表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/124

第41話 冒険者の野営

冒険者って普段どういった野営をしているの? って所に触れてます。

「やっとここまで戻ってきたか」


 洞窟の入り口が崩落したことで封鎖され『マリーディア海蝕洞』に閉じ込められた悠斗達。


 どうしたものかと話し合った末、一行は奥へと進むことに決めた。


「それにしても、魔物の気配が薄いよな」


 そう言った悠斗の言葉に対してアルマは。


「崩落のせいで洞窟内が大きく揺れたでしょ? それで魔物も警戒しているんじゃないかしら」


「そりゃそうか、魔物も死にたくないもんな」


 道中進み続けるも登場するのはサハギンが1匹か2匹。


 宙を浮くクラゲ、通称ジェリーフィッシュと呼ばれる魔物や蟹の姿をしたウォールクラブと呼ばれている魔物に遭遇するも、こういった魔物達は海辺に近い所や洞窟で見かける低級な魔物達。


 ジェリーフィッシュから伸びる触手で女性陣があられもない姿になったり、ウォールクラブのでかいハサミで衣服が切られたりといったエッチなトラブルが発生する……といったことはない。


 ジェリーフィッシュから伸びる触手はアルマの素早い斬撃に為す術もなく斬り刻まれ、その本体はレイの手でジェリーフィッシュの心臓部である核ごと両断。


 アルマとレイの息が合うコンビネーションに為す術がなく次々と倒れていく。


 ジェリーフィッシュから伸びる触手が気持ち悪いのか、ふじこも容赦はしない。


 遠距離から放たれる『みずてっぽう』の攻撃で本体は穴だらけ。


 そんな彼女たちの活躍で悠斗の出番はあまりない。


 ウォールクラブに対しては、一応カテゴライズ的に魔物とされているが、正直に言えば食料。


 海辺近くに現れる彼らは周辺に住んでいる村人や漁師の手で簡単に捕獲され、そして食卓や市場に並ぶ。


 ただし、ここ『マリーディア海蝕洞』に生息している固体は環境なのか、それとも栄養が豊富だからなのか少し大きくて強力だ。


 それでも所詮はウォールクラブ。一般的な固体に毛が生えた程度の戦力しか持たない彼らが悠斗達に敵うはずもなく、捕獲され胃袋へ消える運命にあった。


 奥へ進むこと数刻。


「腹が減ったな……おっ!」


 ちょうどいいタイミングで横穴を見つける。


 入ってみると小部屋のようになっており、大人4人と幼女1人で寝泊まりするにはちょうどいいサイズ感で魔物もいない。


 洞窟内なので床が少しボコボコしていることさえ目を瞑れば好条件だ。


「ここで飯でもしようぜ」


「そうね……空が見えないし今が夜なのか分からないけれど、今日はここで寝泊まりしましょうか」


 アルマの返事で各自荷物を降ろし、悠斗は部屋の中央よりやや入り口側に円で囲むように石を積んでいく。


 ロープの余りをナイフで削り、それを円の中央に敷き詰めたら火の魔石を真ん中に設置。


 これで即席かまどの完成だ。


 中央に設置した火の魔石は火を起こすためのもので、この世界では一般家庭でも使われている品。


 魔石にもそれぞれ属性があり、水の魔石に魔力を込めれば水が出てくるし、火の魔石に魔力を込めれば火を放出するため冒険者には必須のアイテム。


 一見便利にも思えるが、魔石は魔物からしか摘出できず、一度魔力を込めれば魔石が耐えきれなくなるまで力を放出し続けるため制御ができない。


 しかも魔石のサイズで持続力も変わることから値段がピンきり。


 一番大人気なのが親指と人差し指で円を描いたぐらいのサイズ物。


 小さくて弱い魔物から摘出できため一番数が出回っており、どこの街の市場や商店でも購入できる。


 野営をすることなんて日常茶飯事な冒険者にとっての必需品だ。


 護衛としてついてきた悠斗やアルマ達も当然ながら持っている。


 今回護衛依頼という名のバカンスだったとしても、何があるかわからない。


 現在のように急な依頼を受けることもあるため、こうして念には念を入れるのが冒険者として長く生き残るコツの1つだろう。


 あとは火の魔石に魔力を込めるだけで完了なのだが、悠斗は肝心の魔力を込めるやり方が分からない。


 魔術を使う時と同じ様にやるだけなのだが、悠斗は魔術の才能がまったくないのだ。


 冒険者……いや、この世界の人々が当たり前のように使っている生活魔術すら唱えられないため「最低でもそれぐらいは……」と思っているのだが未だ成果はゼロ。


 悠斗の代わりにニーナが魔力を込めると魔石から火が現れ、敷いていたロープに移っていく。


 ここからは料理ができる女性陣の出番! とかはならず、悠斗が作業をする。


 アルマとレイは料理が壊滅的であり、辛うじてニーナが少しだけできるのだが上手ではない。


 この中で一番得意なのが悠斗なのだ。


 といっても悠斗の料理技術は素人の域を出ない。


 日本で独り暮らしをしていたころ仕方なく自炊していた程度。


 それでもアルマ達よりはマシなご飯が作れるため、このパーティーでの役割はご飯担当だ。


 まずはウォールクラブはさみ以外の大きい脚を切っていく。


 切った脚は火の周辺に並べて炙り焼きに。


 即席かまどの上に携帯用の鍋に水を入れて皮を剥いたじゃがいもに似た野菜とウォールクラブのハサミを茹でていく。


 茹で上がったじゃがいもののような野菜を潰してマッシュにしたら塩とウォールクラブのハサミの身を加えてよく混ぜるとマッシュポテトっぽい何かが完成。


 野菜とウォールクラブのハサミを茹でた汁に、乾燥ジャーキーを食べやすい大きさに千切って加え再利用。


 あらかじめ市場で買っておいた日持ちしない野菜と王都で買っておいた乾燥ハーブを少し加えたらスープの完成だ。


 スープが完成するころにはウォールクラブの炙り焼きも完成し、これで3品完成する。


 あとは冒険者の主食であるカッチカチの黒いパンを添えたのが今日のごはんだ。


 野営中の冒険者にとってこのご飯は豪華だろう。


 クズ野菜とジャーキーを煮たスープに黒パンだけ、最悪ジャーキーををかじるだけで終わるようなご飯が多いのだから。


 もしウォールクラブがいなかったら1品消滅していただろう。


「よし、みんな出来たぞ!」


 悠斗の声に各々が集まり配膳してく。


 もちろんのことだが、ここまで出てきた品々は大人用だ。


 ふじこの品には一工夫加えられている。


 さすがにカッチカチの黒パンをそのままふじこへ渡すわけにはいかない。


 頑張って一口サイズにカットした黒パンを、前もってスープに投入している。


 そうすることで、食べる頃にはスープが染みていい感じになっているだろう。


 黒パンはこうして千切って食べるのが本来の食べ方だが、彼女たちの分までは面倒だからセルフサービスである。


 配膳が終わると、悠斗は席に着いて両手を合わせる。


「それじゃいただきます!」


「「「いただきます!」」」


 こうして『マリーディア海蝕洞』1日目の探索を終える一行であった。

カニ食いたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ