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第15話 歓迎会後編

14話の続きです。

「ふふ。私はこの国で王の左腕と呼ばれている()()()()()()()()()()()()よ」


「えぇ!? 公爵令嬢! ……ってどれぐらい偉いんだ?」


 悠斗の無知な発言にずっこける3人。


「えぇっと……そうね……簡単に言うと国王様と従兄弟関係よ」


「なっ何だってーー!? お姫様じゃん!」


「あはは、やめてよ。お姫様って柄じゃないわ。お姫様なら冒険者なんて仕事してないって」


「そりゃそうか」


「そうそう。ほらっ私達の話よりも貴方とふじこちゃんのこれからの方が大事でしょ?」


 話を急に終わらせたと感じて、少し訝しむ悠斗であったが、出会ってまだ2日。プライベートな事情をどこまで聞いて良いのか分からないので言葉は飲み込んだ。


 人間秘密の1つや2つあるものだ。機会があればその時にでも聞けばいいだろうと悠斗は考えた。


「まぁ確かにそうだな。何だって俺自身分からない事ばかりだからな!」


「その『文字化け』してるスキルは悠斗も分からないのよね?」


「いまだに読めないし詳細な能力はわからん。でもこいつは多分あいつを召喚する為のスキルだと思うんだよ。だって一か八かで適当に『ふじこ』って言ったらあいつが現れたんだからさ」


「まぁそれしかないわよね……。でもLv1って事は、これから鍛えていけば読めたり能力が強化されたりするんじゃないかしら」


「そうなんだよ。問題はどうやってスキルLvを上げたらいいのか分からないんだよな。アルマはスキルの上げ方知ってるか?」


「私? そうね……一般的な上げ方でいいなら教えられるけど」


「教えてくれ!」


「そうね……。スキルの上げ方はズバリ! 使いこなす事とスキルについて熟知していく事よ」


「使いこなすってのはわかる。使っていけばいいんだろ? でも熟知ってなんだ?」


「そうね……。たとえば火の魔法だと、火魔法(Lv.1)で最初に覚えるのは『ファイア』よ。それを使っていけばいいんだけど、それだけじゃダメなの。『火』という魔法について知識を深めていかないといけないわ」


「そうなのか?」


「えぇ。火魔法スキルで『ファイア』を覚えたとしても、その『ファイア』がどういう仕組みで発動できているのかを知らないと威力の調整も何もできないわ」


「確かに」


「なぜ・どのようにして・そうなるのか。こういった火の魔法に対しての知識を合わせて熟知していきながら使いこなせば、自然とスキルLvが上がってるわ」


「なるほどな~。でも俺の『文字化け』スキルは……」


「えぇ、名前も読めない・能力もよくわからないなら、どうやってLvを上げたらいいか私には分からないわ」


「ほっ他に何か上げる方法とかないのか? もっとこう……簡単に……何か食べたり使えばすぐLv上がるような物とか……」


「そんなものあるわけないじゃない。あれば今頃世界中で噂になってるわよ」


「そんな便利な世の中なわけないよな~」


「そうよ。でも貴方にはもう1つスキルがあるじゃない」


「『言語理解』のことか? まぁ助かるっちゃ助かってるな。これが無かったらアルマ達とも話せてないし、こっちの()()()()()()()()()だろうしな! こればっかりはトゥリアナ様に感謝だ」


「そう、よかったじゃない。貴方が住んでた世界とはやっぱり言葉が違うの?」


「おう、俺がいた世界では色んな言葉があったぞ。まぁ俺が話せるのは日本語だけなんだけど」


「へ~興味あるわ。今度教えてくれない?」


「おう、いいぞ! スキルの上げ方について教えてくれたしな」


「――いいわよそれぐらい。それにしても、ふじこちゃんは一言も喋らないわよね。貴方と2人だけの時も話さないの?」


「そうなんだよな。何よりもあいつとコミュニケーション取れないのが問題なんだよ。部屋で2人の時でも、あいつが喋った所を聴いた事がない」


「無口……って言うには限度があるわよね」


「そうなんだよな。さすがにいまだずっと無口じゃちょっと説明つかないよな。多分話さないんじゃなくて話せないんじゃないか?って俺は思ってる」


「ふじこちゃんが人間じゃないから?」


「あぁ、種族まで文字化けしてたからさ。一体種族が何かわからないけど、それでも俺の言葉もアルマ達の言葉も通じてるらしいから言ってる事は分かってると思うんだ」


「確かにね。貴方がふじこちゃんをからかってポカポカと殴られ蹴られているものね」


「まぁ少し暴力っぽい所はあるけど、少しずつでいいからふじこの奴と仲良くできればいいなと思ってるさ」


「そうね……それがいいわ。この世界で本当に貴方と心を分かち合えるのはふじこちゃんだけだと思うから」


「確かにな。謎は多いけど、多分境遇は似たようなもんだろうし、2人で気長にやっていくさ」


「それはそうと」


「なんだ?」


「明日からどうするの? クレヴィスさんの言う通りまたグリーンスライム狩り?」


「そうだなー。この世界の常識が足りないから、勉強もしていきたいが、まずは食い扶持を稼げるようにしないと」


「そうね、貴方まだ幼児レベルですもんね」


「うるせぇな! レベル1だったんだから仕方ねぇだろ。すぐアルマ達に追いついてやるから待ってろよ」


「のんびりしていると置いて行くわよ」


「そんなに待たせねぇよ。早い所レベル上げないといけないからな」


「もしかしてふじこちゃんのこと?」


「あぁ。今の俺はおっさんに言われた通り幼児程度の強さしかないしさ。それにふじこの持ってる生命共有ってスキル。これが何かわからんが、多分強くなってHP上げないといけないような気がするんだよな……」


「そうね、スキル名の意味が考えてる通りだとしたら……」


「あぁ、俺とふじこのHPは共有してる。つまり、俺が死んだらあいつも……」


「その可能性はあるわね」


「検証しようにも検証できないからさ。だから早い所レベルを上げて強くなって守ってやらねぇと。俺にできることはそれぐらいだからな」


「頑張ってね、期待してるわ」


「おう、期待しててくれ!」


 悠斗とアルマが話し込んでいると、レイの方から歓喜の声が聞こえてきた。


「ん~~! ふじこちゃん、これ美味しいじゃないか! もっとかけてくれ!」


 いつの間にか幼女のお世話から幼女におねだりへジョブチェンジしたレイは皿に盛った料理をふじこの前へ出す。


 ふじこは見覚えのある赤い液体を料理に吹きかけるた。


「ふじこお前……それ……」


 「デスソースじゃねぇか」と言う前に、レイは悦楽に浸った表情しながらデスソースのかかった料理を口に入れようとする。


「おい、レイ待てそれは……!」


 悠斗は止めようとしたのだ。しかし時すでに遅し、赤い液体がたっぷりかかった料理はレイの口の中へ吸い込まれていく。


「ん~~これだ! この痛み、この刺激、この辛味、さすがは私のふじこちゃんだ!」


 「お前のふじこじゃねぇよ」と心の中でツッコミを入れる悠斗は、普通に食べるレイにドン引きしている。


「レイ、お前……辛くないのか?」


「何を言っている悠斗、辛いに決まっているだろう」


 「こいつは何を言ってるんだ。馬鹿か?」と言わんばかりの目をして悠斗を見ている。


「この辛味がいいのだろう。まさかお前……背信者か?」


「背信者って何だ、背信者って。そんなやべぇ宗教へ入った覚えなんてこれっぽっちもないわ!」


「ふじこ様、背信者です。この者に赤い裁きを」


 コクリと顔を動かして、新しい皿に盛られた料理へ『デスソース』をかけるふじこ。


 それを受け取ったレイはおもむろに席を立ち上がると、悠斗の方へ歩いていく。


「ちょっ! おい! 誰か助け……」


 悠斗が立ち上がって逃げようとした時、後ろから羽交い締めにされる。


 ふにょんと柔らかいナニカが背中に強く押しつけられる感触が悠斗に伝わる。


 逃げようとした悠斗をニーナが羽交い締めにした様だ。


「ほらほら、いけませんよ♪ (ふじこ)の血を飲むのです」


 ニーナの口は赤く腫れていて、目は血走っていた。


「いやいや、待って待ってニーナちゃん。何が(ふじこ)の血だよ。さっきレイが赤い裁きって言ってたじゃん! 名称は統一しようよ!」


 ツッコム所はそこではない。


 ニーナの豊満な胸の感触と、迫る赤い裁きによって悠斗の思考はグチャグチャになっていた。


 これが世で言う天国と地獄という奴なのか。思考がどうにかなりそうな時、アルマなら助けてくれるんじゃないかと悠斗は考えた。


「そっそうだアルマ、助けt……」


 アルマに救援を求めようと振り向くが、すでにアルマの姿は消えていた。


「アルマ様はお花を摘みに行かれました」


 シルベスタは無慈悲の答えを悠斗に叩きつける。彼女は既に逃走していたのだった。


「ほらっ私自らが食べさせてやろう。光栄に思うといい」


「待て待て待て待て……ア”ァァァァァァァァァァーー」


 赤い裁きによって悠斗は屈服することとなる。


 戻ってきたアルマがどうなったのかは言うまでもない……。


 こうして異世界生活2日目は狂信者による宴で幕を閉じた。

ふじこ教怖い。

※実は作者はデスソースを食べた事がないのです。

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