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第40話 異変

 サハギンを一刀両断したレイはアルマの方を見る。


「(――アルマのやつめ……遊んでいるな?)」


 ちょうどアルマがサハギン相手に剣速を上げだした所だ。


 幼馴染でもあるアルマの心をレイはよく分かっていた。


 初めて戦う相手であるため、自分の剣戟がどこまで通用するか試してみたくなったのだろう。


 レイはそう判断すると興味をなくして悠斗の方を見る。


これはアルマが必ず勝つと分かっているからの行動だ。


 悠斗は今回魔物2体を相手にしているため、苦戦しているようなら加勢しようと考えていたのだが。


「(大丈夫な様だな。父上に鍛え上げられたのだから当然だ!)」


 決して声には出さないが、レイなりに悠斗の成長を褒めていた。


 残るサハギンは1匹、ふじこが『みずてっぽう』で足止めをしている個体のみ。


 悠斗はふじこへ指示をだして『みずてっぽう』を止めさせる。


「後はお前だけだな……逃がす気はないぜ?」


 サハギンに向かっていこうとした所、突然洞窟内全体が大きな音と共に揺れ動く。


「なっなんだ!?」


「キャッ!」


「クッ!」


「ふじこちゃん!」


 ニーナはふじこを抱きとめて庇い、レイは刀を地面に突き刺してしゃがみ込んでいる。


 アルマは突然のことに体勢を崩して尻もちをつき、悠斗は突然のことに驚いていた。


 悠斗達全員が目を離した隙きをついて、残ったサハギンは一目散に水中へと逃げてしまう。


 誰よりも先に逃げていくサハギンを追おうとする悠斗であったが、気づくのが遅れて逃してしまった。


「あっくそ! 逃したか……ってお前らいつまでそうしてるんだ?」


 悠斗が言う頃には揺れも鳴り止み、また静けさ漂う洞窟に戻っていた。


「なっなんであなたはそんなに平気なのよ」


 アルマが疑問に思うのも無理はなく、この世界の人々も地震などの揺れは怖いものだ。


 たまたま異世界転生した人間がたまたま地震慣れしている国出身の人間だったから。


 そんなことなど知らないアルマ達は悠斗の立ち直りの早さに驚いていた。


「いやだって……洞窟内での大きな揺れなんて俺も初めてだけどさ……揺れただけだろ? 地震の多い国に住んでたから慣れてるんだよ」


「どんな国よ……」


 変な所で度胸あるわね……などと内心思うアルマ達であった。


「それよりもアルマ……『キャッ』ってお前その格好……アハハ!」


「ぐぬぬぬぬぬ!」


 顔を真っ赤染め上げていくアルマは立ち上がると無言のまま剣を構えて。


「斬り殺すわよ……」


 わりと本気だなって感じた悠斗は素直に土下座を決めて謝り倒した。


「そんな所で夫婦漫才初めないで、ちょっと戻りませんか♪」


「「夫婦じゃない!」」


 ニーナの指摘に息ピッタリと声を揃える悠斗とアルマ。


「っ……でも確かにニーナの言う通りこのまま進むのは危険そうね……」


 少し考えてからアルマは。


「このまま引き返すのはしゃくだけど、一旦戻りましょうか」


 大きな揺れであったため、落石や生き埋めにされる可能性を考えてのことだ。


 調査に来た『マリーディア海蝕洞』だが、なによりも優先的にしないといけないのは自分達の命。


 それに今回の依頼は失敗しても問題ないとアルマは思っていた。


「それじゃ行くわよ」


 アルマの言葉に立ち上がって、悠斗達は来た道を引き返していく。


 大きく洞窟が揺れたからなのか、魔物は1匹も出会うことなく気配もない。


 来た時と違いおおよそ半分程度の時間で入り口まで辿り着いたのだが……。


「なによ……これ……」


 思わず膝をつきそうになるアルマ。


「うそ……だろ? まさかさっきの大きな音と揺れの原因ってこれかよ……」


 外からの日差しは完全に遮断されており、洞窟の入り口が崩落していたのだ。


 落石の多さに、どう頑張っても自分たちだけじゃこの状況を打破することが出来ないと気づいてしまう。


 どうしたもんかと悩む悠斗は思いついたことを言ってみる。


「……っあ! ここで大声だして、外で待ってるおっさんに助けを呼んでもらうとかどうよ?」


「ここで大声だしても距離があって私達の声は届かないわ」


「うっ……じゃあここで待ってるのはどうだ? 無駄に体力消費するよりはいいだろ。それに帰ってこなかったらおっさんだって不審がるはずだ」


「確かにね。大きな音と揺れだったし、あのおじさんも何かあったと気づいているとは思うけど、赤の他人の命を気遣う程の男かしら?」


「それは……」


「この周辺に住んでる人や冒険者でも近づかない所へ行ってみるか? と言う男よ。私達の命を心配するよりも、自分の命を心配する姿が予想できるわ。――それに赤の他人に自分たちの命を預けられる程私は他人を信じてないわ」


「例え逃げたとしても、街に戻ったおっさんが助けを呼ぶ可能性だってあるだろ!?」


「ここ『マリーディア海蝕洞』が周囲の人からなんて思われてるか思い出してみて。それでも助けがくる可能性にあなたは賭けてみるの?」


「っ……! じゃあどうするんだよ!」


 つい怒りに任せてアルマへ八つ当たりをしてしまう悠斗。


「ここで怒っても無駄に体力を消費するだけ。冷静になりなさい」


 アルマの冷静な指摘に頭を冷やす悠斗。


「わるい……年も一番くってるのに情けないな……俺……」


 ついカッとなりアルマに八つ当たりした自分を恥じて落ち込む悠斗。


 そんな悠斗を見てふじこは手をギュッと握る。


「ふじこ……お前慰めてくれるのか? ありがとうよ」


 そう言うと悠斗はふじこを抱き上げてギュッと抱きしめる。


 一同どうしようか中々考えが浮かばない中、レイが思い切って話してみた。


「……逆に進んでしまうのはどうだろうか」


「さらに奥へとってことか?」


「そうだ。ここ『マリーディア海蝕洞』は誰も近づかないことで奥地がどうなっているのかわからない。なら入り口がここだけとは限らないと思わないか?」


「なるほど……」


「それにあの男の話が本当なのかはわからないが、『海龍リヴァイアサン』……いや、大きな魔物がここへ来たとするならば、どこかに外海へと繋がる所があるはずだ。そこを目指してみるのはどうだろう」


「そうですね~。ここで待ってみても助かるか分かりませんし、一か八かの賭けになるかもしれませんが、奥へと進んでいくのはアリだと私は思います♪」


 レイの意見にニーナは納得がいったのか賛成をする。


「確かにね……レイの意見もアリだと私も思う。悠斗はどう?」


「ん~そうだな……俺も構わない。レイの意見に賭けてみる価値はある。ぶっちゃけ俺はどうなってもいいから、こいつだけは助けてあげたいんだ。だから信じるなら俺は赤の他人のおっさんよりも仲間であるお前達を信じる……それに」


 悠斗から降りたふじこは、悠斗の手を引っ張って奥へ行こうと急かしている。


「ふじこも大賛成みたいだしな!」


「ふじこちゃんが賛成なら私の意見は間違ってないな。行くぞみんな!」


 ギアを一段階上げたレイが元気よく声を上げる。


「レイったらふじこちゃんのことになると急に変わるんだから」


「ふふ。何だか雰囲気もいつもどおりに戻りましたね♪」


 暗くなっていたパーティーの雰囲気も元に戻り、悠斗は自分の両頬を叩いて気を入れ直す。


「それじゃ行くとしますか!」


 悠斗達は再度『マリーディア海蝕洞』へと進んでいくことに決めた。

うそ……だろ? という言葉を見ると、BLEACHを思い出すのは俺だけじゃないはず。

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