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第51話 海龍リヴァイアサン戦 III

 レイは目を開くと溜め込んだ空気を吐き出すのと同時に腕を振り下ろす。


「叫べ、『ライキリ』」


 レイの愛刀『ライキリ』は甲高い叫び声を上げるような音を鳴らしながら、レイが振った斬撃に沿って青紫色を放出させる。


 放出された青紫色の魔力が綺麗な三日月を表しながらリヴァイアサンの体を鱗ごと深く斬り裂いた。


『グギャアアアアアアアア!』


 アルマとレイの攻撃にさすがのリヴァイアサンも泣き声を上げる。


 さすがのリヴァイアサンも彼女たちを無視できず、アルマ達の方を向くと悠斗へ放っていた攻撃をアルマとレイに差し向けた。


「悠斗、今よ!」


 アルマの言葉に頷いた悠斗はリヴァイアサンをめがけて走り出す。


 リヴァイアサンの体をよじ登り首元へ近づくと、アルマが突き刺したナイフと愛剣が階段状に刺さっていた。


 悠斗はそこを足場にして華麗にリヴァイアサンの頭上へとよじ登る。


 リヴァイアサンの頭上に登った悠斗は剣を抜くと刃を下に構え。


「鱗は硬いけどさ、眼はそうでもないんじゃね?」


 そう言って下に構えた剣をリヴァイアサンの瞳に向かって突き刺した。


 やはり悠斗の予想通りだったのか、悠斗の剣は弾かれることもなく瞳の奥へと突き進んでいく。


 根元まで深く突き刺すと、さすがにこの痛さは我慢できなかったのか、リヴァイアサンは身体を強く振って悠斗を振り落とした。


「うわぁぁぁぁぁ!」


 高所から落下するものの、ニーナの魔術によるアシストによって落下速度は軽減され難を逃れる。


「ニーナ、助かった」


「いえいえ♪」


 そうこうしている内にアルマとレイも悠斗達に合流する。


「やったかしら?」


「眼に剣を突き刺され、首元にナイフと剣、体は深く斬り裂かれたとあればさすがの海龍も命はないだろう」


 アルマの言葉にそう回答するレイだが、悠斗は難色を示した。


「おい、フラグを建てるな」


「はいはい、悠斗の異世界言葉ね。それでどういう意味よ?」


「『やったか!?』って言った直後、相手は無傷でこっちの攻撃が全然効いてなかったりするんだ」


 アルマとレイは訝しむ目をして悠斗を見た。


「私はどう見てもアレが無傷に見えないのだけど」


「同感だ」


 正直に言えば悠斗も今のリヴァイアサンが瀕死の状態に見える。


 確かにリヴァイアサンの攻撃は苛烈で強かったが、ふじこがほとんどを相殺してくれたおかげで今まで戦闘は成り立っていた。


 しかし、自分たちより高ランクだったかつての冒険者たちがこんな所で全員死ぬとは思えないと悠斗は考える。

 

 いくらアルマとレイが戦闘力だけで言えば高ランクに届くかもしれないと言われる強さを持っているとはいえ、()()()()で海龍リヴァイアサンがやられるとは思えない。


 いくらなんでもこれで誰もが返ってこなかったというのは違和感が出てしまった。


 そんな悠斗の疑問にニーナも少し思うことがあるのか。


「私もそのとおりだと思うのですが、その……弱すぎるような?」


 そう言いつつも、慌てて手を左右に振って。


「いえ、私達が強すぎるとかそういったことを言いたいわけではないんですけど、その、なんだかこう……」


 ニーナの変わりにアルマが答える。


「簡単に終わりすぎるということ?」


 レイも腑に落ちない所があったのか。


「確かに。かつて高ランク冒険者として招集された者達が1人も帰ってこないほどの強さかと言われるとそうでもないな」


 確かにそのとおりで、レイ自身も腑に落ちない所がないといえば嘘になる。


 リヴァイアサンは悠斗を執拗に攻撃していたため、かなり余裕があった。


 そのお陰でアルマは集中して攻撃でき、レイに至っては繰り出すには大きな隙がある大技を繰り出すことができたのだ。


 そう考えれば、悠斗が疑問に思うことも無理はないと思うレイ。


 そんなレイの返答に悠斗は。


「そうなんだよ。1人ぐらいは帰って来れるんじゃないか? って思うんだよな……うん?」


 レイに同意を示したその時、悠斗の視線に入っているリヴァイアサンの体が変化を起こす。


 リヴァイアサンの傷口から肉の塊が隆起するようにグチャリと音を鳴らす。


「おいおいおいおい」


 悠斗達が焦る顔になるも、リヴァイアサンの変化は止まらず隆起した肉の塊が傷口をどんどん塞いでいく。


 深く突き刺さっていた首元にあるナイフとアルマの剣も地に落ちた。


 レイが深く斬り裂いた傷口も綺麗に塞がれ、悠斗が突き刺した剣も地に落ちて、戦う前の状態に戻っている。


「嘘……だろ?」


 唖然とする顔の悠斗をリヴァイアサンは睥睨すると。


『汝、資格者ハチカラヲ示シタ……ダガ、マダ足リヌ』


 そう言ったリヴァイアサンの背中から2翼の翼が生えてくる。


『……汝、再ビチカラヲ示セ』


 そう言うとリヴァイアサンから威圧が放たれる。


 今度は威圧に魔力でも乗せているのか、今までと変わらないのに悠斗達の足が勝手に竦んでしまう。


 悠斗達が足を竦ませている間にリヴァイアサンは何かをやろうとしているのか、自身の前方に魔力の渦が発現する。


 どんどん力を増しているのか、魔力の渦からジリリと不快な音が幾度も鳴り響く。


 考えるまでもなく嫌な予感がはしる悠斗達の中、ニーナは震える身体を無理やり動かして、杖を両手で持ち帰り深く深呼吸をする。


 杖を強く地面に打ち鳴らすとカン! っと大きな音が響く。


 その音でみんなの視線がニーナに集中する。


「こんな所で立ち止まってなんていられません!」


 ニーナは視線を気にせず勇気を振り絞って声を上げると、気合を入れ直したのか魔術を込め始めた。


「我らが主よ、汝の子らに祝福を。白き光で我らを包み、今一度、恐怖に打ち勝つ勇気を与えたまえ……『ホワイト・ヴェール』」


 ニーナの魔術は悠斗達の体を包み込み、敵対者からの精神耐性を得る。


 おかげでリヴァイアサンからの威圧は多少マシになったものの、それでも効果がなくなったわけではない。


「助かったニーナ、これで動ける」


 それでも足が動くのを確認した悠斗は、ニーナにお礼を言う。


 アルマは足が動くのを確認できたらすかさず悠斗とレイを見て。


「なんだか嫌な予感がするから止めるわよ!」


 そう言って、アルマは悠斗とレイに向けて声をかける。


 しかし、悠斗は直視してくるリヴァイアサンの眼を見ると、先の戦闘で自分が執拗に狙われていたのを思い出す。


「(この眼は俺を狙うってか? もしそんなに俺のことを愛してくれるなら……!)」


 自身を囮にして動こうと考えた。


 足手まといにはなりたくない。


 悠斗は悠斗なりに自身が出来ることを模索して動き出す。


 どう転んでも自身がリヴァイアサンに致命傷を負わすことは不可能。


 であれば自身が囮となり、その間にアルマとレイには攻撃に集中してもらえればいいと考える。


 大きなダメージは受けてないので、自身にやってくるであろう攻撃はふじこに抑えてもらえればそれくらいの動きはできると考えた。


 アルマが指示を出そうとしたものの、それよりも早く動き出す悠斗。


 突然の行動に戸惑うアルマは。


「どこ行くのよ!」


 アルマの声を無視して、リヴァイアサンの視線が自身に向いているのを確認したら、アルマ達から引き離すように動き出す。


 アルマ達は初動が遅れ、リヴァイアサンの攻撃がいつ発動するのか分からなく離れていく悠斗を追いかけることもできず「あの馬鹿!」とアルマが文句を言う。


 そんな中、レイは辺りを見るとふじこがいないことに気がついた。

もうちょい続きます。

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