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第11話 くらえ、俺の必殺ジャンプ斬り!

久しぶりの戦闘回

 悠斗とふじこの異世界生活2日目、シルベスタの「いってらっしゃいませ」の声と共に宿を出て冒険者ギルドに向かう。


 この世界の住人は朝が早いのか早朝にも関わらず盛況だった。


 「う~眠い……」と幼女の手を引いてる黒髪黒目の男は我らが主人公『三嶋 悠斗』童貞。


 そんな彼に手を引かれてる幼女の名前は『ふじこ』。


 どう見ても可愛い人間の幼女なのだが、その正体は『くぁwせdrftgy』。


 読めねぇぇぇぇぇぇ! という諸君、私も読めない。


 そんな幼女も眠そうにウトウトしながらも悠斗の手をしっかりと握りトコトコ歩く。


 ギルドの中は昨日と同じく周囲の声がピタッと止まり、周囲はヒソヒソと会話をしている。


「おいあいつが……」


「あいつ今日も小さい子を連れてるな……」


「おい馬鹿、あいつに関わるなよ。 巻き込まれちゃたまんねぇ……」


「いきなりおやっさんに目をつけられるとはご愁傷様だよなぁ……」


 悠斗とふこじはそんな周囲の声を気にしながらも、先頭を歩くアルマについていく。


 本日も朝から美人受付嬢達の前に列を作って並んでいる冒険者達。


 そんな受付の端には勿論暇そうに座っているスキンヘッドの大男クレヴィスがいる。


 今日も彼の前には誰も並ばない。


 冒険者は男ばかりなので、勿論並ぶなら目麗しい美女の前に決まっている。


 クレヴィスの前に並ぶ者は女性だけの冒険者パーティーである『戦場の戦乙女』のアルマ達ぐらいであった。


 そんな彼は悠斗達に気がつくと、手を招き猫の様に動かして「早く来い」と言わんばかりの厳つい目つきをしている。


「よく来たなお前達。 悠斗に嬢ちゃん、こっちへ来い」


 悠斗とふじこが近づくと、クレヴィスは2つの金属プレートを渡す。


「これは?」


「これがお前達の冒険者プレートだ。 つってもまだお前達は『駆け出し』で冒険者未満みたいなもんだ」


「駆け出しっていうと、試用期間みたいな?」


「まぁそうだな……平民以上冒険者未満みたいな感じだ。 例外が無い限り全員最初は駆け出しスタートだ。 そこから1年以内にギルドが一端の冒険者と認めたら念願のGランク昇格。 周りからも立派な冒険者と認められ、よりランクの高い依頼を受ける事ができるってわけだ」


「もし1年以内に駆け出しから抜け出せなかったら?」


「あぁ? そんなの冒険者プレート回収してギルドから永遠の卒業に決まってるだろ」


「ワンチャンとかねぇの?」


「ワンチャン? 犬がなんだからしらねぇが、1年も駆け出しをやって抜け出せない奴はこのまま続けても抜け出せずに最悪の場合くたばっちまう。 きちんと引導を渡してやるのもギルドマスターの努めってもんよ」


「厳しい世界だな~」


「おめぇらもそうならねぇように頑張んな。 ほらっとりあえずこれ受けてみろ」


 クレヴィスは悠斗とふじこに1つの依頼書を見せる。


 依頼書には真ん中に魔物らしき絵が描かれており、その下には文字が記載されている。


「これは……スライム?」


「おう、そうだ。 こいつはグリーンスライム。 この王都周辺を歩けば出くわす雑魚だ。 こいつを討伐して来い」


「ははぁ~ん。 スライムの被害が多くて困ってるんだな? 俺とふじこに任せとけ!」


 冒険者になったばかりな駆け出しの悠斗のどこにこんな自信があるのだろうか。


 クレヴィスは「はぁ~……」と溜め息をついて馬鹿を見る目を悠斗に向けている。


「お前本当に馬鹿だな……どこにそんな自信があるんだよ。 んなわけねぇだろ」


「え? じゃあなんでこの依頼を?」


「お試しみたいなもんだ。 そいつらグリーンスライムは雑食で何でも食うからよ、繁殖しやすくてほっといたら大量に発生するんだよ。 だから恒常依頼としていつでもギルドが受け付けている。 強さも雑魚中の雑魚、そこらのスラムのクソガキでも退治できる奴らだ。 お前は……ククク赤子と同じレベ……ククっ……ルだからよ、とりあえずこれぐらいは達成できてもらわねぇと話にならねぇ」


「赤ん坊と同レベルで悪かったな!」


「すまんすまん、ほらっ冒険者プレートをこの水晶にかざせ」


 悠斗とふじこは冒険者プレートを水晶にかざすと。


-----------------------------


【グリーンスライムの退治】

・グリーンスライム:0/10


-----------------------------


 と表示されていた。


「え~っと10匹退治すればいいってことだよな?」


「おう、そうだ。 グリーンスライムはお前達が入ってきた王都の門を出て街道のすぐ横の草原にいるだろうよ」


「それじゃあ行ってくる!」


「おう! グリーンスライムなんかでヘマするんじゃねぇぞ」


 クレヴィスの声を聞いて「今に見てろよ……あのハゲ親父!」と意気揚々にアルマ達を置いてギルドを後にする。


王都の門を抜け、街道から横へ進んでいくと広い草原に出る。


ポヨンポヨンと草花の中からゆっくり進んでいる緑色の物体がグリーンスライムなのだろう。


「あの跳ねてるやつがグリーンスライムか」


「えぇ、そうよ」


「あいつを倒せば良いのか……ってアルマにレイとニーナもついてきたのか」


「クレヴィスさんから頼まれたんだから仕方ないわよ」


「……悪い?」


「ふじこちゃんが心配ですし♪」


 三者三様の態度を見せる『戦場の戦乙女』達。


 アルマとニーナは相変わらずの様相だが、レイだけは悠斗に対して異様に当たりが強い。


 『何故俺にだけ当たりが強いんだ?』と内心思った悠斗であったが、今はさっさとグリーンスライムを倒してやろうと意識を切り替えた。


「ふじこ、危ないからアルマ達の側から離れるんじゃないぞ」


 片目をパチコーン☆と瞑ってカッコいいポーズを決めているのだが、相手は最弱のグリーンスライム。


 今も草花の中をポヨンポヨンと上下に跳ねているだけで悠斗に警戒心すら抱いていない。


 そんな姿を見て「舐めやがって……」と言いながら腰に装備している片手剣を抜き、両手で構える。


「うぉぉぉぉぉぉ!」


 勢いよく駆け出したと思いきや、何故かジャンプして上段に構える。


「くらぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 そのまま上段に構えた片手剣を振り下ろす。


 振り下ろされた片手剣は、グリーンスライムのゼリーの様な肌を食い……込むこともなく、悠斗の剣を弾き返した。


「どわぁぁぁぁぁぁ」


 弾き返された反動で悠斗は背中から地面にひっくり返り、強く体を打ち付けられ「どふぅぅ」という声が漏れる。


 そんな無様な姿の悠斗を見て、アルマ達は体を小刻みに揺らしていた。


 アルマは「笑ってはいけないわ、笑ってはいけないわ」と呪文の詠唱でも唱えるかのように呟き続け、ニーナは「笑ってはいけないのに……クスクス……ごめんなさい♪」と目尻に滲む涙を指ですくい上げている。


 レイに至っては「お前は私を笑い殺す気か」と呟き、体を小刻みに揺らす。


 ふじこだけは無表情ながら悠斗に近づき、頭を撫でて慰めた。


 起き上がった彼はふじこを見つめ、おもむろに抱きしめる。


「うぉぉぉぉ! 俺の味方はふじこ、お前だけだぁぁぁぁ」


 頬をすりすり擦りつけてくる悠斗の顔が鬱陶しいのか、片手で悠斗の頬をグニグニと押している。


 無表情ながらも鬱陶しいと目で訴えているような気がしたが、最弱であるグリーンスライムに負けた心を癒やすため気が付かないフリをした。


「相棒、俺達は俺達のペースでゆっくりやっていこうぜ」


 そうふじこに語りかける悠斗であったが、ふじこは指先をグリーンスライムへ突然向ける。


「相棒?」


 「何してるんだ?」と話しかける前に、ふじこの指先から細長い水が勢いよく噴き出す。


 指先から放たれた水は勢いが弱まることもなく真っ直ぐ進む。


 その水はさながら銃弾のようであり、グリーンスライムの弾力ある緑の肌も、その中心にある核ごと豆腐の様に安々と貫いた。


 核を貫かれたグリーンスライムは形が保てなくなったのか、水の様に溶けていき地面へ広がっていく。


 残ったのは貫かれて真っ二つになったグリーンスライムの核だけ。


 唖然として力が抜けた悠斗から抜け出したふじこはアルマ達の元へ戻っていく。


 途中悠斗の顔を一瞥して見つめる。


 無表情ながらも『貴方と一緒にしないで』と伝えるかのよう目をしていた。


 戻ってきたふじこをアルマ達は。


「ふじこちゃん凄いわ!」


「えらいね~ふじこちゃん♪」


「……さすが私のふじこちゃん、可愛い……」


 ただ1人少し違うような気もするが、アルマ達3人はふじこの頭を撫でて褒め称えている。


 そんなふじこの姿を悠斗は唖然と見つめるしかないのであった。




■初めてのグリーンスライム戦

・悠斗 :● (黒星)

・ふじこ:○ (白星)

ふじこ >>>>>>> 越えられない壁 >>>>>>> 悠斗


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