表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んで初めてVIP待遇  作者: 米倉ブッシュ
6/6

二話と三話の間の小話

「じ、じゃあ今から、ソラには儀式を受けてもらうから。ついてきて」


 シリウスようやく帰ってきたとき、なぜか肩で息をしていた。走り回っていたのだろう。息が整うのを待ち、一緒に部屋を出る。


「儀式?魔術的なやつか?」


 するとシリウスは腕を組み、そっぽを向いて言う。


「知らないっ。さっきのこと、べつに許してなんてないんだからねっ」


「わるかったって。ちゃんと反省してる」


「ふんっ」


「ちなみに」


 これ以上話すことはないとばかりに向こう向いてこちらを全く向いてくれなくなったシリウスになにも言うことができず、二人の間に気まずい沈黙が訪れたのもつかの間、目の前に重そうな古い漆黒の扉が現れた。

 ちなみにここに来るまでの間、廊下で何人かの亜人とすれ違ったが、彼らはなんとYシャツ姿だった。筋骨隆々のリザードマンがメガネかけてYシャツ着てる姿は何ともシュールだった。


「ここよ。ついてきて」


 シリウスがようやく口を開き、中を案内する。

 中はまっ白い空間で、大きな円状に広がっており、真ん中には大きな機械の付いた椅子が置いてある。 


「あんまりきょろきょろしない。ほら、ここに座って」


「こ、こうか?」


 言われるがままに座り、次の指示を待っていると、シリウスは椅子の背中から伸びる、美容院でおばちゃんがパーマあてるときに使う大きなドーム型の機械に似たものに繋がる部分を持ち、その機械を俺の頭上に持ってくる。


「いい?これから何が起こっても、ぜっっっっったいに、逃げちゃだめだからね?」


「お、おい。何する気だ?やめろ、俺の手を拘束しようとすんな。さっきのことなら悪かったって」


「じゃあ、何が悪いと思ってるの?」


「え?そりゃあ、おまえの眉毛のこと、黙ってたからだろ?」


「......ふんっ」


「おいなんだよごめんって!ごめんごめんごめん!悪かった!だからこのごつい機械で俺に何しようとしてるかだけ教えてくれ!!痛いのか!?これ痛いのか!?」


 シリウスは俺の叫びを無視したまま、なぜか下を向き肩を震わせながら、横にあったレバーを何の躊躇もなく下におろした。


「いやだ怖い!なんだ今の『ゴゥン』って音!たすえてぇ!殺される!痛いのは嫌だぁあああぁぁああ!!!!............って、あれ?なんともない...」


  もうあきらめて辞世の句を詠もうとしていると。 

 変だ...。どこも痛くもかゆくもない。何か変わった所もない。

 不思議に思いシリウスの顔を見ると、いまだにうつむいたまま、震えている。

 そしてついに、爆発した。


「ぷくくく...あっはっはっは!!!!なによその顔!鼻水でてるじゃないの!!!!」


「へ?」


「はあ~可笑しい。悪かったわねソラ。別にこれ、拘束なんてしなくてもいいの。ただ、拘束したほうが、気分でるかなって。でもまあ、これでさっきのことはチャラにしてあげるから」


 シリウスが涙を浮かべて笑っている。


「え?なに?どういうこと?俺、死なない?」


「死ぬも何も、あなたもう死んでるでしょ。安心して、ただのちょっとした仕返しだから。この儀式が必要なのは本当だけど」


「......はああぁああぁあぁぁああ!?!?!?ふざけんなよチャラになる訳ねえだろこんなん!!!こっちはマジで死ぬかと思ったんだぞ!!!」


「ごめんごめん、もうしないから。それより、これからよろしくね、ソラ」


 くっ...。

 この笑顔はずるい。こんなの、健全な男子高校生には抗えないじゃないか。

 俺はせめてもの抵抗として、少しぶっきらぼうに言った。


「ったく、今回だけだぞ。おう、これからよろしくな、シリウス」


 するとシリウスは嬉しそうに、心の底から嬉しそうに、にへらっと頬を緩めたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ