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13話 親子

 

 シャルロットの城へ来て、半年が経とうとしている。

 ブラーム大陸の情勢は変わらずだった。


 シャルロットがボコボコにしたというエスパーヤマダは、何処にいるのか分からない。

 魔族達も特に問題なく過ごしている。


 ハッキリ言って、パーシルとか冒険者ギルドの情報は、ほとんどがゴミのようなものだと知った。

 事実が事実として伝わっていなかったのだ。



 そして、こちらへ来てすぐに俺の修行が始まった。


 まずは普通に肉体の強化。いわゆる筋トレやらランニングなど。

 魔力無しの俺は、全てを超能力頼りにする癖がついていた。

 ので、まずは基礎からというシャルロットの教育方針である。


 そして、能力の分散化だ。

 俺は能力を使う時、一つしか使えない。

 それをまずは二つに増やすことから始めた。


 空を飛んで時を止める。

 空気弾を作りながら走るスピードを上げる。

 肉体を強化しつつ炎を手のひらから放射する。

 などなど。


 これらができるようになったら、三つに増やす。

 こういった事を毎日毎日続けていた。


 そして、武器、というか剣を使うという事も試している。

 武器に全ての能力を込めて叩き斬る。これもシャルロットが言い出してやっている。


 あとは予知。俺の予知は突然にやってくる。

 それをどうにかして、自分の意思で未来予知ができるように、精神集中のための坐禅のようなものをしていた。

 しかし、こればかりはかなり難しい。


 シャルロットは、自分の魔力の使い方を参考にして、俺の超能力へと擦り合わせて説明してくれるので、とても解りやすかった。


 まぁ、後は模擬戦。

 ディルドさんと毎日模擬戦を繰り返した。


 そして、そんな事をしているうちに、俺はいつの間にかシャルロットとディルドに対して、敬称を付けなくなっていた。


 ◇


「甘いわ!」

「うるせえ」


 俺のクソみたいなタックルをシャルロットが軽くいなして、逆に背中から倒されマウントをとられる。

 そのシャルロットに厳しくされた俺が、悔しさを口に出しているところである。


 俺は今、シャルロットの城の庭で、体術の訓練を受けていた。


「まったく、カズヤは体術が下手くそにもほどがあるぞ? そんな体たらくではラリーズにも勝てまい」

「ラリーズには勝てますぅ!」

「カズヤ様は体術もかなり上達していますよ。シャルロット様が素手の闘いに強すぎるだけでしょう」


 なんという飴と鞭。シャルロットはまず褒めない。ディルドは褒めて褒めて褒めまくる。


 そして、ダメな俺を褒めてくれるディルドが大好きだ。

 イケメンだし優しい。

 女だったらディルドと結婚したいくらいだ。


 何より褒めて育てようとしてくれているのが、とても嬉しい。

 俺は褒められて伸びるタイプだから。


「俺はやっぱりディルドと訓練したいよ。シャルロット、いちいちうるさいんだもん」

「何を言っておる、この馬鹿者めが。妾のどこがうるさいのだ」

「『甘いわ!』とか、『小僧、舐めるな!』とか」

「なっ、妾はそんな事はいってはいないぞ?」

「言ってますぅ~! ね、ディルド?」


「わ、私は――」

「やってるか! カズヤァァァァア!」

「ラリーズうるさい」


 もう一人のうるさい人がきた。

 もうなんか、前にも増して元気なラリーズだった。

 後ろにレイヤとロクサーヌの顔も見える。


「あら、シャルロット、息が切れてるんじゃない? よる年波には勝てないようね」

「うるさいわ! 人をババア扱いするな。レイヤなど、私よ――」


 その瞬間、シャルロットの言葉を遮って、レイヤの飛び腕ひしぎ逆十字固めがシャルロットに決まった。

 俺は驚愕の表情を隠せない。


「なっ……」

「あら、カズヤ。御機嫌よう。シャルロットは余計な事は言わない方がいいわよ?」

「は……なせ……」


 腕ひしぎを決めながら、下から笑顔で挨拶をしてくるレイヤ。

 腕を離そうと力を込めているため、顔が真っ赤になっているシャルロット。

 どちらが最強の女帝か分からない。


 というか、レイヤのこんな姿を見たのは初めてだった。

 めっちゃ強い、この女神。何気に色々と隠していそうだ。

 ワンピースで暴れるからパンツ見えてるけど。


 そして、シャルロットの腕を離して立ち上がるレイヤ。


「シャルロット、ようやくエスパーヤマダの情報が入ったわ。やはり、まだブラーム大陸にいるみたいよ?」

「やはりな。して、何処で姿を見せたのだ」

「それが、ディマリアの所なのよ」

「ディマリアか……面倒だな。もし、奴がかくまっているとなると闘いは避けられん」


「ディマリアって誰?」


 俺は二人に聞く。


「妾の妹だ」

「シャルロットの妹?」

「そうだ。妾とは全く似ても似つかない氷の悪魔だ。そして、妾と仲が悪い」


「氷の? じゃあ、うるさくないの? でも、この前に話した通りエスパーヤマダには話を聞きに行くんだろ?」

「うむ。うるさくはない」

「それは良かった。シャルロット親子はうるせえからな」

「ラリーズはうるさいが、妾はうるさくなどないだろう?」

「『甘いわ!』とか、『小僧、舐めるな!』とか」

「うるさいわ!」



 そう、俺達はエスパーヤマダがなぜシャルロットを襲ったのかだとか、目的を知るためにも会うべきだ、という結論に達していた。


 パーシルの事があり、イシュランテル大陸には当分は戻れないであろう事も分かっているので、まずはこのブラーム大陸での情報収集をすることになった。


 なぜこうなったのかは全てラリーズのせいという事になった。

 なぜなら、ラリーズが母さん恋しさにブラーム大陸へ来なければ何も関係する事が無かったからだ。


「だが、フェアリーローズ城に住めてよかっただろう? 全てをメイドがやってくれるからな! 上げ膳据膳だ! そうだろう! カズヤ! ワタシのまいだーりん!」


「誰だよ、マイダーリンとか教えたの! 絶対レイヤだろ? レイヤ以外考えられないぞ?」


 最近は日本の単語をロクサーヌやラリーズに教えていたのは知っている。

 しかも下らないことばかりを、だ。


「それにしても、せっかく冒険者登録したのに全く意味がなかったわね。静かに生活したかったのだけど。全てのあのハゲのせいね」


「でもさ、プライトス教ってのはヘットフィールド王国の宗教なんだろ?」


 俺は宗教のことが良く分からなかったのでレイヤに聞いた。


「そうね。でもこの世界では一番信者の多い宗教なのよ。だから、賢者パーシルの影響というのは思っている以上ね」


「なるほど。じゃあ、このブラーム大陸にも信者っているの?」


「おらん」


 シャルロットが即答する。


「妾たち魔族は宗教という概念を持たん。なぜなら強き者こそが所謂宗教の役割を果たすからだ。何処にいるのかも分からない神などを信じて何になるのだ」


「なるほど。だから魔族は強くなるために修行するのか」


「そうだ! ワタシはカズヤに負けたが、また闘いたいと思っているぞ! そして、いつかは勝つ!」

 うるさく喚くラリーズ。


「まぁ、俺が生きてるうちに頼むわ。お前らと違って人間は長くても百年位しか生きられないからな」


「そんな事はないぞ? 賢者パーシルなど千歳は軽く超えているぞ!」


「マジで?」

 俺はレイヤを見る。


「マジね」

 その通りだと頷くレイヤ。


「だからこそ、妾は、まずはこのブラーム大陸だけでも元の自由な大陸に戻したいのた」


「どういう事?」


「大分前からディマリアは、大陸を統一しようと動いておるのだ。多分だが、件のエスパーヤマダもその為に使っておるのだと思う」


「なるほどね。だから、エスパーヤマダに会いに行くってことか。なんならやっつけんの?」


「そういうことね。まぁ簡単には行かないでしょうけど」


 レイヤはそう言うと城の庭から中へと歩いて行った。

 なんというか、こちらに来てからのレイヤはヘットフィールド王国にいた時よりも口数が少ない。


 ロクサーヌに聞いても分からないと言うので、全く原因などは見当もつかないんだけど。



 そして、俺たちは一週間後、ディマリアの所へエスパーヤマダに会いに行くことになった。


 戦闘狂の魔族たちと戦うのはちょっと不安だし、たった半年の修行でどの位出来るか分からないけど、応援してくれたレイヤやロクサーヌやラリーズ、修行に付き合ってくれたシャルロットとディルドのためにも頑張ろうとは思っているのだ。


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