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第48話 資格者

 悠斗は扉の取っ手から手を離し「集合」と声をかける。


 円陣を組むと悠斗は口を開いて。


「少し嫌な予感がしていたんだけど、少しじゃなかったわ」


 そう言葉にした。


「あなたは嫌な予感だけは当たるわね」


「うるせぇ」


 それで……どうする? と悠斗が言うものの、中々意見は出てこない。


「どうする……と言われても、行くしかなんじゃない?」


「扉はここしかないのだからな」


「そうですね~♪」


 何だか前向きなアルマ達と違って不安な悠斗は。


「いや……でもさ……勝機はあるか?」


「一体ここで何日過ごしていると思っているの? さすがにローゼリア様が心配なさるわ」


「アルマの言う通りだ。他の騎士達も動いている頃だろう」


「『マリーディア祝賀祭』もありますし、不参加はさすがに不味いです」


 とアルマ・レイ・ニーナは言うのだが、まだ難色を示す悠斗を見てアルマは。


「それじゃあこう言えばいいかしら」


 そう言ってアルマはゴクリと唾を飲み込んでからこう言った。


「ここで無為に時間を潰して餓死にするか、この扉の先で待っている海龍に勇気を出して挑んでみるか……。悠斗、貴方が選んで」


 アルマ達の言葉に悩んでいると、ふじこは悠斗の手を引っ張って扉に指を指す。


 ふじこの目は真剣で、まったく怯えがない。


 それどころか早く行こうと急かしてすらいる。


 そんなふじこを見て悠斗は頭を乱暴に掻きむしって。


「だ~クソ!」


 と呟くと同時にアルマ達3人の顔を見る。


「ああ、そうだ。俺達は冒険者……なら選択値なんて最初から1つしかないってことか。さすが先輩冒険者だな」


「ふふ、悠斗も冒険者とは何かってのが分かってきたみたいね」


 アルマの言葉に苦笑いをした悠斗は。


「冒険者はただのなんでも屋じゃなく、誇りを持って依頼をこなし、時には命を賭けて冒険に出る者……だろ?」


「そうだ。それが私達冒険者であり、今が命を賭ける時だ」


「私達は無為に命を捨てるのではありません。一縷の望みを賭けて挑んで見る……そんな価値があると思います♪」


 アルマ達の言葉に目を冷ました悠斗は両頬を叩いて気合を入れる。


「うっし、行くか! 絶対に生き残るぞ!」


 気合を入れた悠斗は、ふじこの顔を見る。


 ふじこも理解しているのか、コクリと顔を縦に動かす。


 深呼吸をした後、悠斗は扉の前に立つと取っ手を握りしめてその巨大な扉を開けていく。


 最初に扉を開いた時と同じく、力を入れずとも歓迎するかのように悠斗達を招き入れる。


 開いた扉のその先には、さきほどと変わらず巨大な海龍の瞳が悠斗達を待ち構えていた。


 海龍から放たれる重圧に重りでもついたのではないかと思う悠斗だが、それでも耐えながら足を1歩1歩動かしていく。


 悠斗達が部屋に入ると何者かの意思でも働いているのか、突然と部屋の扉が消えた。


「扉が!?」


「引き返すのは許さないってことね……」


「例え扉があったとしても、アレは私達を逃してはくれないだろう」


「そうですね……やるしかありません」


 部屋に入った悠斗達は前方にいる海龍を見つめた。


 そんな彼らを見た海龍は顔を上げ、部屋に入ってきた侵入者達を一瞥する。


 上から悠斗達を見下ろすその姿は王者の貫禄。


 悠斗達はそれぞれ自身の武器を鞘から抜いて構える。


「ここから脱出する方法を教えて欲しいんだが……って言葉は通じないか」


 悠斗の言葉に応えるように海龍は悠斗に視線を向けると。


『我ハ海龍リヴァイアサン。資格者ヨ、汝、ソノチカラヲ示セ』


「っ!?」


 返ってくるとは思いもしなかった悠斗は、驚いて言葉を詰まらせる。


 慌ててアルマ達を振り向くも、言葉が聞こえていなかったのか、アルマとレイは手に持った武器を構えて緊迫しし、ニーナは少しでも悠斗達の力になろうと補助魔術を詠唱していた。


 部屋全体に聞こえてくるであろう声の大きさだから普通は気づくはずなのだが、アルマ達はまったく気づいていない。


 アルマ達へ声をかけようとしたものの、思いとどまった悠斗はふと閃く。


「(そういえば、この部屋の扉を開けるのも俺じゃないと無理だったし、巨大な扉を出す台座も俺にしか見えなかった……ってことはもしかしてこの声も? ……それなら!)」


 自分にしかできないことは分かったのか、悠斗は構えていた剣をおろして1歩1歩と前に進んでいく。


 そんな悠斗の行動をみて驚くアルマ達。


「何をやっているのよ悠斗!」


 彼女達からすれば悠斗が突然奇行に走ったと思うのも仕方がない。


 また1歩と進んでいく悠斗を見て注意をするも聞かずに無視をする悠斗。


 そして歩みを止めた悠斗はリヴァイアサンを見上げると。


「なあ、俺の言葉理解できてるだろ? できると思って話しかけるけどさ、ここを通してほしいんだ」


「悠……斗?」


 無防備に前へ出たと思ったら、いきなり話しかける悠斗を見て気でも狂ったのか? と思ったアルマ達は言葉が出ないまま困惑している。


『資格者、汝ハチカラヲ示サネバラナズ、汝、資格ヲジタイスル者カ?』


「ああ、資格者ってのが何かわからないが、何かの間違いだと思うし、俺にその資格はないと思う」


 悠斗がリヴァイアサンに向かって会話をしているように見えるアルマ達は増々困惑を極める。


 アルマにレイ、それにニーナも突拍子な行動をしている悠斗とリヴァイアサンへと集中しすぎて、ふじこにまで気を回していなかった。


 3人が気づいた時には間に合わず、ふじこは悠斗の方へトテトテと向かい。


「「「ふじこちゃん!」」」


 アルマ達の言葉に目も向けず、悠斗の側まで行ってしまう。


 悠斗は側に来たふじこを見ると抱き上げて。


「ほらっこんな小さい娘がいるんだ。早く俺達をここから出してほしい」


 そう言って悠斗が抱き上げたふじこをリヴァイアサンは見ると。


『……汝、資格者ナリ。チカラヲ示サネバラナズ』


「いやっちょっと! さっきまでは辞退してもいい感じだったじゃん!」


 急に態度を変えたリヴァイアサンを見た悠斗は慌てる。


『……汝、チカラヲ示セ』


 会話は終わりだと言わんばかりにリヴァイアサンは長い体を高く伸ばしていくと、周囲に()()()を展開させる。


 魔法陣からは矢の形に変形させた水が現れると同時に、悠斗達へ狙いを定めた。

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