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第38話 マリーディア海蝕洞の洗礼

害虫の様に現れるゴブリン達を倒しては進んでいく悠斗一行。


初めは多くて10体など群れで現れていたのだが、奥へ進むたびに数を減らしていった。


「ゴブリン達が出てこなくなったけど、もしかしてゴブリンの住処から抜けた?」


「かもしれないわね。もしそうだったらより強い魔物が出てくるんだから気を引き締めなさい」


 アルマの言葉にもう一段気を引き締める悠斗。


 魔物の世界では強さが全て。


 とくに人の手が入らないこの洞窟では顕著にあらわれており、弱い魔物ほど上層で生きている。


 突然変異個体などがいない場合はゴブリン達のヒエラルキーは低く、彼らの住処は洞窟でも上層に限られていた。


 下に潜れば潜るほど強い魔物が群れをなしており、弱いゴブリンが潜っても別の魔物に喰い殺されるだけだ。


 その様なことはゴブリンでさえも身に沁みて理解しており、現在悠斗達が潜っている所には足を踏み込まない。


 そんなゴブリンが踏み込まない所へと足を踏み込む悠斗達。


あいつら(ゴブリン)が出なくなって結構経つけどさ……そもそもこの洞窟ってどこまで続いてるんだ?」


「さぁね……」


 自分達が歩いてきた道を見ると、螺旋状に深く潜っていることに気がつく。


 これから進む道も一本道とはいえ螺旋状にどこまでも深く深く暗闇が続くばかり。


 そんな終わりの見えない螺旋状と思っていた道のりも終わりを迎えた。


「グルグル回ったと思えば今度は水たまりかよ……」


 深く潜った螺旋状が終わったと思いきや、今度は横に少し広く、水がどこまでも敷かれている道が続いていた。


 ふじこは歩くたびにバシャリと水を掻き分ける音が楽しいのか、たまにスキップをしたりジャンプをしている。


『俺も雨上がりに溜まった道路の水たまりをジャンプして遊んだっけ』


 子供時代の頃を思い出して、思い耽る悠斗。


 ふじこの子供らしい一面を見て、危険な洞窟で冒険をしているという事実はありつつも、ほっこりと笑顔になるアルマ達。


 ニーナに手を引かれて楽しそうに歩いているふじこを見て、余所見していたのか突然大声を上げる悠斗。


「どわぁぁぁぁ!」


「悠斗!?」


 突然の叫び声に驚くアルマ達は顔をそちらへ向けると、腰の方まで水に埋もれた悠斗がいた。


「……なにしてるのよ?」


「ちょっと埋まって……動けないから助けてくれ!」


 ジタバタともがいているが、深く埋まって抜け出しにくいのだろう。


 そんな様子を見たアルマは。


「はぁ……余所見しているからよ」


 そう言って悠斗に手を差し出す。


 アルマの手を借りて這い上がった悠斗を見て、ふじこはピタリと動きを止める。


 どうやら悠斗の惨状を見て学習したようだった。


「お前らも気をつけろよ」


 そう言ってアルマ達を注意して先に進んでいく悠斗は「ひどい目にあったぜ……」と独り言を零す。


さすがの悠斗も少し恥ずかしかったのだろう。


物見気分なふじこの意識を変えられただけでも体を張って良かったと自分に言い聞かせる悠斗。


洞窟内は魔物が多く、当然こんなほのぼのしたコントが続くはずもなく、悠斗達を待ち構えるように彼らは襲いかかる。


「ん? 吹き上がってる所がいくつかあるだけど……なんだこれ」


「待ちなさい!」


 不用意に近づく悠斗にアルマが注意をするのだが間に合わず。


『『『ギョギョー!』』』


 吹き上がりから銛の様な長い得物を持った魔物が現れた。


 全体的に青や緑のまだら模様になっている肌は鱗で覆われており、顔から魚のヒレを生やしエイリアンみたいな見るに堪えない醜悪な顔。


 それを間近で見た悠斗は。


「SUN値下がりそう」


 余裕があるセリフを吐いているが、実は余裕がなくて冷や汗をかいている。


「こいつらは……サハギンか?」


 4体のサハギンは悠斗を囲むようにして鋭い爪で威嚇している。


「悠斗!」


 アルマ達が危機感を募らせる中、誰よりも早くふじこが動いた。


 人差し指を構え、指先に水を貯めて放つ。


 ふじこが普段よく使っている『みずてっぽう』だ。


 普段魔物に使っているよりも威力が増した『みずてっぽう』は成長したのが悠斗だけではないことがわかる。


 悠斗の成長に合わせるようにふじこも成長しているのだ。


 ふじこの放った『みずてっぽう』は真っ直ぐと向かい、悠斗の背後に立っているサハギンに当たる。


『ギャッ!』


 今まで一撃必殺の『みずてっぽう』でどんな魔物も倒してきた彼女だが、相性が悪いのかサハギンにはあまり効いていない。


 しかし、ふじこのお陰で注意は悠斗以外にも集まり、ひと時の間悠斗に集中していた視線は外れた。


 これを見逃す悠斗ではなく、すぐさま構えていた剣を大きく横薙ぎに払って危機を脱する。


 悠斗を囲んでいたサハギン達は視線を逸らしていたため、横薙ぎを綺麗に防ぐことができず小さな傷を追ってしまう。


 小さな傷を負い体勢を崩したサハギン達、悠斗は後ろを取られているサハギンにすかさずタックルを仕掛ける。


「うらぁ!」


 体勢が崩れていたのもあり、悠斗のタックルをまともに受けてしまい後方へ大きく仰向けに倒れ、水しぶきが上がる。


 その隙きを突いて悠斗はサハギン達へ剣を向けたまま、仲間の元へ下がっていく。


 戻ってきた悠斗を見てアルマは。


「もっと警戒をしなさい!」


 怒られた悠斗は素直に。


「悪い、少し浮かれてた」


 そう言って気を引き締め直すと。


「ふじこも助かった。後は任せろ」


 そう言ってふじこの頭を撫でる。


「さて、良い所見せねぇとな」


「ええそうね。悠斗はかっこ悪い所ばかりなんだから頑張らないとね」


「悠斗はそのままでいいぞ。カッコいい所は私が全て持っていく」


「ふふ。頑張りましょうね♪」


 アルマとレイは剣を構え、ニーナは魔術の詠唱を開始する。


「それじゃ……改めて行くぞ!」


 ニーナの補助魔術の発動と共にサハギンとの戦いが始まった。

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