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第18話 新たな事件の臭い

視点コロコロ変わって本当に申し訳ない。

 悠斗とふこじがスライムを狩ってる日々を送っている頃、『戦場の戦乙女』の3人であるアルマ達はアーヴァイン公爵家に呼び出されており、現在は馬車の中にいた。


 そう、アルマの実家から呼び出しを受けたのである。


「私達が手紙を出してから呼び出されるのが早くない?」


「そうですね~。お返事を書いて手紙をこちらに出すとしても2・3日じゃ足りませんし」


「そうだな。しかも呼び出されるのがアルマだけならまだしも、私とニーナ全員だ」


 本来だったら悠斗とふじこの監視……もとい自分達のパーティーである『戦場の戦乙女』に誘って、他の魔物と戦い経験を積んでもらおうと思っていた矢先に呼び出されたのだ。


「お父様達、一体何の用があるのかしら」


 王都の北区を抜けて、王城の前に到着する3人。


 服装はもちろんいつもの冒険者装備ではない。


 アルマは大貴族に相応しい服装へと華麗に変身。


 レイはドレスではなく動きやすい騎士服に身を包み、腰に剣を差している。


 ニーナだけはいつもの司祭服と変わらない。


 馬車から降りてすぐ前にある門前へ目を向けると、彼女達が来るのを分かっていたのか執事服を着た老人がメイドを連れて歩いてきた。


 アルマ達の前に止まると、仰々しく一礼する。


「お待ちしておりましたアルマお嬢様、レイ様、ニーナ様」


「元気そうねセバスも」


 この老人はアーヴァイン公爵家に仕える執事長でフルネームは『セバス = オルネイア』。


 アーヴァイン公爵家設立時から仕えているオルネイア一族の男性で、『天の方舟』のシルベスタはセバスの娘にあたる。


 このセバスが門で待っていたのも、勿論アーヴァイン公爵家三女であるアルマが来るのを分かっていたからだ。


「はい、お嬢様もお元気そうで何よりでございます。それでは早速ですがお父上が王城でお待ちです」


 話は終わりなのか、セバスが軛を返すと王城の門を警護していた兵が門を開場する。


 セバスから案内された王城内にある一室。


 ここはアーヴァイン公爵家当主が王城で執務をしている部屋になる。


 セバスが扉を2度叩くと、室内から『入れ』と声がした。


「失礼します。お嬢様方をお連れいたしました」


「下がってよい」


 室内でひたすら書類仕事をしている男が顔を向けずに一言告げると、セバスは無言で一礼をしたあと部屋から出ていく。


 部屋の中には書類仕事をしている男以外にも、革張りの高級そうなソファーで足を組んで寛ぐ男性、その向かいに司祭服を纏った女性が座っている。


 書類仕事をしている男性が手を止めずにアルマ達へ向け声をかけた。


「よく帰ってきた、アルマ」


 アルマは両手でドレスの裾を掴んで一礼をする。


「お元気そうでなによりですお父様」


 書類仕事をしている男はアルマの父である『マルクス = ニル = アーヴァイン』。


 アーヴァイン公爵家今代の当主を務めている男だ。


 王の左腕である彼は仕事が多忙で普段から王城で務めており、こうして娘がやってきても手を止めず毎日仕事に励んでいる。


「そんな所で突っ立ってないで座れよほら」


 そんな男に顔を向けて、レイは一言。


「……いえ、私達はここで大丈夫です」


 そう告げると黙って無言を貫く。


 そんな彼女を見て男は「はぁ~……」と溜め息を漏らす。


「相変わらず堅物だな。本当にお前は変わらないなレイ」


「お父上もお変わりなく」


「ほんと誰に似たんだか……」


 この男は『ハイン = ウル = コルニクス』。


 コルニクス公爵家今代の当主を務めている男で王の右腕と呼ばれている。


 少々粗暴で貴族っぽくないのだが、これも王の右腕と呼ばれる程の男だから許されているのだ。


「えぇ本当に。レイさんはテレジア様の血を1番濃く受け継いでいますからね。正に生き写しの様で」


 そう語るこの女性は『セレナ = ウォルシュテッド』。


 今代の聖女を努めている。


「ニーナもご苦労さまです。変わりありませんか?」


「はい、セレナ様♪ こうして日々を生きていけるのも『創造神トゥリアナ』様の恵みによるもの」


「えぇ、そうです。それでは共に祈りましょう」


 セレナとニーナは膝をついて祈りだした。


 祈りが終わったのか、セレナとニーナが立ち上がるのと同時にマルクスは筆を止めてアルマ達に顔を向ける。


「さて、こうしてお前達を呼び出したのには訳がある」


 マルクスの言葉に、代表してアルマが応える。


「それは……手紙に記しました内容と関係が?」


「例の男と幼女の事ではない。いや、それも確かに大事ではあるのだが、緊急を要する案件が入った」


「緊急……ですか」


 アルマもレイもニーナもより真剣な目をしてマルクスを見る。


「――『第3王女ローゼリア』様が失踪された」


 その言葉を聞いて、アルマはこわばった顔を元に戻してため息をつく。


「またですか……。緊急と仰られるので何事かと思いましたが、いつもの事ではありませんか。それにまだ治っていなかったのですか?」


 そのやり取りを聞いて、レイもニーナも緊張が解ける。


 第3王女であるローゼリアは3番目の王の娘で、他にも第1王女と第2王女が健在だ。


 今代の王は子宝に恵まれており、王子も2人生まれているので王位継承権は低く、彼女が生きている間に王を務める事はないだろうと言われていた。


 その為『ローゼリアの自由に』との王の言葉で育てられた王女は、自由気ままに育っていく。


 いや、自由に育ちすぎてしまい、好奇心旺盛な性格になってしまったのだ。


 歳が近いという事でアルマとレイは幼少の頃から第3王女の友人として共にする事が多く、目を離したすきに居なくなって2人を困らせられていた。


 聖女の娘となったニーナも王女と会うたび、騒動に巻き込まれたのは1度や2度ではない。


 しかし彼女達も月日が経ち大きくなるにつれ、王女と会う頻度も徐々に減っていく。


 冒険者となった今ではここ数年は会っていないのだが、流石に落ち着いただろうと思っていた矢先にこれだった。


「あぁ、あの方はいまだに落ち着いておられない……いや、少しはマシになったが今回は違う。()()()()()()()()()()お前達を呼び出してはいない」


「今回は違うと?」


「あぁ、普段なら街へ勝手に出かけたとしてもその日には必ず戻ってくる。それに護衛役の側使えが必ず控えているからな」


「……ということは失踪されたということでしょうか?」


「そうだ。いつもならその日の夕刻までには王宮へ戻られるのだが、今回は1日経っても戻られない」


「1日経っても戻っておられないとは……。ローゼリア様に何か不審な点などはありましたか?」


「失踪されたその日、ローゼリア様は自室に籠もられていてな。珍しい日があるものだと側仕えも不思議に思いながらローゼリア様の自室を警護していたのだ。午後のお茶の時間になっても出てこないのを不審に思い、声をかけたのだが反応がなく。 失礼だが扉を開けてみると王女様がいなくなっていたのだ」


「窓から出たという可能性は?」


「もちろん考えた。しかし窓は施錠されており割られた形跡もなく、部屋が荒らされた痕もない。それに王女の側仕えが扉の前にいたのだ。何かあれば気づく」


「なるほど。失踪したローゼリア様を探せばよろしいんですね」


「あぁ。ローゼリア様の自室と王宮の出入りは許可をとってある。頼んだぞ」


「承知しました。ローゼリア様の捜索にあたります」


 早速行動に移ろうと部屋を出ていく3人。


 娘達がいなくなった部屋で愚痴るマルクス。


「本当にローゼリア様には困ったものだ……」


「しかし、いつもと同じ我儘ではありませんよ。今回は失踪なのですから」


「分かっているさセレナ。見つからなかったら……」


「俺の出番ってわけか」


「そういうことだハイン。()()()()()()でお前を動かしたくないのだがな」


「あぁ、このまま無事に見つかってくれるのを祈るばかりだ。例え第3王女だとしても、一介の兵士に知らせる訳にもいかない……か」


 悠斗の知らない所で、新たに事件の幕が上がる。

果たして王女はどこに行ったのか?

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