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第43話 巨大神殿と古代文字

「……なんだよこれ」


 自然に生み出された洞窟から一転。


 悠斗達が見下ろす先に、自然には決して造られることがない人工物、()()()()()殿()が鎮座していた。


「神殿って……自然にできるものだっけ?」


「そんなわけないでしょ……」


 アルマ達も悠斗と同じようにみな絶句している。


 誰もが言葉を紡げないでいた中、悠斗は。


「どうする?」


 パーティーのリーダーであるアルマに指示を仰ごうとしたのだろう。


「どうする? って言われても……行くしかないでしょ」


「そう……だよな……」


 危険と言われていた『マリーディア海蝕洞』の奥地には謎の巨大神殿が鎮座していた。


 なんとも言えない不気味な恐怖を感じながらも、悠斗達はこの先へ進むしかない。


「引き返した所で入り口は塞がってるわけだし……それに」


「それに?」


「正直言って、ちょっとわくわくしてきた」


「はぁ……何を言うかと思ったら……」


 アルマは呆れたような顔をして悠斗をみるが、その後すぐ笑みに変えて。


「でも、実は私もちょっとわくわくしているのよ。だってこんな所に神殿よ? 冒険者でこんな光景を見てわくわくしない人なんていないわ!」


 アルマは「そうよね?」と他のメンバーに同意を求める。


「確かにアルマの言う通りだ。ここで引き下がっては冒険者と言えないだろう」


「そうですね~♪ ここへ来た他の冒険者のみなさんも、同じ気持ちだったんでしょうね」


「それじゃあ行こうぜ!」


 悠斗の言葉に同意した皆は神殿を目指して進んでいく。


 ボコボコした道を進んでいる所、途中から舗装されたと思わしき道に変わっていった。


 おそらくここが『マリーディア海蝕洞』と謎の神殿の境目なのだろう。


 ぐるぐると下へ道なりに進んでいくと、謎の神殿があるエリアにたどり着く。


 上から見上げるよりも大きく見える神殿の大きさに圧倒される悠斗達。


「上から見下ろすよりも、こうして神殿の近くまで来る方がかなり大きく見えるよな」


「ええ……それに何だかこう威圧感というか……」


 言葉を探しているアルマの代わりに、ニーナが言葉を紡ぐ。


「神気を感じます……」


「ニっニーナ?」


 一言告げたニーナは神殿に誘い込まれているかのようにゆっくりと歩いていく。


 普段のニーナに見えない姿を見てアルマ達は。


「ちょっちょっと待ってニーナ!」


 神殿の入口前でピタリと足を止めたニーナ、入り口の横にある石柱へ手を添える。


 石柱に描かれている複雑な模様を指でなぞりボソリと一言つぶやく。


「古代文字……!」


 ニーナは素早く後ろを振り向き悠斗をみる。


「……えっ何?」


 察しが悪い悠斗はニーナが思っていることがわからず困惑する。


 そんな悠斗を見たニーナは、彼の手を引っ張って石柱に指を指す。


「これ読んでください!」


 決起迫る顔をしたニーナの言葉でようやく理解する悠斗。


「ああそっか。俺って古代文字読めるんだっけ」


 持っているスキルの存在をすっかり忘れていた悠斗は納得すると「え~何々……」と言葉にしてから翻訳を始める。


「貢もの大歓迎! 目を見張る程麗しく美しいウンディーネ様の握手会場はこちら……」


 続きを読もうとした悠斗の襟元をニーナは掴み上げる。


「ちょっちょちょちょっと待ってニーナちゃん! ぐっぐるじい……」


 一体細腕であるニーナのどこにそんな腕力があったのか、鬼の様な顔をして悠斗を睨みつけている。


 誰も見たことがない本気で怒ったニーナの顔だった。


「悠斗さん……」


 声だけで殺せそうなドスの効いた声を発するニーナに慌てて釈明をする悠斗。


「本当! 本当だから! 俺の目を見て!」


 そう言って悠斗は不○家のキャラクターペコちゃんの顔真似をする。


「ぐっぐるじい……! だっだずげで……」


 アルマとレイ、それにふじこにも助けを求めるのだが、誰も助けようとはしない。


 いつもどおりの表情をしたふじこの顔は、なぜか呆れているように見えた。


 数分後。


 何とか釈明をしてニーナに許しを請うた悠斗は息を吹き返す。


「次は……ありませんよ?」


 ゴミでも見るかのような顔をし、正座を決めた悠斗を見下ろすニーナ。


「はい……」


「それでこの石柱には何が書かれているんです?」


「えっとだから……貢もの大歓迎! 目を見張る程麗しく美しいウンディーネ様の握手会場はこちら……」


 全然懲りてないと思ったニーナは額の血管をひくつかせながら「(こいつは一発殴った方がいいかな?)」と内心考えた結果、握りこぶしを振り上げる。


「待って待って! これは本当です! 信じてくださいニーナ様!」


 必死に釈明をする悠斗を見るが、さきほどのことがあり信じきれない。


「でもさっきしていた顔はどう考えても……」


「あれはジョーク。ちょっとしたジョークです! ほらっずっとシリアスが続いていたからちょ~っと場を和ませようとですね……」


「へ~そうだったんですか。確かに私の心は大波の様に揺れて和みましたね~」


 ニッコリと笑顔に変えるニーナの顔を見た悠斗は心の底から恐怖した。

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