表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/124

第105話 奴隷契約の強制解除

 アブラの手によってナルシャが連れ去られているのもあって、相手がそういった手口を使うのは想像がついた。

 どのような非道な手口だって手に取ることは容易い。


「何か手はないか……」


 だからと言って諦めることはできない。

 悠斗は必死に対抗策を考えるのだが、中々良い手は思いつかない。

 そんな暗雲が立ち込める中、ミラは平然と口にする。


「奴隷って強制契約の魔術だっけ? それなら解除しちゃえばいいのだ!」


「は? 簡単に言うけど奴隷が何人いるとおもってるんだよ。一人一人『奴隷契約書』を探してってそんな時間はないぞ?」


 そんなことを初めてしまったのなら、すぐに足がついてバレてしまうだろう。

 それに奴隷達全員の『奴隷契約書』を探し当てるなぞ無理に近い話だった。

 しかし、何故かリーエルはミラの意見に賛成する。


「確かに、その手を使えばよいの」


 反論しようとする悠斗待ったをかけるリーエル。


「まあ落ち着くのじゃ。『奴隷契約書』という物は、言ってしまえば我達と悠斗の間にある契約……それを人間が扱えるぐらいに簡略した魔道具の一つじゃ」


「えっと……俺達としている精霊契約と同じような物ってことか?」


「たわけ! 我らとの間にある契約をあのような外道な道具と一緒にするでないわ。悠斗に分かりやすく言うなら、ちょー劣化版の強制契約術と言えばいいのかの」


「パチもんみたいな感じか?」


「ん~まあそういうことじゃ。言うなればそれをさらにチンケな物に仕上げたものでの、ここまで劣化させなければ人間に扱うのは難しかったのじゃろう」


 そう言ってリーエルは悠斗の持っているナルシャの『奴隷契約書』を指して。


「これを全部探し当てて……なぞわしらでも無理じゃが、『解呪』……つまりは奴隷契約を強制的に解除させるだけなら簡単なのじゃ!」


「そう言うってことは手元に『奴隷契約書』がなくてもできると?」


「うむ。と言ってもわしらだけじゃ無理じゃがの。事前にふじこの協力があればあの都市一帯ぐらいの範囲なら可能のはずじゃ」


「おっ! それなら共和国兵と戦えばいいから……いけそうだな!」


 前向きになってきた悠斗達とは違い、フーゴやラドゥールはまだ厳しい表情をしていた。


「ユート殿。フーゴ殿や私はあなたの強さも拝見させてもらいましたし、もちろん精霊様のお力も信じることができます。ですが……」


「なるほど、本当にそんなことができるのか末端の兵達までは信じることができないってことですね?」


「ええ、そうなります。兵達も自身の命をかけることになりますからね」


 ラドゥールことは最もだと思った悠斗はふじこ達の顔を見る。

 ふじこ達が無言で頷いたのを確認した悠斗はラドゥールに再び向かい合うと。


「それなら、奴隷契約を解除してもいい奴隷の方達を連れてきてもらえませんか?」


「なるほど。実演……というわけですね?」


「はい。ラドゥールさん達がいる前でそれを行えば信じてもらえるんじゃないかなって」


「確かに。目の前で実演されては信じるしかありませんからね」


 熟考したラドゥールは無言で頷く。


「――わかりました。後日こちらが信頼している奴隷達がいますので、その者達を連れてきますから精霊様方のお力をお見せいただければと」


 ラドゥールはふじこ達に向かって頭を下げる。


「精霊様型のお力を試す様な言動お許しください」


「よいのじゃ。お主達が命を賭けることになるんじゃからの」


「うんうん! リーエルちゃんの言う通り、ボクも久しぶりに力を振るいたいのだ!」


 リーエルはミラの顔を見るとため息をつく。

 ミラは「なんでボクの顔を見てため息をつくのだ~!?」と言い、プリプリ怒りながらポコポコじゃれ合っている。

 おかげで完全に重要なお話をする場は崩れてしまう。


「本当に緊張感ないよな~」


「こやつと同じにするでない!」


 リーエルの抗議に「はいはい」っと適当にあしらう悠斗達を見てラドゥールは。


「ふふ、本当に仲がよろしいのですね。それでは後日またお伺いいたします」


 そう言って去っていくラドゥール達を見送ると。


「――本当に大丈夫か?」


 悠斗はリーエルに問いかける。

 リーエルは悠斗が『何』に対して大丈夫と言っているのかわかっているのだろう。


「少しはわしらを信用せい!」


 そう言うリーエルはドヤ顔をしていた。


「ラドゥールと言ったか……見ておれよ……みな、気合を入れるのじゃ!」


「おーなのだ!」


「んっ!」


 リーエルの声に賛同するよう、幼女達三人は天高く手を掲げるのであった。

評価・感想・ブクマいただけると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ