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第49話 海龍リヴァイアサン戦 I

「クッソ! 何が『チカラヲ示セ』だ!」


 展開された魔法陣から現れた水の矢はすべて悠斗に向けられている。


 そして悠斗に向けられた無数の矢は放たれた。


 悠斗はふじこを脇に抱え直して走りだすと。


「ふじこ! 頼んだ!」


 これだけで理解できるふじこは、相手の攻撃に負けずと無数の『みずてっぽう』を発射して相殺させる。


「何で急に戦闘が始まったのよ!」


「分からんがふじこちゃんが危ない。急ぐぞ!」


「はい!」


 アルマ達からすれば急に始まった戦闘。


 慌てて悠斗の方へ駆けつけていき、悠斗とふじこに合流する。


 合流した途端、悠斗はニーナを見つけては。


「ニーナ! ふじこを頼む!」


 そう言ってふじこを投げよこしてきた。


「キャッ!」


 無表情ながらスー○ーマンのように両腕両足を伸ばしている姿は、戦闘中であるのにシュールである。


 そんなことを気にする余裕もなく、無事にふじこをキャッチするニーナ。


 悠斗はニーナがキャッチしたのを見届けると、リヴァイアサンへ走り出した。


 唖然としたレイは。


「貴様! ふじこちゃんを投げるなんて危ないだろ!」


 そう言って怒りながら悠斗を追いかけていった。


「はぁ……まあ緊張して動きが鈍るよりはマシね」


 1人冷静なアルマはニーナに振り向いて。


「ニーナ、ふじこちゃんを頼んだわよ。後方から援護よろしく」


 ニーナにそう伝えた後、アルマも悠斗とレイを追いかけていく。


「任せてください! ふじこちゃん、行きましょう!」


 ニーナはふじこを地面に降ろしてそう語りかけると、彼女(ふじこ)を後ろに隠すよう立ち回る。


 ふじこも鼻息荒くフンス! と気合を入れながらリヴァイアサンから放たれている水の矢を相殺し続けた。


 ずっと相殺できるのも、ふじこのMPが無尽蔵にあるからだ。


 いくら使っても減らないMPはチートである。


 しかし本人はそのMPの使い道が幼女であるためなのか、それとも幼女の形をしたナニカだからなのか、悠斗から教えてもらったことしかできない。


 いくら持っていても、減ることがなかったとしても使い道がなければ宝の持ち腐れである。


 それでも今までふじこが悠斗に教えてもらった『みずてっぽう』に巨大なホーンラビットの戦いから得た知識は彼女の力になっているはずだ。


 こうして後方からニーナとふじこの援護を受けてる間に、悠斗は剣を両手で構えてリヴァイアサンに向かい、一直線に走り抜ける。


「こんなにデカイなら攻撃は当て放題だな!」


 リヴァイアサンに飛びかかり剣の刃を下にして突き刺そうとするのだが、さすが海龍と恐れられていたぐらいの魔物。


 悠斗の剣は鱗を突き刺すことができずに弾かれた。


「こいつの鱗硬すぎだろ! 何で金属同士を打ち合ったような音が鳴るんだよ!」


 それでもめげずに斬りつけようとしたりするのだが、有効な攻撃にはならずすべての攻撃は弾かれてしまう。


 そんな中、悠斗に攻撃され続けているリヴァイアサンはさすがに鬱陶しくなったのか、大きな体をほんの少し動かした。


 たったそれだけの行動で悠斗の体は吹っ飛んでいく。


「どわああああ!」


 勢いよく地面にぶつかりゴロゴロと転がったことでダメージはあるものの、幸いにも受け身をきちんとしている。


 現状、悠斗の頭ではリヴァイアサンとの戦いで戦闘結果をシミュレートしているが、一向に勝てるビジョンが浮かばない。


 立ち上がった時に目の前に見えるリヴァイアサンの姿は視界に広がる大きな山の様にも見えた。


 それでも諦めることはなく、剣を支えにして立ち上がる。


 守るべき者がいるから。


 そう当たり前の様に考えついた悠斗は突然頭が痛くなる。


 頭の中で転生する前の記憶が突然とフラッシュバックの様に蘇ってきた。


 小さい時の自分、そして大事そうに繋いでいるふじこに似た幼い女の子。


 目の間に横たわる()()()()()女の子の体と、そこから流れる赤い血。


 そして……両手を赤く染める自身の手のひら。


 ここで記憶は途切れ、フィルターでもかかったかのように続きを思い出すことができない。


 悠斗はもう一度自身の頭に手を当てて、記憶を探ろうにもやはり思い出せず、何か大事なことを忘れているような気がする。


「駄目だ、今は余計なことを考えるな。目の前の敵に集中しろ……じゃないと()()()()()()


 言葉を発して考えないようにと思った矢先、自身の口から意図せず『また守れない』と口ずさんでしまう。


「『また』って……何をだ?」


 そう考えると自然に体が動かなくなってしまう。


 思考と一緒に体まで止まってしまったかのように動けない悠斗。


 しかし、リヴァイアサンは待ってはくれない。


 手加減していたのか、複数の魔法陣に紛れ一回り大きい魔法陣が展開される。


 明らかに他の魔法陣とは異質で、その狙いも当然ながら悠斗に向いていた。


「うっ動けよ!」


 しかし、言葉とは裏腹に何故か動けないでいる悠斗。


「悠斗、危ない!」


 悠斗の様子にアルマ達も気づいて声をかけるのだが動かない。


 発動まで数秒もなく、大きな魔法陣は光を強めていく。


 もう間に合わない。


 一際大きいリヴァイアサンの魔法陣は、大人を丸々飲み込むほど大きな水創り出して圧力を高めていく。


 殺意をさらに高めるように、魔法陣はバチバチと音を鳴らす。


 そして、その殺意が籠もった魔法陣は悠斗へ向けて勢いよく放出した。


 これが当たれば悠斗は影も形もなくなるか、もしくは水圧に潰されて死ぬだろう。


 しかし、その攻撃が当たる前に予想もしない方向から攻撃がくる。


 悠斗が諦めようとしたその時、リヴァイアサンが放つ攻撃よりも先に別方向から悠斗へ向かって攻撃が直撃した。


 予想もしなかった完全な不意打ち。


 悠斗は受け身もとれずに吹き飛ぶと同時に、先程まで彼が立っていた場所から大きな音がした。

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