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第13話 ほんとほんと、信じてくださいよ!

あっさりと依頼を達成した悠斗は王都へ帰還する事になるのだが……。

 9割どころかすべてふじこの活躍のおかげと言っていい程に依頼を終わらせた悠斗は、あっさりと王都へ帰還する。


 冒険者ギルドへ戻る道中、悠斗はアルマに声をかける。


「それにしても便利だよな、この冒険者プレート」


 アルマ達が言うには、悠斗とふじこが持っている冒険者プレートに討伐数が記録されるというのだ。


「これ誰が作ったんだ?」


「さぁ……昔いたとされる賢者様だとか古代の技術とか色々噂はあるけど、誰も真相は知らないと思うわよ――あっ! クレヴィスさんならもしかすると知ってるかもしれないけど……そんなに気になるの?」


「いや、ちょっと興味本位でな。誰が作ったのかも分からない物を使うなんて怖くないか?」


「そう? 使えるなら何でもいいんじゃない? これがなかったら討伐証明とかどうするのよ」


「そりゃこのグリーンスライムの核とか、ゴブリンだったらゴブリンの耳を持って帰るとか?」


「それで正確に数を数えられるの? なんだか不正ができそうよね。もしかして貴方の世界ではそういったことで討伐証明してるの?」


「そういうわけじゃないんだが……物語の世界のお話というか……う~ん」


 どう説明したらいいのか悩む悠斗。話すと長くなりそうだなと思ったので、話題を変えることにした。


「まぁ俺の世界の事はどうでもいいだろ。それよりも話は変わるけど、グリーンスライムの核なんて持って帰ってどうするんだ。これ売れるのか?」


 もっている袋から取り出したのはグリーンスライムの核。


 ふじこと悠斗が倒した10体分の核が袋に入っている。


「えぇ、もちろん。といっても精々お小遣い程度って所だけど」

 

「小遣い程度かぁ~」


「当たり前でしょ。最弱モンスターなんだから」


 悠斗とアルマが話してる間にレイは必死にふじこに語りかけているのだが、相変わらず無表情でレイに対して警戒している。


 それもそのはず。鼻息が荒く目も垂れており、花嫁前の少女がする顔ではない。


 ニーナはそんな彼女たちの様子を見て何がおもしろいのかニコニコしている。


 他愛ない雑談に花を咲かせるとあっという間に冒険者ギルドに到着だ。


「おっちゃん戻ったぞ!」


「随分はえぇな。しっかり依頼を完了したか見てやるから冒険者プレートを貸してみろ」


 悠斗は自分の分とふじこの分をクレヴィスに渡す。受け取ったクレヴィスは水晶にかざした。


-----------------------------


【グリーンスライムの退治】

・グリーンスライム:10/10


-----------------------------


「へ~。よく赤ん坊同然のお前が達成できたな――……おめぇまさか嬢ちゃんにだけ戦わせたわけじゃないだろうな……」


 勘の鋭いクレヴィスの反応に慌てて言い訳する悠斗。


「待って待って! ちょっと待って! 俺も戦ったし倒したって。なぁ?」


 同意を求めるようアルマ達に顔を向ける悠斗。それに対して、ぎこちなくも頷くアルマ達。


「えっえぇ……」


 内心何もしていないと言った方が良かったかな? と思ったアルマであったが、一応1匹とはいえ倒した事に変わりないので頷くことにした。


「本当か?」


 それでもなお食い下がるクレヴィス。考えてみれば最弱とは言えグリーンスライムも立派な魔物。赤子と同じレベルの者に負ける姿は想像がつかない。


 しかも傷という傷も見当たらず、少し服が汚れている程度だ。


 であれば戦ったが返り討ちにあったので、ふじこに戦ってもらった方が納得できるというもの。


 なんだってふじこは同じレベル1でも、悠斗と違ってぶっ飛んだ魔法関連のステータスと創造魔法という意味の分からないスキルの存在がある。


 悠斗がふじこを守り、攻撃はすべてふじこにお任せした方が手っ取り早い。


 2人のステータスを知っているクレヴィスがこう思うのも無理はなかった。


「本当だよな?」


 悠斗は同意を求めるようにふじこの顔を見る。


「嬢ちゃん本当か? 嘘なら嘘って言っていいんだぞ。俺が助けてやる」


「なんでそんなに信用ないんですか!」


「小僧のステータスを見たら誰だってそうなるだろ」


「ぐぬぬぬぬぬ」


 悠斗とクレヴィスの集中する視線に耐え切れず、ふじこは珍しくもアルマの後ろに隠れる。


「悠斗もクレヴィスさんも、ふじこちゃんが怯えてるじゃないですか」


「悠斗……キサマー!!」


 今まさに悠斗へ斬りかかろうとするレイを必死に止めるニーナ。


 まさに地獄絵図が広がっていたのだが、周囲の冒険者と他の受付嬢は巻き込まれないように顔を背けて退避している。


「はぁ……2人とも反省してください」


「すみませんでした……」


「すまん……」


「こんな事で私が嘘をつくわけないじゃないですか……本当に悠斗はグリーンスライムを倒しましたよ。レベルも上がってるのでステータスを見てください」


 まぁ嘘は言ってない。ふじこが倒すとなぜか悠斗のレベルが上がり、そのおかげでようやくグリーンスライムを倒せたのだが。


 ほとんどふじこのおかげと言っても間違いではないのだが、藪をつつく必要はないと感じたアルマ。


 クレヴィスが水晶に映る悠斗のステータスを見ると……。


「レベル3になってやがる……」


「どうだおやっさん!」


 渾身のドヤ顔をして調子に乗ってる悠斗の顔を見たふじこは、ムカついたのか悠斗の脛を蹴る。


「痛てぇ! 悪かった、俺が悪かったって。そう怒るなよふじこ」


 ポカポカと殴り暴力の化身となっているふじこを抱きとめてあやす悠斗だが、今度はペシペシと容赦ないふじこの平手打ちが炸裂する。


「あ~実は……」


 悠斗はクレヴィスに今日あった戦闘の事を話した。話を聞いたクレヴィスは顔を顰めて。


「やっぱり嬢ちゃんのお陰じゃねぇか。お前嬢ちゃんの事や自分自身のスキルの事をきちんと把握してんのか?」


「いや、それがさっぱり……」


「はぁ……。おめぇは暫く自分のスキルの把握と嬢ちゃんの能力の把握に努めろ。それまで暫くはグリーンスライム退治が仕事だ」


「ゴブリンとかもっと強いやつと戦いたいんですけど、ダメですか?」


「ダメに決まってるだろボケが! 小僧だけなら構わねぇが、嬢ちゃんもいるんだぞ。それに自分の能力も把握できてない奴に依頼を任せられる訳がねぇだろ」


「まったく、その通りで……」


 意気消沈と反省をする悠斗。


「まぁしかし、俺も鬼じゃねぇ。グリーンスライムの核を通常の3倍で買い取ってやる。もちろん今日の買い取り分も3倍だ。だから励めよ」


「あの……」


「なんだ?」


「通常の買取価格っていくらです?」


「そんなの1銅に決まってるだろ」


「1銅ってどれぐらいです?」


「……は? 1銅は1銅だろ……駄目だ、頭が痛くなってきたから後は小娘ども、お前等に任せた」


「ちょっと! 面倒くさいからってこちらに振らないでください!」


 話は終わりだと言わんばかりに、今回の依頼料と買取額を悠斗に渡したクレヴィスは、手をヒラヒラと振って去っていく。


「なぁ……」


 そう悠斗がアルマに話を振ろうとしたのだが。


「話は後よ。さっさと行くわよ」


「どこへ?」


「どこって……私達のGランク昇格祝いに悠斗とふじこちゃんの歓迎会よ」


 どうやら今夜はパーティーでも開くようだ。


 悠斗は『今夜、何を食べられるんだろうな……』と考えながらギルドを後にした。

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