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第45話 罠の定番といえば?

 水の流れに導かれるまま進んでいく一同。


 神殿とは本当に神聖なる所なのか、『マリーディア海蝕洞』とは打って変わって魔物の気配がない。


「ここに来てから魔物の気配がないんだけど……」


 周囲を警戒しても、道中突き刺さるような気配を感じない悠斗。


「おそらく、この神殿が放っている神気があるからじゃないかしら」


 そんな悠斗の疑問にアルマが答えた。


「そうですね。一部を除いて魔物は『神気』にすごく弱いですから……もしかしたらここが神殿であるということと関係しているかもしれません」


 アルマの答えに続いて話すニーナ。


「一部? ってことはその『神気』ってやつに強い魔物もいるんだ?」


「はい。実のところ魔物の生態について詳しいことはわかってないんです」


「えっそうだったんだ」


「亜人種を含めた対話で共存できる者達を人類、それ以外の敵対種族をまとめて魔物と分類しているだけなのです。その中で一番生態系が不明とされているのが……」


「龍種だ」


 ニーナの言葉を遮る様に話すレイ。


「龍種って……ドラゴンか」


「そうだ。長寿であり、人類よりも賢く強い。中には言葉を話す固体もいると聞く」


「言葉を話す龍か……」


 そう言いながら悠斗が夢想するのは7つのボールを集める超有名バトル漫画に登場するシェ○ロン。


「他には?」


「そうだな……あとは魔族だな」


「魔族!? ってことは魔王とかいるんだ?」


「まおう?」


 3人とも悠斗の言っていることがわからず首を傾げる。


「えっと……ほらっ。魔族の王で、魔物を率いている人類最大の敵」


「魔族の王で魔物を率いる? そんな存在がいるなら人類はとうの昔に滅んでいる」


「あ~魔王が存在しない世界ね。把握把握」


 悠斗が勝手に納得しだしたので、レイは理由を聞くのだが。


「悠斗の世界では魔王が存在したのか?」


「は? 何言ってるんだ。いるわけないじゃんレイは馬鹿だな~」


 はははと笑う悠斗を見て、頭の中でブチッと何かが千切れる音がするレイ。


「落ち着いてレイ!」


「そうです! いつもの戯言です!」


「アルマ、ニーナ……離せ! こいつは斬らなければならない!」


 刀を抜こうとしているレイを抑えるアルマとニーナ。


 そんな中ふじこは暇そうに溝に流れる綺麗な水をちゃぷちゃぷ音を鳴らして遊んでいる。


 悠斗は鬼のような形相をしているレイの顔を見て、少しずつ後ずさるのだが……。


「あっ……」


 その一言と表情に出た顔で何かを察したアルマ達。


 悠斗が突然「あっ……」などと言い出すと、何かしらトラブルが発生するということを身をもって知っている。


 そしてここは神殿と思わしき謎の施設。


 こうした人工物やダンジョンでは出会わないことの方が珍しいと言われている仕掛けの存在を思いつくアルマ達。


「罠を踏んだとか言わないわよね? そうよね?」


 そうであってくれとお祈りしながら、一縷の望みに賭けるアルマ。


「ほらっ。もう怒らないから嘘だと言ってくれ!」


 心から許そう、だからお前も冗談を言っていいんだぞと目で語りかけるレイ。


「いつもの……ジョークですよね? ほらっ心を和ませるあの時(43話)の様なジョークですよね?」


 私の心を和ませるジョークであってくれと思うニーナ。


 そんな3人の願いも虚しく、悠斗の顔はみるみる驚愕に変わっていく。


 アルマ達ずっと後方からゴゴゴゴゴと地鳴りの様な音が鳴る。


 通路全体を埋め尽くす程巨大な石玉が転がってくるのが見えた。


「逃げるぞ!」


 悠斗はふじこを腰に抱き上げると、一目散に走り出す。


「悠斗! なんてことしてくれるのよ」


「ほんとうにお前は馬鹿野郎だ!」


「絶対許さないんですから~」


 必死な顔をしながら全力で走る悠斗達。


「すまん! でもなんで神殿なのに罠が仕掛けられているんだよ!」


「防衛装置か何かだろう!」


「悠斗さんのばか~」


 必死に走っている悠斗達だが、石玉の方が早いためこのままでは追いつかれてしまう。


「ふじこ! 追いかけてくるあの石玉に『みずてっぽう』だ!」


 ふじこは悠斗に抱えられたまま器用に後ろを向くと、石玉に向かって『みずてっぽう』を放つ。


 しかし、何か細工が仕掛けられているのか、ふじこの『みずてっぽう』は途中で弾かれてしまった。


「なんで弾かれるんだよ! そんなのアリか!?」


「おそらくここが水の神殿だからじゃないかしら?」


「くっそ! この神殿作ったやつ絶対性格悪いわ!」


 愚痴を吐いても仕方がなく、このままじゃ危ないと思ったその時、前方に部屋の入り口が見えた。


 運よく開きっぱなしになっており、入り口の大きさを見ると石玉は通らないサイズだ。


「あそこに逃げ込むぞ!」


「「「「うぉぉぉぉぉぉ!」」」」


 開いていた部屋へ飛び込むように入り間一髪逃れる。


 それと同時に大きな音をたてて石玉がぶつかり、衝撃で入り口は崩れていく。


「はぁ……はぁ……死ぬかと思った。ふじこ無事か?」


 心の中で『俺はインディー○ョーンズを体験したくて異世界に転生したわけじゃねぇんだぞ』と愚痴を言いながらも悠斗はふじこへ声をかける


 するとふじこは両手で悠斗を引っ張って何かを要求しているようだ。


 不思議なことになんとなくふじこの気持ちが伝わる悠斗は。


「っえ? もう一度やりたいって?」


 首を縦にふるふじこを見て。


「勘弁してくれ……もう今日は閉店です……」


 そう言うと、とりあえず立ち上がろうと手をつく悠斗……であったが、手の感触が硬いどころかむしろ柔らかいというありえない感触に驚く。


 柔らかく、マシュマロのような感触で、山のように盛り上がっている。


 つい最近体験したな……などと思い出すのと同時に、冷や汗が出てくる悠斗。


 一度あることは二度ある。


「(頼む、想像と外れてくれ……)」


 そう言いながらチラッと薄目を開けると。


「あっ……」


 悠斗が手をついた所は床ではなく、アルマの胸。


 彼女の方へ顔を向けると、頬を引くつかせながら真っ赤にさせていた。


「わっ私の胸が床みたいで悪かったわね……」


 頬と同時に体も震わせている。


「いっいや、程よい大きさで……柔らかいぞ?」


「(これが世に言うラッキースケベというやつか……ってことは次に待っているのは……)」


「いつまで触っているのよ!」


 アルマが怒りのビンタを放つ。


 手がブレて見える程素早い速度で放たれたビンタは悠斗の頬に直撃した。


「ですよね~!」


 静かな神殿内で頬を叩かれる音と共に悠斗の叫び声が木霊した。

わたしもリ○さんみたいにラッキースケベを体験したい、そんな人生でした。

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