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第32話 マルクスからの依頼

アルマ達3人の中で1番怒らせてはいけない人がいます。

「少し長いし過ぎたか……そろそろ時間だハイン、セレナ」


「もうそんな時間か。あっという間だな」


「楽しいひと時はあっという間ですね」


 帰り支度をするマルクス達を見てアルマは。


「お父様、今日はもう遅い時間ですし泊まっていかれてはどうでしょう」


 娘であるアルマの言葉にマルクスは頭を撫でながら。


「すまないな、まだ仕事が溜まっていて帰らないといけない」


 娘に謝るマルクスは貴族ではなく親の顔をアルマに向ける。


「そう……ですか。仕方ありませんね。お体にお気をつけください」


 一瞬だけ寂しそうな顔をしたアルマだが、気持ちを切り替えたのか笑顔に変える。


「ああ、アルマもな。――また近いうちに顔を見に来るとするよ」


 そう言いながらふと考え込むマルクス。


 マルクスは何か思いついたのか、アルマ達を見て。


「……そうだ丁度いいな」


「どうされたのですか?」


 訝しむアルマを見たマルクスはレイやニーナにも顔を向けて。


「お前達に依頼がある」


「依頼……ですか?」


「そうだ。他人事のような顔をされておりますが、ローゼリア様にも関係があることです」


「私に関係……ですか? ――っあ!」


マルクスの言葉で何かを思い出したのか、嫌な顔をするローゼリア。


「思い出していただけましたか?」


「やはり……行かねばなりませんか?」


 マルクスは「はぁ……」とため息をついて。


「当たり前でしょう。貴方様は第3王女……王位継承順位から遠いとはいえ、王族の義務は果たさねばなりません」


「それは……そうですが。お姉様方やお兄様方ではいけないのでしょうか?」


「十分お分かりかと存じますが、毎年行われます『マリーディア祝賀祭』への参加は王家の回り持ち行事。今年はローゼリア様に当たりますので他の皆様は別の公務でお忙しく難しいかと」


「ですよね……わかっていました」


 ガックリと気落ちするローゼリア。


「まさか……ローゼリア様、この件が嫌で今回の騒動を起こした……などとは申しませんよね?」


「うぐっ……」


 マルクスの指摘通りだったのか、図星を突かれてローゼリアは顔を顰める。


 責められるローゼリアをかばう様にアルマが話をもっていく。


「お父様、それで……私達はローゼリア様の公務についていけばよいのでしょうか?」


「ああそうだ。お前達3人……いや、悠斗くんとふじこちゃんを入れて5人か」


 自分には関係ない話だなと思って完全に油断していた悠斗は突然のことに驚く。


「えっ俺とふじこもですか!?」


「ああ。悠斗君、君は異世界からの来た放浪者だ。この世界のことをあまり知らない君はもっと多くを見て学んで――そしてこの世界を知るべきだ」


「世界を……」


 少し考え込む悠斗はふじこに顔を向ける。


 顔の表情は相変わらず変わらないふじこだが、うさこと一緒にじゃれ合って遊んでいるようで何だか楽しそうだ。


 そんな悠斗の何気ない視線に気づいたマルクスは口を開き。


「といっても、殆ど何も知らない悠斗くん1人なら好きな時好きな場所へ行けるだろうが、ふじこちゃんはまだまだ幼いから難しい」


「それは……確かに」


「だからこそ今回は丁度いいと思ったんだ。マリーディアで行われる年に1度のお祭り。是非参加して楽しんでもらおうと思ってね」


「でもローザ……じゃなくてローゼリア様はお姫様で公務として向かわれるんですよね? アルマ達も貴族だから分かりますけど、俺とふじこはこの国の人間どころか素性も分からない異世界人ですよ」


「君はたしかに異世界人かもしれない。でも素性が分からないわけじゃない。こうして僕と既に知り合っているし……それにローゼリア様を救ってくれた命の恩人で、娘達……アルマ達から大事な冒険者パーティーの一員だと聞いているよ」


「お父様!」


 顔を真っ赤にさせたアルマがマルクスへ抗議をしている。


「かっ勘違いするんじゃない! 悠斗……お前ではなくてふじこちゃんが大事なのだ! いいか、ふじこちゃんがだ!」


 顔を真っ赤にさせながら「分かったな!」と強調しながら悠斗に迫るレイ。


 そんな3人を笑いながらニーナは。


「そうですよ♪ もう悠斗さんも私達『戦場の戦乙女』の一員(荷物持ち)じゃないですか」


「ニーナちゃん……」


 ニーナちゃんだけは天使だな~とニーナの裏に気づかないまま感動する悠斗。


「だから強制ってわけじゃないが、よかったらローゼリア様の公務に同行して欲しいんだ。もちろん仕事として依頼するわけだから報酬も出そう」


「報酬までいただけるんですか!?」


「当たり前じゃないか。アルマ達は貴族の義務みたいなものだから仕方ないが、君は貴族ではないからね……っといっても私個人からのお礼みたいなものになるけどね」


 そう言いながらふと考え込むマルクス。


「そうだね……依頼内容はここからマリーディアまでの護衛に、現地でローゼリア様がまた1人でふらふらしない様監視になる。報酬は大銀貨3枚でどうだろう」


「だっ大銀貨3枚!?」


「おや、少なかったかい? もちろん現地までの食事に宿泊場所もこちらで用意するが……」


 それじゃあ……と報酬を付け足そうとした所で悠斗が止めに入る。


「いえいえいえいえ、十分すぎます! こちらから是非お願いしたいところです!」


 床に頭を擦りつけそうな勢いで了承する悠斗。


 そんな悠斗の様子を見てマルクスは。


「よかった、引き受けてくれて。ローゼリアも問題ないでしょうか?」


「もちろんです! 悠斗もついてきてくれるならありがたいわ」


「そうですか。それじゃあ私達はこの辺で……あっそうだ!」


 何か思い出したのか、マルクスは懐から何かを取り出した。


「ふじこちゃんに報酬の先払いをしよう」


 そういって取り出したのは大人の男が持つにはちょっと似合わない可愛いウサギの髪飾り。


 マルクスから差し出されたうさぎの髪飾りを受け取ったふじこは大事そうに胸に抱える。


 そんな様子のマルクスを見たアルマは。


「お父様が()()()()()()()()()()()()()()()()()ですね」


「ああ、それは同僚に貰ってね。僕も扱いに困っていたんだ。アルマにはもう可愛すぎる品物だからね……もしかして欲しかったかい?」


「いえいえ! もう私には似合いませんので!」


「それじゃ今度こそ。……おやすみ、アルマ」


「はいお父様も……」


 一升瓶をラッパ飲みしているハインを肩で担ぎながら後にするマルクス。


 セレナもそれに続いていく所で悠斗に振り返った。


「悠斗さん……」


「はい?」


「あの……また遊びに来てもよろしいですか?」


 そう恥ずかしそうにしながら言葉にするセレナ。


「えっええ。大丈夫ですけど……」


「ふふ。それでは……ローゼリア様も失礼致します」


 綺麗にお辞儀をして去っていくセレナ。


 ニーナは去っていくセレナと悠斗の顔を交互に見ていると悠斗が。


「どうしたのニーナちゃん……あっもしかして妬いてるとか?」


 笑いながら言った所、ニーナは。


「あ”?」


「(あっこれ本気と書いてマジってやつだ)」


 その日、悠斗が目覚めることはなかった……。

正解はニーナちゃん。

そして次話から新章!

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