第119話 決着。
「こっこの害虫共がぁぁぁぁ!」
アブラは勢いよく瓦礫の山から出てくると、ミラへと突っ込んでいく。
間合いに入ると腕を横薙ぎに払って攻撃を仕掛けた。
しかし、ミラは上半身を大きく後ろに反らしてアブラの攻撃を避けると、そのまま一回転して距離を取る。
その間に悠斗はアブラへと突っ込んで上段から蒼炎の大剣を叩きつけようとする。
アブラもそれを避けて反撃に移ろうとするのだが。
「させぬ!」
リーエルがすかさずみずてっぽうを放ってアラブの行動を阻害する。
その攻撃もアブラは避けるのだが、ここでミラはすかさず突っ込んでいき、長い左足で勢いよく蹴りつけた。
流石にこれを避けることはできず、動きが止まるアブラ。
動きが止まったアブラに向かい、悠斗も追撃にと攻撃を仕掛ける。
避けることはできないアブラは、左手で蒼炎の大剣を強引に掴んで難を逃れる。
しかし、蒼炎の大剣は剣自体が蒼い炎で燃えており、アブラの手は容赦なく焼かれていく。
苦悶の表情に変えたアブラの顔を見た悠斗は、さらに力を込めて。
「まだ…………まだぁぁぁぁ!」
悠斗の叫びに応じて、蒼炎の大剣は燃え盛るように剣を蒼く輝かせる。
「なんっ!?」
蒼炎の大剣は輝きを増したことにより鋭さを増幅させたのか、アブラの掴んだ左手を焼き斬るかのように半ばから地面ごと斬り落とす。
悠斗の放つ太刀筋をなぞるように、蒼炎の大剣から蒼い炎が放たれ地面は大きな傷痕を描いた。
「グゥォォォォ!」
左手を半ばから焼き斬られたアブラは、蒼炎の大剣から放たれた余波により吹き飛び、地面へ幾度も叩きつけられる。
「はぁ……はぁ……」
悠斗も余裕があるわけではなく、先程蒼炎の大剣から放った蒼い炎は体力を奪っていくのか、呼吸が荒かった。
「やった…………か?」
悠斗は吹き飛んでいったアブラへ視線をやり、心中『もう終わってくれ』と思っていたのだがその願いは叶わない。
地面に倒れているアブラは、ふらつきながらもゆっくりと立ち上がっていく。
未だ闘志は潰えておらず、その瞳からは憎悪を感じるほど燃え上がらせていた。
「まだ……だ…………。まだ――まだ終われん! ヘルフレイム!」
残った右手に魔力を集中させ、ヘルフレイムを放つアブラ。
しかし、放たれるヘルフレイムは初めて放たれたものよりも小さく、悠斗達の行動により着実にアブラの体力と魔力を削っていた。
「これなら……!」
悠斗は蒼炎の大剣を右下に構え、少ない魔力を練る。
蒼炎の大剣はそれに応じて燃え盛るように剣身に蒼炎を纏わせる。
アブラから放たれたヘルフレイムに向かい、悠斗はそれを斬り裂くかのように蒼炎の大剣を振るう。
蒼炎の大剣から蒼い炎が放たれて、刃の様に形を変えるとヘルフレイムへと真っ直ぐ向かう。
刃に変えた蒼い炎は、アブラから放たれたヘルフレイムを意図も簡単に両断。
両断されたヘルフレイムは形が保てず、悠斗の元へ辿り着く前に爆散した。
「なっ!」
「何度だって斬り裂いてやる!」
驚くアブラに向かって悠斗はそう叫ぶ。
「これならどうだ……!」
アブラはヘルフレイムを悠斗へ向かい複数放つのだが、それらをも悠斗は斬り裂いてみせた。
「何度やっても結果は同じだ!」
「うぉぉぉぉ!」
アブラは自棄になったのか、それでも複数のヘルフレイムを放つ。
「何度やっても同じだって言って……っ!?」
放たれたヘルフレイムを全て両断した悠斗であったが、両断されたヘルフレイムの中からアブラが姿を現した。
「かかった!」
ニヤリと笑ったアブラは右手を悠斗の顔目掛けて伸ばす。
悠斗の顔を右手で掴むと、そのまま地面に叩きつける。
「がっ!」
肺から一気に空気がなくなる様な衝撃が悠斗を襲う。
これで終わりではなく、アブラはそのまま悠斗の頭で地面を削っていくように駆ける。
そのまま悠斗を持ち上げると、壁に向かって悠斗を叩きつけた。
「がはっ!」
幾度も叩きつけられた悠斗は口から血を吐き、そのままズルズルと倒れていく。
「ここまでやれば……!」
悠斗の意識は朦朧としており、先程の攻撃で体力が尽きかけているのか蒼炎の大剣はただの剣となっていた。
ボロ雑巾のようになった悠斗を地面に放り投げたアブラは、トドメを刺そうとするのだが。
「やらせぬ!」
「させないのだ!」
リーエルとミラは悠斗を助け出そうと動くのだが、それよりもアブラの方が速かった。
「動くな!」
アブラは悠斗の首元に手をやり、いつでも殺せると言わんばかりに見せつける。
「ぐっ……」
「ほらっどうした? かかってこないのか?」
リーエルとミラを煽るように見せつけるアブラは余裕をみせている。
「そこから私を攻撃してもいいのですよ? ただ、そうされると誤ってこの右手がこいつの首を貫いてしまうかもしれないですが」
みずてっぽうで攻撃を仕掛けようとしたリーエルだったが、アブラの言葉に動きが止まる。
「この卑怯者が……」
「卑怯なのだ!」
「クハハ! 殺し合いに卑怯もないのですよ! 勝った者が正義なのですから!」
今度こそこの男を殺せる……そう思い勝利を確認したアブラは、思いっきり痛みつけてから殺してやろう……そう思い、右手を振りかざしたその時。
「グッ……」
突如胸を抑えて苦しみだしたアブラ。
これを見逃すリーエルではなかった。
「今じゃ!」
リーエルは魔力で水を放出すると、アブラの手足を縛り付ける。
その隙きにミラは悠斗を救出する。
「大丈夫なのだ?」
心配するミラの顔を見るも、やせ我慢をして悠斗は。
「おっ……………終わらせる……ぞ…………………」
「――――――わかったのだ!」
ふらつく悠斗をミラは支え、剣を持つ悠斗の手に自身の手を添えて。
悠斗は自分の中に残っている力も魔力も、その全て剣に捧げる。
ミラも自身が扱える残った魔力を全て補助として支えることにした。
剣は悠斗の想いと魔力、そしてミラの補助により再び蒼炎を宿して蒼く煌めいた。
「お兄ちゃん、頑張れー!」
「んっ!」
ナルシャとふじこの声を合図に、悠斗とミラ二人はアブラの胸に剣を向ける。
「「うおぉぉぉぉ!」」
悠斗とミラ蒼炎に煌めく剣をアブラの胸元へ突き刺した。
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