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21話 女帝ディマリアの苦悩

 

 レイヤの【伝言】が終わり、ハロキテの城の門が開く。

 ちなみにこの大きな門もピンクである。


 門が開いて、中からエミリーナが長い金色の髪を揺らしながら一人で出て来た。


「これはこれは皆さんお揃いで。兄さんもお久しぶり」


 そう言ってディルドを見る。

 ディルドは無表情のまま「ああ、久しぶりだな」と言ってシャルロットの隣を動かない。


「それでは、まず、レイヤ様、シャルロット様。そして、カトウカズヤ様の三人だけお入りください。他の方はこれから案内をするメイドが参りますので、そちらに着いて行ってください」


 エミリーナはそう言うと、来た方向へむきなおり、歩き出す。


 俺、レイヤ、シャルロットはそのエミリーナについて行く。


 後ろを振り向くと、マリアンヌが心配そうに俺を見ていた。


「皆んな、大丈夫だから。多分いきなりどうこうはないから。安心して待っててくれ」


 俺は四人にそう言うと前を向き直して、レイヤの後を追った。



 ◇



 城の中へ入ると、乙女趣味全開のこれまた驚くべき真っピンクな内装だった。濃いピンク薄いピンク淡いピンクと色々である。


 シャルロットの城の中はいかに趣味が良かったかが良くわかった。もちろん主観な訳で、乙女趣味が良いと言う人も大勢いるだろうからなんとも言えないのが本音だが。



 さて、エミリーナについて行くとシャルロットの城の時にあった同じ魔法陣が登場した。


「こちらの魔法陣は、ディマリア様が許したもの以外は地下の折檻部屋へ行くことになっておりますので、一人で乗るときはお気をつけ下さい」


 と、エミリーナが何処かで聞いたような事を言った。

 そして、俺たちはその魔法陣に乗って上昇する。

 こう言うところは姉妹だなぁと思う。

 性格は違えど、設計は似ている。というか、シャルロットの城はなんとかっていう魔王が造ったんだよな。

 ということは、この城はそれよりも後に造られたということか。


 などと考えていたら、もう謁見の間だった。


 中には山田もいるのだろうか。

 ディマリアの目的って本当はなんなのだろうか。


 聞きたいことは結構ある。

 レイヤやシャルロットはどうするつもりなのだろうか。


 そうして、大きな扉が開かれる。

 俺にとって、二回目の謁見の間だった。



 ◇



「余がディマリア・フェアリーローズである。面をあげよ」


 顔を上げると、目の前には二メートルほど高い場所にこの城の女帝が座っていた。

 前見た時と同じ淡いピンクのフリフリのついたドレスを着て、俺たちを睥睨するディマリア。


 その左側には、背は百六十センチメートルほどで長く黒い髪を後ろで一本に結び、白いシャツとモスグリーンのチノパンを履いた、俺の高校の同級生、標準的な日本人女性の山田麻里奈が両手を腰に当てて立っている。


 そして階段を上り、ディマリアの右側に立ったエミリーナ。

 これがディマリアの最高戦力なのだろう。


「姉上、久しいの。レイヤ、お主もな。カトウカズヤ、先日は失礼した」


 重々しく、低い声が部屋に響く。

 今日のディマリアは先日のディマリアと全く違う。まさに女帝と言っても語弊はないだろう。


 なれなれしいシャルロットととは大違いだった。

 これは仲が悪いのも頷ける。

 シャルロットが火とすれば、やはりディマリアは氷か。


「さて、今日は何用か? 姉妹という事で特別に城へは入れたが、話によってはここから帰さぬぞ?」


 ギロリとシャルロットを睨んで言い放つディマリア。


 その視線を平然と受け止めて、シャルロットが話し出す。


「うむ。今日こちらへ来たのは他でもない、このブラーム大陸の平和についてだ」


「平和とな? はて。ブラーム大陸は平和にだと思うが違うのか、姉上」


「そこな右側におるディルドの妹に良く似たエスパーが妾を襲ってきたのだがな?」


 今度はシャルロットがエミリーナを睨む。


 エミリーナも平然としてシャルロットへ返答する。


「あたしは魔族です。シャルロット様。それはご存知ですよね? それにあたしはシャルロットさまを襲った事などございません」


「むぅ……確かにそうだな。だが、金髪碧眼だった。するとアレは誰だったのだ」


「姉上は金髪碧眼というだけで、エミリーナと見間違えたという事ではないのか? 余はそんな命令などしておらん」


 そうディマリアが言ったところで、俺は思わず声を出してしまった。


「シャルロット、お前を襲ったのは左側にいる山田麻里奈だよ」

「な、なに?」


 ディマリアが俺を殺す勢いで睨む。


「あいつは俺が高校の時の同級生だ。まさか超能力者だとは思わなかったけどな。でも、シャルロットを襲ったのは山田だろ?」


 俺は山田に向けて話しかけた。

 山田はそんなのどこ吹く風というように無視をする。


「カトウカズヤ、それは証拠があっての発言だろうな?」


 ディマリアに聞かれる。


「証拠なんてありませんよ。先日聞いた事を話しているだけです。実際どうだったのかは分かりません」


「それでは言いがかりも良いところではないか? 姉上を襲った誰かは余の知るところではない。知らぬ誰かがエスパーヤマダを騙ったのではないのか? そしてここに居るエスパーヤマダは姉上を襲ったりなどしておらん」


 そして、もう一度シャルロットを見るディマリア。


「なるほどな。うむ、分かった。では、お主はこの大陸を統一しようとは思ってはいないのだな?」


 ひと呼吸置いてディマリアが重々しく口を開く。


「――余は出来れば統一したいと思っておる」


「何故だ? ディマリア。統一する意味が解らん」


「姉上は来たる厄災を個々の魔族だけで打ち払えると思っておるのか?」


「来たる厄災とななんだ?」


 シャルロットが驚愕してあり得ないくらい見開いた瞳で問う。


「ここなエスパーヤマダは予知のエキスパートでな。ヤマダの予知は百パーセントの確率で当たる。そのエスパーヤマダが予知した厄災は約一年後だ。余の言っている意味が解らない姉上では無かろう」


 ディマリアはレイヤを見てから、また話し出す。


「レイヤ。お主はこの厄災のために、またここへ来たのだろう? 解っておる。そこなカトウカズヤが※※※※※※※だということもな」


 また聞こえなかった。なんなんだ一体。


 レイヤは立ち上がり、ディマリアと対峙した。


「ディマリア、貴女は本当にこの大陸が統一されれば厄災から免れることが出来ると思っているの?」


「思っておる。エスパーヤマダの予知は絶対だ」


「何を言っているのかしら、このおバカさんは」


「な、余を愚弄するか!」


「そんなに怒らないでちょうだいよ。世の中に絶対なんて無いのよ。そんな事も解らないの? 貴女」


 そこで、山田が口を挟んだ。


「あんさ~、あんたが何処の誰かは知らないけど、アタシの予知は絶対だよ」


「あはは。可笑しい。私が絶対は無いと言ったらそれは無いのよ。山田さん? 貴女がどう予知をしようが、神はサイコロを回すの。未来は不確定なのよ」


「アタシの予知は絶対だ! あんたこそ頭湧いてんじゃねーの? ぶっ殺すぞ? コラ」


「あらあら、乱暴ね、貴女。ぶっ殺して見なさい! 今すぐ、貴女の超能力とやらで私を殺して見なさい!」


 山田の目が光る。その瞬間、山田を煽ったレイヤの周りだけ、ものが潰れていく。

 重力を操作したのだ。


 俺は急いで重力を戻そうとしたら、レイヤに止められた。


「私には超能力は効かないのよ」


 そう言って超重力が体にかかっているはずなのに、レイヤは普通に立っている。

 周りの床や物が潰れてぺしゃんこになっているにも拘らずだ。


「お前死ねよォォオー! オラァァァア!」


 山田は全く潰れないレイヤへ手のひらを向けて必死に重力を大きくしている。


 しかし、まったく山田の攻撃は無駄だった。

 レイヤに傷ひとつ付けられていない。


 山田は泣き叫びながら見上げるレイヤを睨みつけて、膝から崩れ落ちたのだった。



 ◇



「さて、この大バカ者をどうするか。ね? ディマリア」


 めちゃくちゃ勝ち誇った笑顔でディマリアへ言葉をかけるレイヤ。

 驚愕の顔をしたディマリアが、レイヤに問う。


「れ、レイヤ、お主は何者なのだ……」

「前に、と言っても遥か昔だけれど話したじゃないの。私は女神だって」

「め、女神だ……と?」

「そうよ? 知らなかったの? うっかりね。カズヤみたい。シャルロットは忘れてなかったわよ?」


 シャルロットも驚愕の顔を戻せずに、縦に首をブンブンと振った。


「さて、どうするの? 厄災かなにか知らないけれど、おバカな山田さんのたわ言に魔族最強の魔人が動かされるなんて、恥ずかしくてもう外を歩けないわね?」


「くっ……」

 ディマリアは歯軋りをしながらレイヤを睨む。が、先ほどまでの迫力はなかった。


「ディマリア、妾の話を聞いてくれまいか?」

 そこにシャルロットが優しく話しかける。


「姉上……余は、余は」

「もう、良いではないか。そこなレイヤの言う通り、この世に絶対などありはしない。妾と協力できないだろうか? 昔の事は謝る。この通りだ」


 シャルロットが頭を下げてディマリアに謝罪している。

 何を謝罪しているのかは分からないけれど。


「姉上、少し考えさせてはくれまいか。余は少し混乱しておる」

「解った。待とう。この城で待たせてもらうが、よいか?」

「うむ。何処の部屋でも好きに使ってくれてよい」


 そう言ってからディマリアは玉座の間から出て行った。

 山田は死んだように青くなったまま動かない。


 俺は山田の所へ行って、話しかけた。


「山田、大丈夫か?」

「…………」

「立てるか?」


 そう言うと、ゆっくりながら山田は立ち上がり、俺を押しのけて部屋を出て行く。


 残ったエミリーナが俺たちを案内することになった。

 その目には涙が浮かんでいた。



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