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第46話 失われた古代魔法

 頬にもみじ模様を咲かせた悠斗は「いてて……」と呟きながら周囲を見回す。


「みっみんな大丈夫か?」


「ええ、あなたに触られた胸以外は」


 ジト目になりながら悠斗を睨みつけるアルマ。


「不可抗力だって不可抗力」


「……はぁ、まあいいわ。それでここは――」


 アルマの言葉に3人とも周囲を見回す。


 ニーナの光魔術で周囲を照らしてもらった部屋はそこまで大きくない小部屋。


 石玉がぶつかった衝撃で、周囲にあった調度品や小物が散らばり、入り口は塞がれている。


「しかし困ったな……入り口は石玉で塞がれてるからここから出られそうにないし……」


「古代文字が使われていたほど古い建物だし、どこか脆い所があるかもしれないわ。一度周囲を調べてみましょ」


 アルマの言葉に納得した3人は周囲を調べることにした。


 悠斗は大きい調度品などを動かして調べてみたり、壁をペタペタ触ったりするが特にあやしい所はない。


 しきりに壁を触っているのも、石玉が転がってきたのだからどこかにスイッチか何かが隠されているかもしれないと思ったからだ。


 しかし成果は今の所出ていない。


 アルマやレイとニーナの方を見てみる悠斗であったが、彼女たちも成果はないようだ。


 発想を変えて、見取り図か何か見つからないかな? と思い周囲に散らばった本を調べようと思ってみる。


 見つけることができれば、この部屋含めて神殿の内部が分かるので脱出方法を調べることができると思ったからだ。


 しかし、どの本も年月が経ちすぎたのか手に持っただけでボロボロと崩れていってしまう。


「だめかー」


 そんな中ふじこはみんなのお手伝いにとガサゴソしているが、危険な物があるかもしれないのでニーナに止められてしまう。


 ニーナに止められたふじこは暇を持て余し、悠斗と一緒になって本を探していた。


 最近は悠斗やニーナに物語りの本を読んでもらうのがふじこのマイブーム。


 悠斗が床に手をついて諦めかけていたその時、トコトコとふじこが歩いてくる。


 両手に1冊の本を抱えているようだ。


 ふじこは両手で抱えた本を悠斗に差し出す。


「読んでほしいのか?」


 コクリとうなずいた悠斗は、ふじこから本を受け取り、股の間にふじこを座らせる。


 悠斗に体を預けて『むふー』っと満足げな様子を見せるふじこ。


 悠斗に本読みをお願いする時は、いつもこの体制だ。


 悠斗はふじこから本を受け取ると、ページを開いて本を読んでいく。


「え~何々……」


 読めるには読めるが、難解な言葉で書かれているので理解するのに時間がかかった。


 要約するとこうだ。




----




 精霊の契約者


 精霊の契約者とは、その名の通り精霊と契約した者の総称。


 精霊と契約することで、そのチカラを自在に使えるようになる。


 精霊と契約をするためには精霊が出す試練をクリアして認められねばならない。


 また、出される試練は精霊によって違い、試練をクリアしても精霊が気に入らなければ契約できない。


 しかし、見事試練に合格して精霊に認められれば契約者となれる。


 そして精霊の契約者となった者は……。




----




 と書かれており、まだ続きはあるようだが破けていて読めなくなっていた。


 最後のページをめくり裏表紙の内側をよく見ると、今までに見たことない文字が透けて見える。


 しかし悠斗の持っている『言語理解』は悠斗自身が言葉の意味を理解していなくても読めるようになってしまう。


 そして言葉を紡いだ。


हम(ノォン) एक अनुबंध(クゥァエリス) चाहते हैं(コントラクト)……なんだこれ?』


 読めるのだが、その意味がまったくわからない。


 翻訳されていても悠斗に知識がないので、技術的なことになるとさっぱり意味が分からないといったケースは存在したが、今回のケースは何かが違ってると直観した。


 その直観はただしく、突然部屋の床一面を埋め尽くすサイズの()()陣が展開される。


「っ!?」


 声にならない声を発して驚いた悠斗は、立ち上がってふじこを抱き上げる。


「何したの悠斗!?」


 部屋中を調べていたアルマ達も異変に気付き、またお前か! っとばかりに悠斗を責めるのだが。


「何もしてねぇよ!」


 何もしてないわけではないが、今回ばかりは仕方がなかった。


 今では失われた古代魔法のことなぞ悠斗が知る由もなく、悠斗が最後に言った言葉が魔法の詠句だと気付かない。


 悠斗とアルマ達が言い争いをしてる間に描かれた魔法陣は空の様に綺麗な水色に光りだす。


 ひと際輝きだすと、描かれた魔法陣は効力を発揮する。


 ズブズブと深い沼にでも足を踏み入れてしまったかのように、悠斗達の足が沈んでいく。


「ちょっちょっちょっ!」


 ちょっと待てよ! と昔のアイドルがドラマで言っていたセリフを吐き出しそうになるぐらい慌てる悠斗。


 ふじこだけでも! とふじこを頭上に上げる悠斗であったが、それも虚しく体は沈んでいく。


 ついに頭と両手だけになった悠斗は懸命に声を出す。


「ふ……じこ。……にげ――」


 悠斗の声も虚しく魔法陣の中に消え、アルマ達3人……そしてふじこと全員が吸い込まれるように沈んだ。


 全員が沈んだ後、輝いていた魔法陣は効力が無くなったのか跡形もなく消え去り、小部屋の中はいつもの静寂に包まれた。

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