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第25話 マイペース王女と頭を疑われる悠斗

「ただいまー……って誰もいないよな」


 1日も経っていないに何故か久しく感じる悠斗。


「ここは何も変わっていないですね」


 そう一言呟くローゼリアに悠斗は。


「何度か来たことあるんだ?」


 と質問をぶつけるも。


「ふふっ。本当は来たことがないの」


 『テヘッ★』と舌を少しだしてお茶目気を出すローゼリア。


「本当はもっと早くに来たかったんですけどね……」


 そんなお茶目な所も可愛いと脳内で埋め尽くされている悠斗に、小さく呟かれた小さな声は届いていない。


 ただ、悠斗の隣にいるふじこだけがローゼリアの瞳を見ている。


 ローゼリアの心情とふじこの小さな行動に気が付かない悠斗は呑気に『可愛いな~』と眺めていおり完全に思考が停止していた。


 はっ! と我に返った悠斗は照明に照らされる自分達の姿を見ると衣服に結構汚れが付く。


「中でゆっくりしていたいけど、結構汚れてるな……」


 悠斗もローゼリアもふじこも、みんな改めて自身の体を見ると土汚れひどい。


 特に悠斗は初心者ダンジョンへ行ったにも関わらず、何と戦ってきたんだというぐらい汚れと防具の破損具合が目立つ。


「先に……お風呂入った方がいいね。ローザはふじこを連れて先に入っておいでよ」


「いいんですか?」


「当たり前だろ。レディーファーストだよ」


 ポーズを決めて決め顔でそう言った悠斗であったが……。


「じゃあ行きましょうか、ふじこちゃん」


 コクリと頷いたふじこは我先にとローゼリアを引っ張って浴場へ連れて行く。


「……マイペーーーーーーーーーーーーーーーーース!!」


 ローゼリアとふじこに無視をされ、この場には心の中で涙を流しながら決めポーズをする悠斗だけが残された。







 1人食堂で待ち惚けている悠斗は、何故かうさこに文句を言っている。


「くそ……あの淫獣め、当たり前の様にローザとふじこに付いて行きやがって。俺も一緒について行きたかった……」


 当たり前だがこの世界でも男性と女性の入浴は勿論のこと別々だ。


 だがしかし! 男には女湯に入りたいと欲望が誰しも持っている。もちろん悠斗も持っている。


「魔獣になりたい人生だった……」


 そう、悠斗は自然に付いていったうさこへ嫉妬しているだけだった。


「何が『魔獣になりたい人生だった……』よ」


 悠斗が独り言ちていたその時、彼女達が帰ってきた。


 ローゼリアを探しに出かけていたアルマ達である。


「――なんだ、アルマ達か……」


「悪かったわね、私達で!」


 アルマはムカッとして悠斗の頬をつねる。


「いひゃい、いひゃい、ごめんなひゃい」


「分かればいいのよ。……それよりも、姫様は何処へ行ったの?」


 悠斗と一緒にいるとシルベスタから聞いていたアルマ達だが、部屋を見回すが見当たらない。


 そんなアルマ達を見て『姫様……? はて……』と疑問を受けべていた悠斗は。


「姫様? あぁ……()()()()ローザの事か」


 っと閃いた。


 悠斗はローゼリア事を初めから疑っていたのだ。


 出会った時の言い間違いから、守衛の驚いた顔と丁寧な口調。


 更にはローゼリアの服装だ。一般市民に装っていると思われる『服に着られている』のではなく、『服が着られている』が表現としては近い。


 明らかにローゼリア自身から漂う気品とオーラに、服が全然マッチしていなかった。


 その為、アルマ達から『姫様』という言葉が出てきたとしても驚く事はない。


 『貴族か何かだろうな』っと悠斗自身は予想していたからだ。


 なお、ローゼリア自身は未だに一般市民だと思われているだろうと思っている。


「ローザ!? 悠斗……姫様に向かって呼び捨てどころか愛称で呼ぶだなんて!」


 悠斗の両頬を『この……! この……!』と言いながらアルマが引っ張っているその時。


「あらっ。その愛称で呼ぶのを許したのは私よ――アルマ」


 アルマ達が声のした方へ振り向くと、そこにはお風呂からあがったローゼリアとふじこだった。


「姫様! 一体どちらにいらしてたんですか」


「どちらって湯浴みに決まっているじゃないですか。相変わらず可笑しな人ですねアルマは」


 『ふふふ』と笑うローゼリアを見て、レイとニーナにシルベスタはため息をつき、アルマはこめかみをピクピクさせている。


 そんな中悠斗は湯上がりで火照っているローゼリアを見て呑気に見惚れていた。


 我慢がならなかったのか、アルマは声を上げて。


「それは姫様です!」


 アルマは声を荒げるも。


「姫様姫様と、昔の様に『リアちゃま』って呼んでくれると嬉しいのに。私悲しいわ……」


 と嘘泣きでからかうローゼリア。


 アルマは顔を真っ赤に染め上げてプンスカ怒っている。


 マイペースに会話を進めるローゼリアに、振り回されるアルマ。


 二人は昔からこういう関係だったんだろうとリラックスしながら二人のイチャイチャを眺める悠斗。


 ローゼリアはマイペース。シルベスタに「喉が乾いたわ、私とふじこちゃんに果実水をお願い」と言ってソファーでふじこと一緒に飲みながら楽しくお話する始末。


 『そうね、姫様はそういうお人だったわ……』とこめかみをピクピクさせながら体を震わすアルマ。


 ストレスが貯まり、その矛先は当然……。


「なっなんだよ!」


 悠斗に向く。


 彼は悪くない……悪くないのだが、ローゼリアはマイペース。彼女と話すよりも、話が通じる悠斗に向くのは必然だった。


 そもそもアルマ達が街中を走り回り探していたローゼリアをダンジョン帰りの悠斗が連れて帰ってきたからだ。


 そんな事情を知らない悠斗が怒るのも無理はないのだが。


「正座」


「っえ?」


「悠斗、早く正座をしなさい」


「はい……」


 畏怖を込められたアルマの声に、ビビってしまいアルマに従う26歳の独身男。


「どうしてこんなことに……」


「それはこっちのセリフよ。どうして初心者ダンジョンに向かったはずの悠斗が姫様を連れてるのよ」


「そりゃダンジョンの最下層でローザと出会ったからだよ」


「……はぁ?」


「あれっ聞こえなかったか? ダンジョンの最下層でローザと会ったんだよ」


「そ・れ・は・聞・こ・え・て・い・る・わ・よ!」


 アルマに、また両頬を抓られる悠斗。


「いひゃい、いひゃい。ほっ本当なんひゃって!」


 信じられないかもしれないが、これは本当の事だ。


 真剣な目をして訴える悠斗を見て、アルマも折れる。


「はぁ……まぁいいわ、それで何があったのよ」


「……怒らない?」


「――内容によるわ」


 般若の顔をしたアルマにビクつきながらも、かくかくしかじか悠斗が初心者ダンジョンで体験した事を話す。


「最下層が草原……? 見上げる程巨大なホーンラビット? 悠斗……貴方頭は大丈夫?」


 般若の顔から反転、真剣に心配をするアルマ達。ニーナにいたっては悠斗の頭に向けて『ヒール!』と唱える始末。


「俺の頭は悪くねぇ!」


 悠斗とアルマ達はギャーギャー喚いていると、ソファーの方でキャッキャと戯れていたはずのローゼリアとふじこ(とついでにホーンラビットのうさこ)が静かな事に気づく。


 悠斗達がそちらに顔を向けると、両頬をパンパンに膨らませたローゼリアが睨みつけていた。

順調であれば次週も更新すると思います。

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