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第35話 調査依頼

 悠斗がふじこの『みずてっぽう』で倒れた次の日、旅の疲れもすっかり癒えたローゼリア達は現在マリーディア邸に移動していた。


 これはあらかじめ予定されていたことで、今日はマリーディア領主代理であるアールスと『マリーディア祝賀祭』について擦り合せをする為だ。


「ギュフフ……。それでは当日はマリーディア像のある広場で一言お願い致します」


「えぇ、分かりました」


 そんな2人の会話を後ろで聞いているなか悠斗は後ろで騎士と同じく立っていた。


 名目上でも護衛は護衛、こうして騎士たちと同じ様にしているのだ。


 アルマ達3人も護衛なのだが、実際は貴族なのでローゼリアと同席している。


 正確にはニーナだけ貴族ではないのだが、彼女は聖女セレナの義妹。


 このアルヴェイム王国内では貴族と同じ様に扱われている。


 そんな中ふじこはと言うと……。


 ローゼリアの隣に座っていた。


 ちょくちょくアールスが視線を向けていて気になっていた様で。


「それで……そちらのお嬢様は……?」


 アルマ達は有名なのでもちろんアールスも知っているのだが、ローゼリアが隣に座らせている幼女だけは見たことがない。


 そんなアールスの視線から逃げるようにローゼリアの腕に隠れる。


「……そうですね。私の大事な大事な(未来の)妹……いえ、義妹(になる予定)です」


 そうアールスに自慢するようにふじこの頭撫でるローゼリア。


 当然妹でもなければ義妹になる予定もないのだが、会談中なので誰もツッコまない。


 そんなローゼリアは一見可愛がっているだけに見えるのだが、実際はアールスから感じるねぶる嫌な視線。


 その目からふじこを守ろうとしていた。


「義妹……ですか」


「えぇ、可愛いでしょう? この絹のような綺麗な銀髪。そして透き通るような白い肌にお人形のようなクリッとした瞳……」


 ローゼリアから放たれる一言一言に、アールスの手が段々と伸びていくのだが。


「触れてはダメですよアールス」


 ローゼリアからの一言に、はっと気づいたアールスは姿勢を正して。


「失礼致しましたローゼリア様にふじこ様」


 いつの間にか『様付け』されているふじこを見て、なんだか遠い所に行ったなと感じる悠斗。


 そんな悠斗の感情を他所に、アールスはふじこのことが気になっておりローゼリアに質問をしている。


「それで……ふじこ様はどちらのご息女なのでしょうか? この辺りでは見たこともない髪に瞳……よく見ればその黒いドレスも……」


「アールスが知る必要はありません……そうよね?」


「あっいや……はい、確かに。失礼しました」


 これ以上はローゼリアの印象を悪くすると思ったアールスは渋々引き下がる。


「お話は以上ですか? であれば私達はこれで……」


 そうローゼリアは会合を終わらせようとした所。


「もう1つお願いがございます」


「……なんでしょう?」


 早々にアールスとの会合を終わらせようと思っていたローゼリアにとって予想外のこと。


 お陰で少し不機嫌になってしまう。


 そんなローゼリアの気持ちに気づいているのか知らずか、アールスはその『もう1つのお願い』を言う。


「近頃、このマリーディア近海では海の様子がおかしいようで……」


「それがどうしたのです?」


「いえ、それがその……どうもマリーディア祝賀祭に近づくにつれ、港から出向した船が失踪するという事件が多く寄せられておりまして……」


「それは海賊ではなく?」


「我々も当初はそう思っていたのですが……。最初の頃は数ヶ月に1度あるかないか。それが段々と月に1度……数週間……毎週と報告が多く増えておりまして、その調査をお願いできないかと……」


「それは領主代理を勤めているアールス。あなたのお仕事ではないですか?」


「それはもう当然のことです。しかし、ここマリーディアはアルヴェイム王国の漁港でもあり、海賊対策のために領軍を常日頃から派遣しております。さらに現在は『マリーディア祝賀祭』もありますので、街の警備に通常時よりも人手を増やしております」


「それで国から軍を派遣して欲しいと?」


「それも検討はしておりますが、今は『マリーディア祝賀祭』前で他国の要人も多いため、なるべく大事にしたくなく……その……」


「確かにそうですね……」


 アールスはローゼリアの顔色を伺いながらも口を開く。


「確かそこのアルマ様達は冒険者をしていらっしゃるとか……」


 アールスから投げられた突然の振りに驚くアルマ。


「ええ。確かに私達は冒険者をしていますが……もしかしてその原因を解決しろと?」


「できればその原因を突き止めて解決していただきたいのですが、せめて調査だけでもやっていただければと思いまして……どうでしょう?」


 アールスの言葉に悩むアルマ。


 悩んでいるアルマに変わりローゼリアが言葉を発する。


「それであれば冒険者ギルドに頼めばよいのでは?」


 当然ながらここマリーディアにも冒険者ギルドはある。


 しかし、ローゼリアからの指摘にアールスは。


「確かにそうですが、冒険者の方々はその……あまり頭が……いえ、当然アルマ様達は別でございます。それに今は『マリーディア祝賀祭』開催前でみな浮足立っておりますし、実の所……」


 アールスの言葉に被せるようにローゼリアが口を開く。


「ギルド側に借りを作りたくない……ですか?」


「ええ。それでなくても私は領主代理です。現状他に借りを作ると、統御にも影響がありますし、将来このマリーディアを継ぐであろう忘れ形見であるスペード様の統御に影響が出るとなると……あまり他所に借りを作りたくなく……」


「それでアルマ達ってわけですね」


「そうです。もちろん調査結果に限らず依頼料もお支払い致します。いかがでしょう?」


 アールスの言葉に少し納得のいったローゼリアは少し悩みながらアルマに話しかける。


「アルマ……あなたはどうしたい?」


「そうですね……ただ私達が遊びに来ていただけならよかったのですが、ローゼリア様の護衛として来ておりますので……」


「ローゼリア様、アルマ様、1つよろしいでしょうか」


 そう断ろうとしたアルマに護衛騎士の1人が口を挟んできた。


 名を『プロディオ』と言って今回ついてきた護衛騎士のリーダーを勤めている。


「護衛の件でございましたら、我々護衛騎士5名がローゼリア様のそばに仕えておりますので、アルマ様達は気兼ねなくご選択いただければと」


 プロディオの声に悩むアルマはローゼリアの顔色を伺う。


 当然ながらアルマ達は名目上ローゼリアの護衛としてついてきたので、その判断はローゼリアにあるからだ。


「プロディオの言う通りアルマ達が決めていいですよ。わたくしは祝賀祭当日まで宿から出ることはできませんし、その間の護衛は5人もいれば十分です」


 ローゼリアの言葉に、アルマはレイとニーナ、それに悠斗にも確認をとる


「私は構わないぞ」


「はい、異論はありません♪」


「俺も構わない」


 全員の意見が一致したということで、アルマはアールスに向かって。


「ということですので、その依頼お引き受けします」


 こうしてアルマ達はアールスからの調査依頼を始めることとなった。

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