 この世界の住人ではない悠斗にはわからないが、大精霊とは創造神『トゥリアナ』の次に信仰されている存在。


 精霊達の王であり、そして創造神の遣いと伝えられており、昔から信仰されている。


 そのため、アルマ達の行動通りになると思っていた所、悠斗だけ違っていたので驚いたのだ。


「ぐぬぬ……。この目を見張る程麗しく美しいウンディーネ様を見ても驚かぬとは……今度の資格者は変わっておるの……ん?」


 自ら美しいウンディーネ様とか言い放つこの大精霊を信仰するとは…… この世界の住人は信仰する相手を間違えているのでは? と思う悠斗だが、口には出さない。


 そんなウンディーネと名乗った幼女は、悠斗の方へ顔を向けるとまた難しい顔をする。


「うぬ? お主……いや資格者よ、この世界の住人ではないの?」


「えっ何でわかっ……っ!?」


 と言った所で悠斗はハッとして口を抑えるのだがもう遅い。


「安心せい、言いふらしたりはせぬ……というかここ数百年だか数千年だか忘れたが、長いこと人と合ってはおらぬからの」


「何でそんなことがわかったんだ?」


「ん? 魂の形を見ればわかるからの」


「魂の……形?」


「そうじゃ。普通は丸い形をしているのじゃが、お主のは何というかこう……手が加えられているというか、少し歪な形をしておる。お主はどうやってこの世界に来たのじゃ?」


「歪ってどうなってんだよ俺の魂って……ええっとそうだな……」


 そう言って悠斗は世界にどうやって来たのかを話だした。


 それを聞いてウンディーネは。


「おお!? トゥリアナ様からの遣いか。それならお主がこうして資格者……いや、既に()()()と言ってもよいのかの。こうしてわしの前にいるのも納得じゃ」


「あの……さっきからっていうかリヴァイアサンも言っていた資格者とか()()()って誰のこと言ってるんだ? もしかしなくても俺のことか?」


「お主以外に誰がおる?」


「ほらっあそこで今もお祈りしているアルマ達とか……」


「あそこの娘達は資格者ではないのじゃ」


「えっじゃあ何で俺は資格者なんだ?」


 当然のことで、特に何かしたわけでもない悠斗は疑問に思った。


「お主がトゥリアナ様から遣わされた者じゃからじゃ。まあ他にもたまにこの世界の住人で資格ある者も居ることがあるがの」


 つまりトゥリアナ様から転生させられてこの世界に来た人間は誰であろうと自動的に資格者になると理解する悠斗。


 自分が資格者と分かったため、今度は具体的にどういった存在なのか聞いてみた所。


「資格者とは大精霊を契約して従わせられる存在のことを言う。資格者は大精霊と契約することで契約者となり、従えた大精霊の力を扱うことができる。もちろん契約者が持っている力次第ではあるから何とも言えんがの」


「ってことは君と契約したら、俺の力次第だけど君の力を使えるということ?」


 まさか俺の時代が始まったのか!? と思う悠斗だが、この世界に来た時のガッカリ感は忘れていない。


 心の中でステイだ……ステイだ……と今にも飛びかかりそうな理性を抑えている。


 そんな彼の疑問に大精霊ウンディーネはあっさりと一言で済ませた。


「そうじゃぞ」


 その一言でガッツポーズを決める悠斗。


 抑えられた悠斗の理性はエサに食いつくかの如く走り回っている。


「おっし! それにさっき『既に契約者と言ってもよいのかの』とか言ってたってことは……!?」


 期待の目をしてキラキラさせる悠斗をみたウンディーネは。


「うぬ、わしは既にお主を認めておるからお主が返事をすれば正式に契約となる。今は仮契約という状態じゃの。どうじゃ? 正式に契約を結ぶか?」


「するする!」


 ※ここまで読んだ読者諸君は、このようなバカ(悠斗)みたいにきちんとメリット・デメリットを説明されていないままノリに流されて契約をしてはいけないと予め言っておく。


「それじゃさっそく気が変わらぬ内に……」


 ボソリと悠斗へ聞こえないよう呟くウンディーネはニヤリと笑うと、自身と悠斗を包み込むほどの魔法陣を形成させる。


 魔法陣は悠斗とウンディーネを包み込むように頭から下まで潜ると、段々小さくなりそのまま悠斗の手の甲に文様を描く。


「よし、これで契約は終了じゃ。()()()()()()()()()取り消すことはできぬからの」


 そう言ったウンディーネは両手を上に上げて背伸びをする。


「ようやくこの辛気臭い所からおさらばできるの!」


 笑顔で嬉しそうな顔をするウンディーネ。


 そんな彼女の言った発言を聞いて悠斗は。


「ようやく? ここに閉じ込められていたのか?」


「うぬ、そうとも言うしそうとも言えぬ。大精霊は契約者なしにこの場から出ることは叶わぬからの……と言っても誰でもいいわけでもないからテストをするわけじゃが……」


「テストってまさか……?」


 悠斗はリヴァイアサンとの戦いを思い出す。


 執拗に自身を()()()と言っていたのを思い出した悠斗は、ウンディーネにある疑問を問いかける。


「リヴァイアサンとの戦いって……契約するためのテストだったのか?」


「そうじゃ。言わば試験官みたいな存在かの」


 ウンディーネのあっさりとした言葉に悠斗は彼女の両肩に手を置いて揺さぶる。


「おまっ……お前のせいで俺達がどれだけ苦労したと思ってるんだ!」


「あばばばば。やめい! 大精霊と契約するのじゃから命ぐらいは賭けるのが当たり前じゃろ」


 こいつは何を言ってるんだ? というような顔をするウンディーネを見る悠斗は。


「そうは言うけどさ……そういうことは事前に言ってくれよ。突然ワープさせられたと思ったらいきなり戦わせられたんだぞ!?」


「いや、お主……()()()()()()()()()ではないか」


 こいつは一体何を言ってるんだ? と言った顔をする悠斗を見てウンディーネは1つため息をついてからこう答えた。


「お主は魔法陣で転移する前にこう言ったではないか『हम(ノォン) एक अनुबंध(クゥァエリス) चाहते हैं(コントラクト)』とな」


「ええ!? あれってそういう意味だったのか?」


 そう言った悠斗を見てウンディーネは呆れて。


「知らずに契約文を唱えよったのか……。まあわしとしては契約できたことでここからおさらばできるし、お主は新しい力を手に入れたのだからwin-winではないか」


「そういえばそっか……あっそうだ」


 ウンディーネの言葉にあっさりと納得した悠斗は、ここで最初に聞くべき質問を思い出した。


「もう正式契約結んでしまったから仕方ないけどさ、デメリットとかある?」


「う~ぬ、そうじゃの……契約してしまえば、死ぬまで契約破棄できぬというという点と、離れることができなくなるぐらいかの……」


 それを聞いて安心した所、ウンディーネは続けて言う。


「あとはそうだの……そういえば今までの契約主は必ずと言っていい程何かしらの厄介事に巻き込まれて死んでいたの。あとはほかの大精霊から今回と似たような試練を()()()に受けさせられる可能性があるぐらいじゃ」


「えっ……」


 それを聞いた悠斗は真顔になってこう言った。


「クーリングオフってできますか」

ウンディーネ「できないのじゃ!」

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